九州国際重粒子線がん治療センター(愛称:SAGA HIMAT以下、サガハイマット)は、重粒子線がん治療を専門に行い、患者さんの心と体にやさしいがん治療を目指しています。
サガハイマットは、JR九州新幹線・長崎本線の停車駅である新鳥栖駅前に立地し、九州縦貫自動車道と九州横断自動車道のクロスポイントである鳥栖ICからもアクセスがよく、九州全域、また関東、関西地区からも患者さんが来院されています。
今回は、九州国際重粒子線がん治療センターのセンター長である塩山善之先生に、センターの開院当時から力を入れている取り組みや特徴、課題と今後の展望をうかがいました。
サガハイマットは、重粒子線がん治療だけを専門に行っている数少ない施設です。重粒子線がん治療とは、放射線治療法の一種で、炭素イオンを加速器で光のスピードの70%程度まで加速させて腫瘍に照射する最先端の治療法です。
重粒子線がん治療装置(提供:サガハイマット)
従来の放射線治療で使用されるX線に比べ、がん病巣にピンポイントで照射できるところが特長です。そのため正常な細胞へのダメージを最小限に抑えられ、副作用が軽減されるといったメリットがあります。
症例としては、前立腺がん、肝臓がん、肺・縦隔がん、膵臓(すいぞう)がんの順で治療においでいただいております。また、佐賀県は、肝臓がんによる死亡率が全国に比べて長年高位であることからも肝臓がん治療においでいただく患者さんも多くなっています。
サガハイマットは、佐賀県が主導となり、九州産業界と医学会が集まった、産学官共同プロジェクトから設立された重粒子線がん治療センターです。運営形態は公益財団法人で、兵庫県より西では初の重粒子線治療施設であると同時に、民間による運営も全国初の試みであり、プロジェクトの形態も極めて特徴的となっています。
現在、サガハイマットに来られる患者さんは、九州在住者が中心ですが、福岡県からが最も多く、次いで佐賀県からとなっています。また、遠方より来院される患者さんもおいでになり、九州から遠く離れた北海道からもサガハイマットの高度な医療を受けたいと来てくださる患者さんもいらっしゃいます。
サガハイマットでは、開院当時から、広域の大学や中核病院との医療連携に力を入れています。そして、基本的には、連携している大学や中核病院から紹介を受けた患者さんの診断・治療を行っています。治療を終えた患者さんは紹介元の医療機関に戻られますが、サガハイマットでは相互連携により、その後の治療経過についてもしっかり見守っています。
サガハイマットは、九州の多くの大学とも医療連携協定を結んでいます。特に中心となっている大学は、九州大学、佐賀大学、久留米大学の3つです。具体的な連携内容として、患者さんの紹介を始めとし、大学の医師を受け入れたり、こちらの医師を大学に派遣したりしています。
2013年には、福岡大学とも協力をし、福岡大学にも重粒子線を含んだ粒子線がん治療相談外来を開設されています。
また、大学だけではなく、国立病院機構や日本赤十字病院などの中核病院とも医療連携をし、相互に患者さんの紹介を行っています。
サガハイマット設立当初から力を入れていることの1つとして、臓器別のキャンサーボードが挙げられます。キャンサーボードとは、がん医療に対する問題を研究するチームのことで、サガハイマットでは、肝臓や膵(すい)臓といった臓器ごとに研究班がわかれています。
目的は、重粒子線がん治療について外部委員の先生方に治療経過や実績を情報提供し、治療の適応や判断の妥当性などを評価いただく形で多くの症例を集積し、より多くの臓器での重粒子線がん治療の保険適応を目指すためです。現在は、半年に1回の定例会議のほか、月に1回は必ずWEB会議を行い、日々、透明性の高い診療ならびに研究に努めています。
サガハイマットでは、現在重粒子線治療の照射室が2室あります。そして、近々、3室目として、スポットスキャニング照射という新しい技術を搭載した治療室が稼動予定です。
スポットスキャニング照射とは、腫瘍部分を細いペンで塗りつぶすように、放射線を当てていくもので、治療準備期間が短縮できるほか、大きながんや複雑な形のがんの治療に適しています。
腫瘍を塗りつぶすように照射するスポットスキャニング照射
今後は、がんの部位など患者さんの状態に合わせて、従来型のパッシブ照射とスポットスキャニング照射を使いわけ、より質の高い医療を提供していきます。
サガハイマットは、外部の医療機関等との連携により、患者さんの心と体にやさしい、高度で先駆的な医療を提供しています。
がんの治療法は多様化してきています。重粒子線がん治療も、その沢山ある選択肢のなかの1つです。がんの治療法を選ぶ場合は、まずは主治医と良くご相談いただき、ご自身の病状や体力に合った治療法を見つけていただくことが大切です。その中で、重粒子線がん治療を希望あるいは選択肢の1つとして検討されたい場合は、主治医にその旨をお伝え頂いて、当センターへのご紹介を依頼してください。また、電話でのご相談やセカンドオピニオンとしての診察もお受けしております。ご不明な点はぜひ一度、サガハイマットにご相談ください。
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。