生まれつき赤芽球という血液細胞に異常があり、正常な赤血球が作られないCDA(先天性赤血球形成異常性貧血)。この病気を持つ患者さんのなかには、輸血治療を必要とする貧血を抱えているお子さんもいます。しかし、治療の進歩により輸血による重い合併症を防げるようになったことから、CDAは「怖い病気」ではなくなってきています。
CDAの症状と治療について、聖路加国際病院小児科医長(血液腫瘍担当)の真部淳先生に教えていただきました。
小児期から貧血がみられることが多く、なかには生後1か月以内から貧血が認められる患者さんもいます。
CDAによる貧血は、以下の理由で赤血球数が十分に保たれないため起こります。
貧血の程度は一人ひとり異なり、輸血治療が必要になる例もあれば、治療介入する必要がない例もあります。このほかに、小児期には輸血治療を要としていた患者さんでも、思春期以降に改善がみられることがあります。
赤血球数が不十分な状態であるため、多くの場合貧血は生涯にわたりみられますが、程度に関しては「軽症~中等度」がほとんどです。血液の難病と聞くと不安に思われる方もいらっしゃると思われますが、重大な症状が現れることは少ない病気と考えていただいてよいでしょう。
※サラセミアの合併症としてCDAを発症した場合、重い貧血を呈する傾向があります。ただし、サラセミアにCDAを合併する例は日本ではほぼみられません。
古典的な3病型に分類されるCDAにより影響が生じるのは、血液細胞のうち赤血球のみです。白血球や血小板など、他の血液細胞には問題が生じないため、感染症のリスクが高まったり、血液が止まりにくくなったりすることはありません。
※VARIANTSの一部では血小板減少がみられます。
結膜(白目の部分)が黄色くなる黄疸がみられることがあります。ただし、CDAによる黄疸は比較的軽症にとどまる傾向があります。
黄疸の発症には、赤血球が壊れる際に作られるビリルビンという物質が関わっています。皮膚や結膜が黄色くなる黄疸には、「間接ビリルビン」が関与するもの、「直接ビリルビン」が関与するものとの2つがあります。
赤血球が壊れるときに生じる間接ビリルビンは、肝臓でグルクロン酸と結合し、直接ビリルビンとなります。
直接ビリルビンの増加による黄疸は、肝臓や脳の病気につながるリスクが高いことで知られていますが、CDAにより増加するビリルビンは間接ビリルビン※であるため、比較的軽い症状で済むことが多くなっています。
※間接ビリルビンは、赤血球の寿命短縮などにより、産生されるビリルビンが過剰になることで増加します。
冒頭でも述べたように、過去には輸血治療により起こる続発性ヘモクロマトーシス(鉄過剰症)が、CDAにおける課題となっていました。経口投与可能な鉄キレート剤の登場以前は、続発性ヘモクロマトーシスの合併症により死に至る例も多かったとされています。
しかし、治療薬の開発により、現在では続発性ヘモクロマトーシスによる重大な合併症を防げるようになっています。
治療介入が必要な貧血がみられる場合、1か月に1回ほどの間隔で輸血治療を行います。
鉄欠乏性貧血とは異なり、CDAによる貧血の場合、鉄剤の使用は禁忌とされています。
鉄が体内に過剰に蓄積しないよう、定期的に血清フェリチン値の測定が行い、必要に応じて鉄キレート剤を使用します。特に輸血治療を要する例では、積極的な使用を考えます。
脾臓は古くなった赤血球を壊して除去する役割を持つ臓器です。そのため、脾臓摘出術を行うことで、輸血治療の回数が大きく減少することや、不要となることがあります。
脾臓は、乳幼児期においては免疫組織として重要な役割を果たしているため、脾臓摘出術は原則として5歳以上の患者さんが適応となります。そのため、幼い頃から貧血がみられる患者さんの場合、まずは輸血治療を選択し、小学校にあがるタイミングなどで計画的に脾臓摘出術を実施することがあります。
CDAを抱えていても、日常生活に何らかの制限がかかるということはありません。定期的な輸血治療のため、通院が必要になるケースもありますが、基本的には健常なお子さんと変わらない生活を送ることができます。
軽度~中等度の貧血は生涯にわたりみられるため、妊娠・出産の際などには輸血を行うこともありますが、妊娠・出産自体はもちろん可能です。
また、一般的な貧血と同じように、運動は体調をみながら無理をせず行うことが大切です。激しい運動に取り組みたいという場合は、治療によりあらかじめ赤血球数を増やしておくこともできるため、主治医の先生に相談することをお勧めします。
北海道大学大学院医学研究院小児科学教室 教授
関連の医療相談が10件あります
騒音性難聴と耳鳴り
1年くらい前から耳鳴りがきになり耳鼻科を受診したら騒音性難聴とのことでした。その後テレビがついていたり雑音があると会話が聞き取りにくく、仕事中どうしてもなんかしら雑音があるため聞き取りにくく聞き返すことが増えてこまっています。時々耳抜きができないような詰まった感じがすることも増えました… 加味帰脾湯という薬を処方されましたが改善しません… ほかの病院を受診してみるべきですか? あと、耳の感じはとても説明しにくいです。症状を伝えるのになにかアドバイスあったらおしえてほしいです…
左足の関節ガングリオン
足の甲にグリッとシコリがあります。 神経を圧迫するのか、歩く時、走る時、寝ている時、鈍痛、痺れがあります。 一度MRI取り、2ヶ月ほど様子は見ましたが 治りません。 スポーツ整形外科の診療所に通っていますが、まだ様子見の方が良いのでしょうか?
潰瘍性大腸炎20年経過、異形性疑い
こんばんは、初めまして 潰瘍性大腸炎を20年患い、ここ5年は落ちついていましたが、今年の夏前後に血便がでたりしました。 先月からは、またよくなりましたが、 内視鏡検査で、新しい病変がみつかり細胞診になりました。結果は3週間かかるそうです。昨年はコロナで検査はなしで、一昨年はそこには何もありませんでした。 異形性かしらべるようです。 とて不安です。今後どうなるか気になっています。
逆流性食道炎について
今年になって、生まれて初めて逆流性食道炎になりました。 原因は不明ですが、仕事や対人関係のストレスかもしれません。 ですが、月日を追う毎にメンタルも強くなっていってるのが自分でも分かります。 ただ、逆流性食道炎の症状(悪心・嘔吐)が治りません。 薬を服用すれば治りますが、飲むのをやめると症状が出てしまいます。 逆流性食道炎って完治するのですか?? どうやったら完治するのでしょうか??
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。
「先天性赤血球形成異常性貧血」を登録すると、新着の情報をお知らせします
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。