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インタビュー

ランドウ・クレフナー症候群とはどんな病気?

ランドウ・クレフナー症候群とはどんな病気?
加我 牧子 先生

東京都立東部療育センター 院長

加我 牧子 先生

目次
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ランドウ・クレフナー症候群とは、就学前後の子どもに発症する脳神経疾患(脳神経系に障害の原因がある病気)で、指定難病のひとつです。主な症状は「聞こえ」や「言葉」の問題で、耳の機能には異常がないのに言葉が聞き取れなかったり、音の意味が理解できなかったりします。てんかんと関係が深いと想定されていますが、発症の原因や仕組みについては、現在のところ医学的に明らかになってはいません。

今回は、ランドウ・クレフナー症候群の症状について、東京都立東部療育センター院長 加我牧子先生にお伺いしました。

ランドウ・クレフナー症候群は、主に「聞こえ」や「言葉」の問題(言語聴覚症状)がみられる病気です。音や言葉は聞こえているのに脳の聴覚野と呼ばれる領域の機能的障害のため、音や言葉の意味を理解できない「聴覚失認」や、言葉を理解したり、話したりする能力に障害がある「失語症」の状態が生じます。

子どもに発症する病気であり、早くて2~3歳、多くは5歳~7歳という、学齢(就学)前後に発症する方が多くみられます。成長するにしたがって多くの患者さんはしだいに回復し、思春期頃までに症状が和らいでゆき、すっかり治ってしまう人も多くみられます。ただし、症状には個人差があり、大人になっても言語聴覚症状が残る方もいます。

ランドウ・クレフナー症候群は、ランドウ先生という医師とクレフナー先生という言語療法士の先生により、1957年に「てんかん性の脳波異常を伴う小児失語症」という病名で報告されました。その後、このような症状の患者さんが各国から報告されるようになり、「ランドウ・クレフナー症候群」という病名が多く使われるようになっています。もちろん実際には、古くからあった病気だと考えられます。

ランドウ・クレフナー症候群の患者さんのほとんどは、生来健康な子どもです。出生時からの発達に問題はなく、言葉を理解して喋ることは年齢から期待されるレベルに発達しています。しかし、いつの間にか聞こえが悪くなったように見え、話し言葉の理解が悪くなり、話し言葉に異常が出てきてまもなく話すこともできなくなってくるなどの言語聴覚症状がみられるようになります。

たとえば、それまでは普通の受け答えができていたにもかかわらず「質問してもとんちんかんな答えが返ってくる」、「呼びかけてもこちらを振り向かない」など、難聴のような状態が起こることがよくあります。また、おとなしかった子が異常にお喋り(多弁)になることや、おしゃべりだった子どもが話さなくなることなどもあり、言葉を使う能力に問題が生じます。

2014年に報告された疫学調査1)では、5歳から15歳未満の子どもで毎年新たに発症する患者さんの数はおよそ100万人に1人と推定されています。また、20歳未満の人口で治療を必要とする患者さんの数は10万人に2人~3人だったとされています。

この調査は、小児科がある日本の病院にアンケートを送付して行われたものです。厚生労働省が発表する人口動態統計に基づき、未回答などのさまざまな要素を考慮して発症頻度、有病率を算出しました。

また、二次調査として、日本で小児神経学を専門にしている医師や、てんかんを専門にしている医師にアンケート調査を行った結果から、日本における5歳〜19歳のランドウ・クレフナー症候群の患者さん60名の詳細な症状が報告されました。

ランドウ・クレフナー症候群の医学的原因は、現在のところまで明らかになっていません(2018年時点)。ただし、患者さんご本人や親御さんの生活習慣、妊娠時の行動などが発症のきっかけになることはありません。症状の程度や経過に個人差がみられる理由も明らかになっていません。患者さんの男女比は、3対2の割合で男の子のほうが多いとされています2)。しかし、男の子のほうが多い理由は明らかになっていません。

現在推定されている原因としては、以下のようなものがあります。

てんかんとは、脳の細胞が異常な活動をすることで、さまざまな症状(発作)が引き起こされる病気です。

ランドウ・クレフナー症候群の患者さんは脳波にてんかん性異常波があり、多くが臨床的てんかん発作を伴うことから、本症候群の発症にはてんかんとの関連が指摘されています。しかし、治療によりてんかん発作が治まっても、言語症状が並行して改善するわけではないことがわかっており、さらなる研究が期待されています、

免疫システムとは、体内に侵入した細菌やウィルスなどを排除する仕組みのことを指します。

ランドウ・クレフナー症候群の初期に、免疫のはたらきを抑制するステロイド治療を行うと言語症状が改善することがあります。そのため、発症に免疫システムとの関連が指摘されています。しかし、すべての患者さんにステロイド治療が有効とは限らないことから、さらなる研究が期待されています。

ステロイド治療…免疫抑制作用、抗炎症作用のあるステロイド剤を用いた治療。

遺伝子異常とは、体内に存在する遺伝子(生物の遺伝情報を伝える物質)に何らかの異常が生じることを指します。

ランドウ・クレフナー症候群の患者さんに遺伝子検査を行ったところ、遺伝子の異常が発見されたという報告があります。しかし、異常は同じものではなく、それが発症の直接の原因であるとは言い切れないと考えられます。

また、遺伝子異常は親から子へと受け継がれる可能性がありますが、ランドウ・クレフナー症候群の家系内発症(家族内に患者さんが複数いること)はこれまでわずかしか報告がなく、遺伝する可能性はまれであると考えられます。

聴覚失認とは、耳ではなく脳の聴覚野に原因がある中枢性聴覚障害のひとつです。音は聞こえているのにその意味を理解できないという状態で、ランドウ・クレフナー症候群では、聴覚失認の程度には個人差があります。

症状が重い場合には、話しことばだけでなく、環境音も認識できないことが特徴です。たとえば、動物の鳴き声が聞こえても鳴き声かどうかわからないとか、犬なのか猫なのかはわからないとか、信号音が聞こえても何を知らせているのかはわからない、といった状態がみられます。その他、音を聞きながらその音の絵を探す課題なら理解できる方もいれば、環境音はわかっても言葉の意味を理解できない「言語性聴覚失認」の方もいます。

通常は、脳に存在する両側側頭葉の聴覚皮質または皮質につらなる白質の両側性の障害によって生じる障害であり、耳には障害がありません。

耳の異常ではない?

ランドウ・クレフナー症候群の聴覚の障害は脳に由来するもので、耳の機能に異常が起こるわけではありません。音自体は聞こえているため、聞こえにくさの程度を判断するための一般的な聴力検査(純音聴力検査)では異常が認められません。

失語症は、言語障害のひとつです。脳の言語野(言語機能を支配している部位)に障害があるため、声を出す器官や聴覚には異常がないにもかかわらず、言葉を話したり、理解したりする能力に障害がみられる状態をいいます。

失語症には複数の種類があり、

  • 運動性失語…言葉を理解しているが話せない。
  • 感覚性失語…なめらかに話せるが言葉を理解できない。ただし発話自体はなめらかでも、わけのわからない言葉(ジャーゴン)になることがある。
  • 全失語…運動性失語と感覚性失語が合併した重度の言語障害。

などが挙げられます。

ランドウ・クレフナー症候群の患者さんには、急性期に感覚性失語や全失語がみられます。症状が和らいでくると、運動性失語のような状態になる方もいます。

てんかんとは、脳の細胞が異常な活動をすることにより、さまざまな症状(発作)が引き起こされる病気です。てんかん発作の種類は大きく分けて以下の二種類があります。

  • 部分発作…脳の一部分から異常な電気的活動が始まって発作が起こる。
  • 全般発作…脳の全体の異常な電気的な活動により発作が起こる。

両方のタイプの発作が起こる方もいます。

ランドウ・クレフナー症候群の患者さんの約70~80%はてんかん発作を伴います。発作の型は一定のものではなく、全般発作、部分発作のいずれも起こる可能性があります。言語症状より先にてんかん発作が起こる方もいれば、後に起こる方もいます。

脳波異常とは、脳波に異常が出現することを指し、主に突発性のてんかん性異常波の出現を指します。脳波を記録すると、正常でも安静時・閉眼時・覚醒時などに特徴的な、異なる波形が現れます。ランドウ・クレフナー症候群では、患者さんが起きているときは散発的(不規則に現れること)に異常な突発性の脳波がみられ、眠っているときには悪化して脳全体に異常な波が持続して発生することが特徴です。眠っているときの方が高度な脳波異常がみられる理由は明らかになっていません。

精神行動障害とは、周りの人には原因がわからない大騒ぎをしたり、ひどく落ち着きがなくなったり、粗暴になったりと、これまでと違って周囲が困る行動が生じる状態をいいます。ランドウ・クレフナー症候群では、発症して最初の頃(急性期)に一時的に行動異常を伴うことがあります。その場合は、落ち着きがなくなったり、乱暴になったりといった行動がみられます。

周囲の方は、理由がわからないので、「つらいことがあって怒ったのではないか」「わざと悪い子のふりをしているのではないか」と思われることもあるかもしれません。

このような症状は、脳腫瘍や脳外傷のあと、特定の部位たとえば、主に前頭葉の損傷で起こることがあるため、ランドウ・クレフナー症候群でも脳の画像検査を受けることが多いでしょう。しかし本疾患では、形態的な脳の異常所見は原則として証明されません。

学校の勉強が進まなくなることが多い

ランドウ・クレフナー症候群の患者さんは言葉の聞き取りに問題があり、言葉が間違って聞こえてしまうため、たとえば、ライオンをタイオンと書いたり、ジョウギ(定規)をチョキと書いたりといった書き間違いがみられることがあります。病気がよくなってきても学習面では、算数はできても国語は苦手、もしくは英語が苦手というお子さんがいます。

また、学校では先生の指示を正しく聞き取れないため、指示に従えず、反抗的だと勘違いされたり、真剣に取り組んでいないようにみえたりするなどの誤解が生じることもあります。

精神症状が現れることもある

発症早期の頃は、これまでと違って大声を出して騒いだり、乱暴になったり、ひどく落ち着きがなくなったりと異常な症状が出現することがあります。また、発症してから時間が経ち、病気がよくなってくると、当初は自分の症状を理解できなかったけれども「自分はこれができていないのだ」と自覚してくることで、気分が落ち込んでくるお子さんもいます。

ランドウ・クレフナー症候群の診断は、病気の発症の仕方や本人の状態の観察から臨床的にこの病気を疑うところから始まります。

実施する検査としては、以下のような方法が挙げられます。

脳波検査 

脳波検査とは、脳の活動の状態を調べる検査です。頭に電極をつけて、起きているときや眠っているときなどの脳波を記録して分析します。ランドウ・クレフナー症候群では高度な脳波異常が記録されるため、脳波検査を行うことにより診断が早期に確定する可能性があります。

聴力検査  

ランドウ・クレフナー症候群では、聞こえが悪くなったように見え、言葉を聞き取れなくなったり環境音を理解できなくなったりする状態(聴覚失認)がみられるため、以下のような聴力検査を行います。

  • 純音聴力検査…検査音が聞こえるかどうかを調べる通常の聴力検査です。検査に協力できるお子さんが実施した場合、検査結果は正常です。
  • 聴性脳幹反応(ABR検査)・・・脳波を利用した聴力検査です。睡眠による変化を受けないので、純音聴力検査に協力できなきないお子さんでも検査を受けられます。また、検査結果は正常です。
  • 語音聴力検査…言葉がどのくらい聞き取れているかを調べる検査です。
  • 環境音弁別検査…環境音がどのくらい理解できているかを調べる検査です。

MRI、CT、脳磁図、単一光子放射断層撮影(SPECT) 

CT、MRIでは異常な部位は認められません。正常の結果が得られます。脳磁図(MEG)ではてんかん発作の波がどの部分から発生しているかなどを調べる際に役立ちます。

単一光子放射断層撮影(SPECT)ではてんかん発作の中心が脳のどこの部位に強いかなどを調べるのに役立ちます。

ランドウ・クレフナー症候群の症状はとても珍しいもので、最初は何が起こっているかわからないことの方が多いと思われます。まずは最初にかかりつけの小児科で相談してください。詳しい検査が必要になるので、専門家のいる設備が整っている大きな病院を紹介してくださるでしょう。そこで診断につながる可能性が高いと考えられます。

一般の小児科では症状に気づかれにくく、診断されるまでには時間のかかることもあります。ランドウ・クレフナー症候群は、小児科のなかでも小児神経学を専門にしている医師や、てんかんを専門にしている医師の間ではよく知られてはいますが、患者さんの数自体がとても少ないので思い至るまでに時間がかかることがある病気だからです。

【参考文献】

1)M.Kaga et al. Brain & Development 36:284-286,2014.

2)加我牧子.厚生労働科学研究費補助金 難治性疾患克服研究事業 Landau-Kleffner症候群の実態把握のための症例研究 平成21年度総括分担報告書. 2010.

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