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インタビュー

エーラス・ダンロス症候群の診断、治療について

エーラス・ダンロス症候群の診断、治療について
三宅 紀子 先生

横浜市立大学 医学部 遺伝学教室

三宅 紀子 先生

目次
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エーラス・ダンロス症候群とは、皮膚の過伸展性、関節の過可動性、結合組織の脆弱性という3つの症状がみられる症候群を指します。遺伝子の異常を原因として発症するため、現在は根本的な治療は難しいと考えられています(2018年6月時点)。しかし、定期的な経過を見ていく必要がある症状や、予防が可能な症状もあるため、専門の医師に相談して治療や健康管理に取り組むことが大切です。

今回は、エーラス・ダンロス症候群の診断と治療について、横浜市立大学医学部の三宅紀子先生にお伺いしました。

エーラス・ダンロス症候群の診断を確定するためには、複数の検査を行います。多くの場合、まずは臨床診断(診察で体の異常をみること)で、エーラス・ダンロス症候群の可能性を疑います。そして、病型に応じて生化学的検査、遺伝子検査等の結果をあわせて、診断が確定する場合が多いでしょう。

生化学的検査

血液や尿などに含まれる特定の成分を調べる検査です。エーラス・ダンロス症候群の一部の病型の診断につながる場合があります。

遺伝子診断

エーラス・ダンロス症候群は、原因となる遺伝子の多くが解明されている病気です。そこで、変異のある遺伝子を調べることにより診断が確定します。

現在(2018年6月時点)では、遺伝子検査は血管型のみ保険適用されていますが、ほかの病型に関してはまだ保険適用となっておらず、検査を受けられる病院は限られています。

エーラス・ダンロス症候群では、最初に受診される診療科は病型によって異なります。たとえば、皮膚の症状がメインの場合は皮膚科、関節の場合は整形外科、血管の場合は循環器内科を受診される方が多いでしょう。生まれつき症状が現れやすい筋拘縮型は、小児科で気づかれることがあります。

症状の程度によっては、病気であるかどうかを自分で判断するのが難しい場合もあります。しかし、脱臼を何度も繰り返す、血腫*が非常にできやすいといった症状に気づいたら、医師に相談しましょう。詳しい検査が必要な場合は、設備の整った病院にかかることも大切です。

血腫…血液が軟部組織の隙間に貯留した状態。

エーラス・ダンロス症候群の可能性が考えられるときは、病型を確定させることが大切です。たとえば、血管型では命に関わる合併症があり、血圧のコントロールが大切というように、病型によって症状やその後の経過、管理法が異なるためです。

日本には、各病型を専門的に診療・研究している医師がいます。患者さんを実際に診ている先生に相談して、なるべく早く病型を確認しましょう。

エーラス・ダンロス症候群を根本的に治療する方法はなく、症状を緩和する治療(対症療法)が中心となります。たとえば、関節の痛みに対する鎮痛薬の投与、皮膚の裂傷がみられる部分の縫合、血管の病気(動脈解離など)に対する手術といった治療が検討されます。

ただし、病型によっては傷が治りにくいなどの特徴があり、手術を受けること自体がリスクとなる場合があります。そこで、本当にその手術をするべきなのかを検討したり、手術をしても対応できるようなバックアップ体制を事前に整えたりすることが大切です。

エーラス・ダンロス症候群は、遺伝子の異常により生まれつき発症するため、発症そのものを予防する方法はないと考えられます。しかし、合併症の予防法や治療法、症状の進行を抑える方法がある場合には適切に対応していくことが重要です。病型によって注意すべき症状が異なるため、自分の病気の特徴を確認しておきましょう。

どのような対策が考えられる?

たとえば、血管型では、動脈解離、動脈瘤、動脈破裂、腸管破裂、妊娠中の子宮破裂などにより、命に関わる症状が引き起こされる場合があります。そのため、定期的に受診して血圧を適正に保つようにしたり、妊娠に関しては主治医の先生に相談したりすることが重要です。筋拘縮型では、少し体をぶつけただけで皮下血腫が生じたり、程度によっては出血性ショック*が引き起こされたりする場合があるため、けがをしないように注意が必要です。

出血性ショック…大量出血のため体内の血液量が減少し、体に十分な血液や酸素が送れなくなった状態。

エーラス・ダンロス症候群は、重い症状の予防や、けがへの対策などが必要な病気です。自分がどのような状態であるか、どのような点に注意しなければならないのかといった情報を、患者さんご本人だけでなく、家族、周囲の方、医療関係者、学校や職場の方などと必要に応じて共有しておきましょう。

そこで、周囲の方の理解や協力も大切です。患者さんがどのようなことに注意しなければならないのかを確認したうえで、適切にサポートしていただけたらと思います。

患者・家族会とは、同じ病気をもつ患者さんや、患者さんのご家族が集まって運営する組織のことです。実際に即した情報共有や交流を行うことができるため、患者さん同士の集まりはとても大切です。エーラス・ダンロス症候群についてもその機会があるため、希望される方は参加されるとよいのではないでしょうか。

エーラス・ダンロス症候群は、病型によって症状や治療法が異なるため、正しい診断・理解が適切な治療・管理につながります。そこで、各病型の患者さんを専門的に診ている医師に相談することが大切です。ぜひ、正しい診断をつけてもらい、治療や管理に取り組んでいきましょう。

また、現時点ではどの病型にも分類されない方や、原因がわかっていない病型もあります。研究者としては、原因不明の病型や新しい病型の患者さんの原因を明らかにし、診断法や治療法の開発につなげることで、医療に貢献していきたいと思っています。

  • 横浜市立大学 医学部 遺伝学教室

    日本小児科学会 小児科専門医日本人類遺伝学会 臨床遺伝専門医

    三宅 紀子 先生

    1999年に長崎大学医学部を卒業後、長崎大学医学部付属病院小児科に所属。専門分野である分子遺伝学、人類遺伝学、小児科学の研究に尽力し、2010年より横浜市立大学医学部遺伝学・准教授を務める。多数の論文を発表。

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