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大腸がん治療と仕事の両立−両立における問題点とは?

大腸がん治療と仕事の両立−両立における問題点とは?
村田 幸平 先生

関西労災病院 副院長・外科部長

村田 幸平 先生

目次
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大腸がんは、全てのがんのなかで、男女合わせてもっとも患者数が多いがんです1)。そのため、高齢者に多いがんではあるものの、仕事を続けている大腸がんの患者さんは少なくありません。今回は、そのような仕事を持つ大腸がんの患者さんが抱える問題について、関西ろうさい病院 副院長であり外科部長である村田幸平先生にお話を伺いました。

大腸

オストメイト対応トイレがある職場が少ない

仕事を持つ大腸がんの患者さんにとって、障壁となり得るもののひとつが「人工肛門(ストーマ:肛門の代わりとなる便の排出口)」です。

大腸がんは、大きく「結腸がん」と「直腸がん」に分かれます。このうち、肛門に近い場所にある直腸がんの外科手術では、がんを含む腸管を切除すると同時に、人工肛門を造設することがあります。この人工肛門には、便を受け止めるためのパウチ(ストーマ袋)がついており、定期的な交換が必要です。そしてその際、汚れた装具や腹部などを洗浄する必要があります。

人工肛門の装具を交換・洗浄するための設備が設けられたトイレを「オストメイト*対応トイレ」といい、公共施設を中心に増えつつあります。しかし、オストメイト対応トイレがある職場は少ないのが現状です。そのため、勤務中にストーマを交換したくてもできないことを、仕事上での支障と感じている大腸がん患者さんは多いのではないかと考えます。

*オストメイト…人工肛門や人工膀胱を造設した方のこと

抗がん剤治療

大腸がんの外科手術後には、再発を防ぐために、一定期間にわたり抗がん剤治療(術後補助化学療法)を行うことがあります。この期間中、抗がん剤治療の内容によっては、通常通りに仕事を続けることが難しいケースがあります。

大腸がんの術後に行う抗がん剤治療には、主に以下の3つの方法があります。いずれの方法であっても、約2〜3週間に1回の頻度で病院に来ていただきます。

  1. 経口(内服)のみ
  2. 経口+点滴
  3. 点滴のみ

これらの治療法にはメリットとデメリットがあり、それらを考慮したうえで、患者さんの仕事やライフスタイルに合わせて、治療法を決定します。

たとえば、経口だけの抗がん剤治療の場合、病院での診療時間が短いというメリットがある一方、毎日抗がん剤を服用する必要があります。このことから、「薬を飲んでいることに対する周囲(上司や同僚など)の目が気になる」という理由で、点滴だけの治療を選択される方がいらっしゃいます。

点滴だけの抗がん剤治療では、毎日抗がん剤を服用する必要はなく、その間は自分が大腸がんであるということを忘れることもできるでしょう。ただし、点滴治療後は2日間にわたり抗がん剤を持続的に注入し続ける必要があり、その間は針を刺したままにしておく必要があります。

そのため、たとえば満員電車に乗って通勤する必要がある場合、針が刺さった状態での通勤は困難です。このような場合には、金曜日に抗がん剤治療をして、針が刺さった状態で週末を過ごしたり、別の抗がん剤治療を選択されたりする方もいらっしゃいます。

薬

抗がん剤治療によって起こる副作用にも考慮する必要があります。

副作用は、抗がん剤の種類によって異なりますが、多くみられる症状に手足のしびれがあります。この副作用は、手先を使った細かい作業を伴う仕事をされている方にとって、障壁となることがあります。そのほか、顔にニキビのような皮疹(ひしん)が出る抗がん剤もあり、営業や接客業などをされている方は、仕事を続けにくい状態となることも考えられます。

これらについて考慮したうえで抗がん剤を決定しますが、どうしても優先されるのは治療効果です。仕事に支障をきたしたとしても、その患者さんにとってもっとも効果が高いと考えられる抗がん剤であれば、使用せざるを得ません。

そのような場合には、患者さんからの希望があれば、病院から職場に対して考慮していただきたいことを記載した文書を作成するなどして、治療と仕事を両立できるような支援を行います。たとえば、「抗がん剤の副作用によって顔に皮疹がでるため、内勤へ業務転換をされてはいかがでしょうか。」というようなはたらきかけを行うことも可能です。

無理のない範囲で仕事を続けることは大切ですし、私たち医療者もその支援をさせていただいています。しかし、もし仕事を続けることを苦痛に感じていたり、辞めたいと思っていたりするのであれば、離職もひとつの選択肢です。

仕事を続けることだけが正解ではありません。生きがいを感じながら、治療を続けることが大切だと思っています。ぜひ、ご自身の生きがいを大切にしていただきながら、大腸がんと上手に付き合っていただきたいと思います。

【参考】

1)地域がん登録全国合計によるがん罹患データ(2014年~2015年)地域がん登録全国合計値

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