新潟県の下越地域に位置する新潟県立新発田病院は、「阿賀北」と呼ばれる圏域の高度急性期病院として、今日も地域住民の命を守るべく奮闘しています。救急救命センターを持つ新発田病院の使命は、重症度を問わず、可能な限り全ての救急患者さんを受け入れ、診療することであると、院長の塚田芳久先生は語ります。あらゆる状態の患者さんを受け入れるER型の救急体制を採用した理由や、研修医・女性医師から働きやすく学びが多い病院といわれる所以について、塚田先生にお伺いしました。
新潟県立新発田病院は、1885年(明治18年)に創立された陸軍衛戍病院を起源とし、移転と増改築を重ねながら、新潟県下越圏域の皆さまの健康をサポートしてきました。
地域の総合病院として機能してきた当院が現在の形になったのは2006年(平成18年)です。この年の大規模な移転リニューアルにより、新たに救命救急センターが設置され、当院は「阿賀北」と呼ばれる医療圏の救急医療と高度急性期*医療を担う中核病院となりました。
また、当院は厚生労働大臣が指定する基幹型初期臨床研修病院として、研修医の雇用と育成にも力を入れています。特に救命救急センターでの研修は、一人前の医師を目指す研修医に好評を博しており、地域における教育機関としての役割を果たすことができていると考えています。
*高度急性期…状態が安定しておらず、早期安定に向けて密度の高い診療を必要とする時期のこと
当院の救命救急センターは、ER型救急医療と呼ばれる体制をとっています。ER型救急医療とは、重症度や病気の種類を問わず、可能な限り全ての患者さんを受け入れ、ER(Emergency Room)で救急医が診療を行う救急医療の在り方です。
当院がER型救急医療を採用した理由は、下越圏域の地域特性とも関連しています。病院の数が多い地域では、救急医療を担う病院が1次(軽症対応)から3次(重症対応)まで機能を分担することで、より多くの患者さんに適切な救急医療を提供することが可能になります。
しかし、地域面積あたりの医療機関が少ない地域では、自ずともっとも安心感を得られる3次救急病院に患者さんが集中する傾向があります。特に情報化が進んだ近年では、一般の方の重くまれな病気に対する不安感も強くなってきていると感じます。有症時に強い不安を持ち続けることは、患者さんにとって二重の苦しみともなりかねません。そのため、かかりつけの診療所が閉まっている時間帯にも不安を拭える医師の存在が必要であると考え、当院はウォークインの患者さんも救急車も受け入れる救急医療体制をとっています。
当院は、地域の医療機関同士の役割分担と連携をすすめる「地域医療支援病院」のひとつです。そのため、当院では治療を受けて状態が安定した患者さんを地域の医療機関に紹介する「逆紹介」に力を入れています。また、下越圏域を守る高度急性期病院として、日ごろ地域の医療機関を受診されている患者さんの病状が変わった時には、責任を持って診療にあたっています。
患者さんが住み慣れたこの地で暮らしながら、安心して継続的な診療を受けられるよう、今後もスムーズな紹介・逆紹介を推し進め、地域全体で患者さんを診ていく体制を強化していきたいと考えています。
当院は、初期研修医の研修プログラムを実施する基幹型初期臨床研修病院として、医師の教育にも力を入れており、登録学生数が定員に達する「フルマッチ」を達成し続けています(2018年12月時点)。
研修施設としての当院の魅力は、ER型の救急医療体制を採用しているところでしょう。医師からみたER型救急体制の大きな特徴は、「どのような患者さんが来るのかわからない」ということです。3次救急病院のように、既に診断がついている患者さんばかりが搬送されてくるわけではないため、ERで対応する医師の役割は非常に大切になります。
重症度の異なるさまざまな患者さんに対応する環境があることから、当院は一人前の医師になるためのスキルをいち早く習得したいと考える、学習意欲に満ちた研修医の方に適した施設であると考えています。
救急科に勤める医師も研修医の皆さん一人ひとりを大切な戦力と考え、積極的に診療を任せるなど、経験値を高めるためのサポートをしています。
私自身は、長い医師人生を通し、この職業は大きな社会貢献をさせていただいているという手応えを感じながら、充実した人生を送っていける、素晴らしい職業のひとつだと感じています。近年では医師という職業のリスク面に焦点が向けられることも増えていますが、今現在医師を目指して励んでいる方には、ぜひ恐れることなく勇気を持ってチャレンジしてほしいとお伝えしたいです。
最近では、医療従事者間での口コミなどをきっかけに、当院に就職される女性医師も増えています。これは、2006年の改築時に当時まだ珍しかった院内保育所を作るなど、女性医師が育児をしながら勤務できるよう環境整備を進めてきた成果といえるのかもしれません。
こうした設備面の強化以上に力を入れてきたことは、院内スタッフ全員の意識改革です。育児中の女性医師の働きやすさは、周囲の医師の理解とサポートがあるかどうかによって大きく変わります。たとえば、夜勤のフォローがごく自然になされる環境と、フォロー自体はあるものの不満の声があがるような環境とでは、働きやすさも当然に異なるでしょう。
当院では10年以上前から意識改革に取り組んでいたため、現在では家庭との両立が大変な時期にある女性医師をサポートしようとする意識が、院内全体に根付いていると感じます。
性差なく男性・女性が共に働いている海外の事例などを参考にしながら、今後も医師、看護師、病院職員など、スタッフ皆が継続的に働いていける環境を構築していきたいと考えています。
今後の大きな目標は、病院や医師の役割を拡大していくことです。現在病院で行われている医療とは、異変に気づいた患者さんの受診を待つ医療です。今後はこういった医療に加え、健康管理に関する情報の発信・啓発活動など、自ら訪ねていく医療もなされていくべきでしょう。日頃から医師と地域住民の方々が関わり、信頼関係を築きながら健康管理を行っていく地盤ができれば、地域全体の疾病予防や医療費の削減にもつながるはずです。
地域にお住まいの皆さんも、健康に関する不安をお持ちの場合には、どうぞお気軽にご相談ください。当院は、今も多くの方が持つ「病院は敷居が高いところである」といったイメージを払拭できるよう、医師と患者さんが対等な信頼関係を築き、距離を縮めていけるような関係づくりを目指しています。
新潟県厚生農業協同組合連合会 代表理事理事長
「受診について相談する」とは?
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。