築地神経科クリニック 東京ガンマユニットセンター 院長
芹澤 徹 先生
千葉大学医学部附属病院 脳神経外科 教授
樋口 佳則 先生
千葉県がんセンター 医療局長
井内 俊彦 先生
昭和大学病院 放射線治療科 講師
村上 幸三 先生
千葉県循環器病センター 脳神経外科 主任医長
青柳 京子 先生
※新型コロナウイルス感染拡大に伴い、学会の開催形式が変更となりました。詳細および最新の情報につきましては、以下のバナーよりご確認ください(2020年4月6日追記)。
2020年5月22日(金)、御茶ノ水ソラシティカンファレンスセンターにて、第29回日本定位放射線治療学会(以後、「学会」)が開催されます。今回は、学会の開催に先駆けて、実行委員の先生方をお招きして、座談会を行いました。学会の歴史から、先生方が学会の開催に際してどのような思いでご準備を進められているのかといったお話、そして、当日予定しているプログラムの見どころまで、さまざまな話題が展開された座談会の様子をレポートします。
会長 芹澤 徹先生(医療法人社団高恵会 築地神経科クリニック 東京ガンマユニットセンター 院長)
実行委員長 樋口 佳則先生(千葉大学医学部附属病院 脳神経外科 准教授)
井内 俊彦先生(千葉県がんセンター 脳神経外科 部長)
村上 幸三先生(昭和大学病院 放射線治療科 講師)
青柳 京子先生(千葉県循環器病センター 脳神経外科 主任医長)
名称 第29回日本定位放射線治療学会
テーマ 定位照射の光と影
会長 芹澤 徹 先生
会期 2020年5月22日(金)
※5月21日(木)18:50~21:00プレコングレス(教育セミナー)開催
会場 御茶ノ水ソラシティ カンファレンスセンター(東京都千代田区神田駿河台4-6)
※5月21日(木)プレコングレスも同会場で開催
※新型コロナウイルス感染拡大に伴い、プレコングレスは中止、学会の開催形式も変更となりました(2020年4月6日追記)。詳細は以下の画像をクリックしてご確認ください(学会webサイトへ移動します)。
芹澤先生:
1990年、日本に初めてガンマナイフが導入されましたが、第一回大会はその翌々年、1992年に開催されています。当時、東京女子医科大学に在籍されていた、故・高倉公朋先生が第一回大会の会長でした。高倉先生は、ガンマナイフだけではなく、Xナイフなども含めた“定位放射線治療”に関して、ディスカッションをするための会としてこの学会を設立したと聞いています。
ただ、初めはガンマナイフを用いて治療を行う脳神経外科医の参加が多かったようです。そこから徐々に、ガンマナイフ以外の定位放射線治療装置を扱う脳神経外科医や、放射線治療医、定位放射線治療の適応となる各疾患を扱う当該診療科の医師も参加するようになっていきました。さまざまな立場の医師が集まっていますから、当然、診療のスタンスも異なりますし、それぞれの専門分野ごとに考え方も異なります。そうした意見の相違から、数年前まではそれぞれの立場ごとに対立することが多々ありました。
樋口先生:
激しい議論が繰り広げられることが非常に多かったですが、裏を返せば、そういった先生方は定位放射線治療に対する思い入れが非常に強かったのだと思います。議論にあがった内容に対して、自分たちの主張の正しさを証明するために、スタディを組み、次の学会で発表する、ということが繰り返されてきました。
井内先生:
学会が開催された当初は、まだ定位放射線治療をどのように診療に生かしたらいいのか、誰も分からないような状態だったのだと思います。ただ、回を重ね、議論を繰り返すなかで、徐々に定位放射線治療に関する共通認識が作られてきたと言えるのではないでしょうか。定位放射線治療に関わるさまざまな立場の人々の認識を共有する場となっているという点は、この学会が存在する、大きな意義だと考えています。共通認識が作られるなかで、議論の激しさはだんだんと落ち着いてきましたし、学会として成熟してきていることを感じます。
青柳先生:
さまざまな立場の方が参加しているからこそ、自分が演題発表を行ったときには、思いもよらなかった視点からのご質問をいただきました。自身にはなかった視点での意見を聞けるからこそ、次に研究テーマを進める際に、それがとても参考になります。こうした点も、この学会のよさであり、存在意義のひとつではないかと思っています。
芹澤先生:
第29回大会では、“定位照射の光と影”というテーマを掲げています。2016年に、Iconというガンマナイフの新たなモデルが日本での製造販売承認を受けるなど、今もなお、定位放射線治療を取り巻く環境は変化しています。当然、新たな機器が開発されると、そこにスポットライトが当たります。それが“定位照射の光”だとすると、“定位照射の影”は晩期合併症です。定位放射線治療が日本に導入されてから約30年が経った今こそ、長期的に見た治療成績や合併症の発生率など、影の部分からも決して目をそらさずに、ディスカッションをしてみたいと考えています。影の部分を理解したうえで、患者さんにどのように説明するのか、どうしたらもっとよい治療法になるのかということを、定位放射線治療に関わる多くの人と一緒に考えていきたいですね。
全体のプログラムについては後ほど改めてご紹介しますが、今回、このテーマとリンクする“長期成績と晩期合併症”というシンポジウムを予定しています。各疾患における長期的な治療成績を明らかにすることで、治療の適応について参加者で再考していければと思います。
芹澤先生:
もともとこの学会の参加者はダイバーシティに富んでいると感じていました。先ほども述べたように、脳神経外科医だけではなく、放射線治療医や定位放射線治療の適応となる疾患を扱う他科の医師も参加しています。さらにここ数回は、医学物理士や診療放射線技師、看護師の参加も見られるようになってきました。
そうした流れを受け、特に今回は、意識的に実行委員もあらゆる立場の方で構成するようにしています。それにより、どの立場の方でも何かしらの気づきを得ることができる学会プログラムを作ることができているのではないかと思っています。そのうえで、それぞれ、どのような方にご参加いただきたいとお考えでしょうか。
村上先生:
私は、立場はどうあれ、少しでも定位放射線治療に関わる方、皆さんにご参加いただきたいです。脳神経外科医や放射線治療医はもちろん、内科医、外科医などの垣根を越え、定位放射線治療を知ることで、診療における発想の幅を広げることができるのではないでしょうか。また、医学物理士や診療放射線技師の方にとっても、参加意義のある学会だと思っています。これまで定位放射線治療が施行されていなかった施設でも、今後この分野が発展すればするほど、定位放射線治療を取り入れる方向になることが予想されます。ですから、今後の可能性を広げるという意味でも学会に参加していただき、知見を広げていっていただきたいと思います。
樋口先生:
定位放射線治療の認知度自体は、徐々に上がってきているのではないかと思います。一方で、個人的に若い脳神経外科医の定位放射線治療に対する関心は低い印象があります。私としては、治療の選択肢を広げるという意味でも、是非若手医師に来ていただきたいです。
青柳先生:
私も若手医師に是非来ていただきたいと思っています。私自身は、日ごろガンマナイフ治療を中心に行っています。当然、他施設の脳神経外科の先生から、患者さんをご紹介いただく機会もあります。その際、その症例がガンマナイフの適応となるのかどうか、理解しないままにご紹介いただくことも少なくありません。ですが、やはり医師である以上は、どういった治療で、どのくらいの治療成績なのか、といった点を、リスクも含めて患者さんにご説明できるようにしておいていただきたい、という思いがあります。実際に自身の手で定位放射線治療を行うか否かにかかわらず、脳神経外科医には是非広く参加していただければと思います。
井内先生:
私は、日ごろ、診療で一人悩みながら定位放射線治療を行っている医師にご参加いただきたいです。判断を迷うような症例で、ほかの医師がどうしているのかを知り、日々の診療の参考にしていただければと思います。それから、神経腫瘍学者の立場で言えば、オンコロジストの先生方にも是非来ていただきたいです。自分たちが依頼をする定位放射線治療が、どのように行われ、どれほどの治療成績なのかという点に興味を持っていてほしいと考えています。
芹澤先生:
本大会に限ったことではありませんが、この学会の間口の広さは特筆すべき点かもしれません。当日、どのようなお話が聞けるのか、私自身もとても楽しみです。
本記事では、実行委員の方々の開催にかける思いを中心にお伝えしました。記事2では、こうした実行委員の思いを具現化した、学会のプログラムについてご紹介していきます。
※学会開催に関する最新の情報は第29回日本定位放射線治療学会webサイトよりご確認ください。
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