僧帽弁閉鎖不全症とは、心臓にある“僧帽弁”が何らかの原因で機能しなくなることで血流が逆流する病気です。僧帽弁閉鎖不全症の治療では、ダヴィンチ(手術支援ロボット)や、3D内視鏡やカテーテルなどを用いた新しい治療法が発展を続けています。
今回は、榊原記念病院 心臓血管外科 成人 主任部長、帝京大学医学部附属病院 心臓血管外科主任教授を務める下川 智樹先生に、僧帽弁閉鎖不全症の治療において心がけていることや、ご所属されている2つの病院の特色などについて伺いました。
私は、榊原記念病院で1994年から僧帽弁形成術に携わっていますが、1990年代から現在にかけて、診療で目にする僧帽弁の状態は変化しているように思います。その背景には、医学・医療技術の発展に伴い、手術によって介入するタイミングが変化してきたことがあるでしょう。
このように医学や医療技術が進歩し、対峙する病気そのものが変化するなかで、医師は、それらの変化に応じて自らの技術や治療法をブラッシュアップしていかなければなりません。そのような思いを強く持ち、新しい治療法を日々追求しています。
また、僧帽弁閉鎖不全症の治療では、僧帽弁の逆流をなくすことはもちろん、弁の機能を改善することが重要だと考えています。常に完成後の弁の形体をイメージして、接合範囲が十分に保たれている、かつ長期的に耐久性を保つ僧帽弁の形成を心がけています。
私は、榊原記念病院と帝京大学医学部附属病院という2つの病院で僧帽弁閉鎖不全症の手術を行っています。どちらの病院もよいスタッフがそろっており、チームとして成熟していると思います。
帝京大学医学部附属病院の特色としては、総合病院のため、合併症が多くある患者さんでもほかの診療科の医師と協力しながら治療を行うことができます。ダヴィンチという手術支援ロボットがあるため、これを用いながらMICS(低侵襲心臓弁膜症手術)で僧帽弁形成術を行っています。
一方で、榊原記念病院は心臓を専門とする病院のため、年齢が若く、心臓にのみ病気がある患者さんの治療を多く行っています。ここでは、3D内視鏡を用いて僧帽弁形成術をしています。
ダヴィンチと3D内視鏡による手術を比較した研究はまだなく、どちらがよいということは分かっていません。私としては、ダヴィンチと3D内視鏡の両方を経験することで、それぞれの短所を補いながら、それぞれの長所を生かした手術にしていきたいと考えています。
僧帽弁閉鎖不全症の治療を検討されている方がいらっしゃいましたら、まずはかかりつけの医師にご相談いただき、適切な病院をご紹介いただくようにしてください。
外科的な手術が適応とならない患者さんに対しても治療が行えるように、両施設では心臓弁膜症に対するカテーテル治療に積極的に取り組んでいます。
現在は、カテーテルを用いて僧帽弁の逆流を治療する低侵襲な経皮的僧帽弁形成術(マイトラクリップ)を行っており、さらに、2020年中を目標に経カテーテル的大動脈弁置換術を始める予定です。
僧帽弁閉鎖不全症は、無症状でも手術を行う時代になりました。専門医に診てもらった結果、手術が必要と判断された場合は、早めに手術を受けられたほうがよいでしょう。
日本には病院が多いこともあり、「どのような基準で、治療を受ける病院を選べばよいのですか」と、よく患者さんに尋ねられます。ポイントの1つとして、その病院がどのようなMICSを行っているのか、直接医師に確認するとよいでしょう。なぜなら、僧帽弁閉鎖不全症におけるMICSの方法にはいくつか種類があるためです。
また、手術を考えている病院と外科医が、どれくらい僧帽弁形成術に精通しているかを調べることもポイントです。3D内視鏡やロボットによる手術など、医療技術は徐々に発展してきました。しかし、それらはあくまで手段であり、僧帽弁を修復するのは外科医なのです。ロボットが修復してくれるわけではありません。ですから、やはり最終的にはその医師や病院のチームが僧帽弁形成術に詳しいことが重要なポイントの1つになります。
その指標の1つが、病院の年間の弁膜症に対する手術件数と、外科医の経験や治療実績です。これらの情報を調べたうえで、判断することが重要です。年間200例以上、弁膜症に対する手術の実績を有する病院であるかという点は、1つの目安になると思います。
榊原記念病院では、弁膜症に対する手術を年間275件(2018年1〜12月)行い、患者さんの治療に従事しています。このように、長年積み重ねてきたノウハウを基に、私たちはこれからも新しい治療を積極的に取り入れ、手術の腕を磨いていきたいと考えています。僧帽弁閉鎖不全症の治療を検討している方は、お気軽にご相談ください。
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帝京大学医学部附属病院 心臓血管外科 主任教授
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