手湿疹は洗剤皮膚炎、進行性指掌角皮症と呼ばれることもあり、症状や原因によってさまざまなタイプがあります。主な症状には指の乾燥や角化(皮膚が硬くなること)、赤み、ひび割れなどが見られ、手のひらまで広がることもあります。では、手湿疹の原因にはどのようなものが考えられているのでしょうか。
今回は手湿疹の原因を中心に、対策や治療法について詳しく解説します。
手湿疹は洗剤皮膚炎と呼ばれることもあり、その名のとおり洗剤の使用や水仕事が原因となることがあります。
手湿疹を引き起こすメカニズムは角質層から水分が失われてしまうことだとされています。角質層には皮脂、天然保湿因子(アミノ酸など)、角質細胞間脂質(セラミドなど)などの保湿成分が含まれており、皮膚の水分を保つ役割を持ちます。手や指は皮脂を分泌する皮脂腺が少ないため、その分厚い角質層で皮膚が保護されていますが、さまざまな原因によって角質層のバリア機能が失われると手湿疹につながるとされています。
以下では角質層の水分が失われて手湿疹の原因となるものとして考えられるものを解説します。
手湿疹の主な原因は水仕事や洗剤の使用です。台所せっけんなどの洗剤を頻繁に使う、洗剤の濃度が高いなどの場合、皮膚のバリア機能が低下して手湿疹を引き起こすとされています。また、手湿疹の症状が引き起こされるまでには洗剤の化学物質や濃度、使い方、皮膚の状態などさまざまな要因が複合的に関連していると考えられています。
このように洗剤などが直接皮膚を刺激して生じる皮膚炎を刺激性接触皮膚炎といい、手湿疹の原因の7割を占めるといわれています。
化学物質によるアレルギーで手湿疹の症状が出るものをアレルギー性接触皮膚炎といいます。アレルギーの原因になるものとして、ゴム手袋や塗り薬、クリームなどが挙げられます。特にゴム手袋には、加硫剤、加硫促進剤、劣化防止剤、接着増強剤などさまざまな物質が含まれおり、なかでもチウラム系などの加硫促進剤の一部はアレルギーの原因になりやすい物質とされています。
たんぱく質が原因で手湿疹を引き起こすこともあります。
たんぱく質が原因となる接触皮膚炎を“たんぱく質接触皮膚炎”といい、主にたんぱく質を含む食品に触れることによって発症します。そのほか、動物のフケや肉、ミルクなども原因となることもあります。
アトピー性皮膚炎にかかっている人は皮膚のバリア機能が低下しやすいため、手湿疹を引き起こしやすいと考えられています。また、花粉やカビなどのアレルゲンでアトピー性皮膚炎が悪化すると、それに伴って手湿疹も悪化することがあります。
手湿疹の原因の多くは原因となる物質に触れることです。そのため、手湿疹を防ぐための対策はまず原因物質に触れないようにすることです。水仕事や洗剤を使うときにはゴム手袋などをつける、洗剤を希釈する必要がある場合には希釈倍率や使い方を守りましょう。ただし、ゴム手袋が手湿疹の原因となる場合もあるので原因が分からない場合には皮膚科の受診を検討するとよいでしょう。
一口に手湿疹といっても原因や症状によってさまざまなタイプがありタイプによって治療も異なりますが、一般的にはステロイド外用薬を塗る治療が行われます。そのほか、アレルギーが原因の場合は抗ヒスタミン薬や抗生物質などの飲み薬を用いることもあります。
また、乾燥すると皮膚のバリア機能が低下し、アレルギー物質の過剰な侵入によりアレルギー性接触皮膚炎を起こしやすくなってしまいます。そこでバリア機能回復のため、スキンケアとして保湿薬を外用することも大切です。
手湿疹の適切な対策、治療のためには原因を突き止めることが大切です。特にアレルギー性接触皮膚炎による手湿疹が疑われる場合には、皮膚科でパッチテストを行い原因を検査したうえで治療を行います。原因に心当たりがない場合は皮膚科の受診を検討するとよいでしょう。
浜松医科大学 皮膚科学講座 准教授
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