がんポータルサイトはこちら
疾患啓発(スポンサード)

骨軟部腫瘍の検査と治療——治療法の違いとは

骨軟部腫瘍の検査と治療——治療法の違いとは
土屋 弘行 先生

横浜栄共済病院 院長

土屋 弘行 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

希少がんの一種である骨軟部腫瘍(こつなんぶしゅよう)は、悪性・良性を鑑別するために複数の検査を行い、総合的に診断する必要があります。骨腫瘍と軟部腫瘍は、それぞれの病気の性質によって治療法が異なるだけでなく、治療体制が整っている施設にも限りがあるため、検査や治療は骨軟部腫瘍を専門的に扱っている施設で治療を受けることが大切です。引き続き、金沢大学病院整形外科教授の土屋 弘行(つちや ひろゆき)先生に、骨軟部腫瘍の検査と治療についてご解説いただきました。

X線で骨軟部腫瘍を疑うような異常が認められた場合、精密検査を実施します。骨軟部腫瘍の検査で重要なのは、造影MRIおよびCT、骨シンチグラフィー、生検の4つです。

造影MRIは、病変の広がりや大きさを把握したりするほか、進行性病変であるかを確認するために通常2~4週間の期間を置いてから実施されます。この検査によって、骨や筋肉の内部に異常が起こっていないかを調べることができます。

造影MRIの結果、異常所見がみられない、または改善している場合は悪性腫瘍の可能性が低いと判断し、そのまま経過観察となることがあります。一方、腫瘍の存在が認められる、または腫瘍が拡大している場合は悪性である可能性が高いため、骨シンチグラフィー(骨の代謝〈吸収・造成〉を反映することで骨代謝異常を診断し、がんの骨転移などを発見する検査)で腫瘍が単発か多発か、局在や活発度を調べます。また、悪性腫瘍が疑われる場合には、胸部CTによる肺転移のチェックも必要です。

造影MRIや骨シンチグラフィーは骨軟部腫瘍の性質や位置を確認できますが、これらの検査結果から悪性・良性を正確に判断することはできません。確定診断のためには、生検(腫瘍の一部を採取して顕微鏡下で細胞を観察する検査)で実際に細胞を調べる必要があります。

生検の結果、悪性骨腫瘍や悪性軟部腫瘍、治療が必要な良性骨軟部腫瘍と診断された場合は、一人ひとりの患者さんに応じた治療方針を定めたうえで、治療を開始します。

※骨腫瘍において、臨床上で転移性骨腫瘍が確実な場合は骨生検を省略することがあります。

絶対的な治療はなく、現在の治療原則として術前化学療法、手術、術後化学療法が行われます。

  1. 術前化学療法(抗がん剤治療)を5回行う(回数は各施設で異なる)。3回終了した時点で画像検査を行い、効果がみられた場合は同じ種類の抗がん剤を続けて2回投与する。効果がない場合は抗がん剤の種類を変えて2回投与する。
  2. 手術(患肢温存手術が行われ、切断術はまれ)
  3. 切除した腫瘍の状態に応じて抗がん剤の種類を調整しながら術後化学療法(抗がん剤治療)を計6回行う。

化学療法が適応にならない腫瘍では、治療は手術による腫瘍切除が原則です。患肢温存手術が行われることが多く、場合によっては腫瘍のある腕や脚ごと切断することもあります。切除した部分を補うために、必要に応じて人工関節置換術や骨移植などを合わせて行います。転移がみられ全身状態が不良な場合や、患者さんが手術を希望されない場合は手術を行わないこともあります。

転移性骨腫瘍の場合は、一人ひとりの患者さんの予後をある程度予測したうえで治療方針を決定します。たとえば、末期状態で余命が短く、手術による負担が大きいと予測される場合は装具固定を、体力があり手術によって歩行できるようになると予測される場合は手術治療を行うなどの方針が検討されます。(詳細は次のページ

良性軟部腫瘍と悪性軟部腫瘍で治療法は異なります。病変が小さく、長期間にわたって同じ場所に同じ大きさで存在している良性腫瘍の場合、または針生検の結果脂肪腫血管腫などと確認できた場合はすぐに手術をする必要はありませんから、ひとまずは経過観察となります。しかし、良性軟部腫瘍の経過観察のなかで腫瘍が大きくなってきたり、痛みが強くなってきたりした場合は、悪性腫瘍も念頭に置きながら生検または生検を兼ねた腫瘍切除を行います。

一方、病変が5cm以上で体の深部に存在する、安静時の痛みが強いなど、悪性の疑いが高い軟部腫瘍に対しては、生検で組織診断を確定した後に、周辺組織ごと腫瘍を取り除く広範切除術が行われます。悪性度の高い悪性軟部腫瘍には、術前術後に化学療法や放射線療法を併用する場合もあります。治療終了後も、3~4か月単位での定期的なフォローアップが不可欠です。

軟部腫瘍の患者さんの場合、治療後の日常生活での注意点は特にありません。

一方、骨腫瘍で人工関節装着や再建術を受けた患者さんの場合は、登山やランニングなどの強度の高い運動の制限や日常生活動作のコントロールが必要になることがあります。

骨軟部腫瘍は希少がんの一種です。適切な治療体制が整っている施設が限られているため、骨軟部腫瘍の診療経験の豊富な施設で治療を受けることが大切になります。地域の医療機関で、骨軟部腫瘍の疑いが強い方を発見した場合は、骨軟部腫瘍の治療を専門的に行っている施設に患者さんをご紹介してください。

骨軟部腫瘍の診療や治療に関する相談は、日本整形外科学会の“骨・軟部腫瘍相談コーナー”に掲載されている施設で受け付けています。このページには、骨軟部腫瘍の診断や治療に専門的に携わる全国各地の医師の氏名・所属病院・診療日・電話番号・過去5年間の担当症例数が掲載されています。骨軟部腫瘍の疑いがある患者さんに関する医療相談や、患者さんの紹介先の検索をすることができるので、骨軟部腫瘍の診断や治療に関して不明な点や相談事項があれば積極的に利用してください。

  • 横浜栄共済病院 院長、金沢大学 整形外科 名誉教授

    日本整形外科学会 名誉会員日本四肢再建・創外固定学会 会員日本癌治療学会 功労会員日本運動器再建・イリザロフ法研究会 世話人国際患肢温存学会(ISOLS) 理事国際イリザロフ学会 会員国際整形外科災害外科学会 会員World Association against Infection in Orthopaedics and Trauma(WAITO) 副理事長

    土屋 弘行 先生

    「骨軟部腫瘍」を登録すると、新着の情報をお知らせします

    処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

    本ページにおける情報は、医師本人の申告に基づいて掲載しております。内容については弊社においても可能な限り配慮しておりますが、最新の情報については公開情報等をご確認いただき、またご自身でお問い合わせいただきますようお願いします。

    なお、弊社はいかなる場合にも、掲載された情報の誤り、不正確等にもとづく損害に対して責任を負わないものとします。

    実績のある医師をチェック

    骨軟部腫瘍

    Icon unfold more