がんポータルサイトはこちら
編集部記事

足に生じた神経鞘腫の症状や治療とは? ~基本は手術が行われるが、経過観察で様子を見ることも~

足に生じた神経鞘腫の症状や治療とは? ~基本は手術が行われるが、経過観察で様子を見ることも~
小橋 由紋子 先生

日本大学医学部附属板橋病院 放射線診療科 准教授

小橋 由紋子 先生

目次
項目をクリックすると該当箇所へジャンプします。

神経鞘腫(しんけいしょうしゅ)とは、末梢神経(まっしょうしんけい)を取り巻く“シュワン細胞”と呼ばれる部分から発生する腫瘍(しゅよう)のことです。臓器や骨組織を除く軟らかい組織から発生する“軟部腫瘍”の一種であり、30~60歳代の女性に多く見られるといわれています。神経鞘腫をはじめとした軟部腫瘍は、全身のさまざまな部位にでき、足にできることもあります。では、神経鞘腫が足にできた場合はどのような症状が現れるのでしょうか。また、どのような治療が必要になるのでしょうか。

神経鞘腫を含む“軟部腫瘍”とは脂肪、筋肉、血管、神経、関節、リンパ管などの軟らかい組織にできる腫瘍の総称です。このうち神経鞘腫は、末梢神経を取り囲む組織から発生します。神経鞘腫の好発部位は頭頸部(とうけいぶ)、上肢、下肢でありそのほかに舌、唾液腺、消化管などのさまざまな部位に発生することがあります。

神経鞘腫はほとんどが良性ですが、まれに悪性のものもあり悪性神経鞘腫として診断されます。悪性の神経鞘腫は、多くが太ももなどの下肢に発生するといわれています。また遺伝性疾患の1つである神経線維腫症I型(レックリングハウゼン病)の患者では、頻度は低いものの悪性神経鞘腫を合併して発症するという報告があります。

初期の神経鞘腫は、痛みのないしこりや腫れとして見つかります。足に生じた神経鞘腫の場合、しこりとして目につきやすいため、日常生活のふとしたタイミングで気がつくことも多いでしょう。

そのほか、腫瘍の大きさや痛みなどの自覚症状には以下の特徴があります。

多くは3cm以下ですが、5cmを超えることもあります。神経鞘腫に限らず、良性の軟部腫瘍は5cm以下である場合が多く、それ以上になると悪性腫瘍のリスクが高まると考えられています。また、悪性腫瘍は腫瘍の成長スピードが速いため、しこりが急激に大きくなる場合は悪性腫瘍を疑うことがあります。

神経鞘腫に特徴的な自覚症状として、叩打痛(こうだつう)や圧痛があります。それぞれ腫瘍を叩いたり、圧力をかけたりしたときに痛みが発生します。何もしなくても痛みが発生する“自発痛”は、腫瘍が大きくなるまではあまり発生しません。

神経鞘腫は、良性の場合と悪性の場合で治療方針が異なります。

外科手術による腫瘍の摘出を基本とします。良性腫瘍の場合、手術で取り切ることができれば再発の心配はありませんが、腫瘍が大きいと再発のリスクが高くなるともいわれています。しかし、良性の神経鞘腫は進行が遅く転移を起こすこともないので、機能に問題がない場合は経過観察のみで手術は行わないこともあります。

また、腫瘍の良性/悪性の判断がつきにくい場合、腫瘍の一部を切除して組織診断を行う生検を行うこともあります。腫瘍が小さい、重要な血管神経とは離れているなどの条件がそろっている場合は、切除生検と呼ばれる方法で腫瘍を全て摘出することもあります。

外科手術による腫瘍の摘出が必要となります。悪性腫瘍の場合、周りの組織に広がっている可能性があるため、腫瘍部位よりも広めに切除を行います。

悪性神経鞘腫が足にできた場合でも温存することが可能ですが、範囲が広い場合や腫瘍が発生する部位によっては足の切断が必要になることもあります。また、手術を補助する目的で抗がん剤を用いた化学療法や放射線療法が行われることがあります。これらは、手術前に行うことで腫瘍を小さくしたり手術後に行うことで再発を予防したりするために行われるほか、手術が難しい場合に症状を和らげるために行われることがあります。

神経鞘腫は聞き慣れない病気ですが、軟部腫瘍の中では比較的頻度が高い病気です。腫瘍とはいえ、そのほとんどが良性であるため、過度に心配する必要はありません。しかし、まれに悪性の場合もあるため、しこりや痛みなど気になる症状がある場合は医療機関を受診するようにしましょう。また、足にできるしこりは神経鞘腫のほかにも、さまざまな病気で見られることがあります。特に、神経鞘腫以外の悪性軟部腫瘍は足(特に膝関節(しつかんせつ)周囲)にできることが多いため、正しい診断を受けることが必要です。

受診について相談する
  • 日本大学医学部附属板橋病院 放射線診療科 准教授

    小橋 由紋子 先生

「メディカルノート受診相談サービス」とは、メディカルノートにご協力いただいている医師への受診をサポートするサービスです。
まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。
  • 受診予約の代行は含まれません。
  • 希望される医師の受診及び記事どおりの治療を保証するものではありません。

関連の医療相談が12件あります

※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。

「神経鞘腫」を登録すると、新着の情報をお知らせします

処理が完了できませんでした。時間を空けて再度お試しください

「受診について相談する」とは?

まずはメディカルノートよりお客様にご連絡します。
現時点での診断・治療状況についてヒアリングし、ご希望の医師/病院の受診が可能かご回答いたします。

  • お客様がご相談される疾患について、クリニック/診療所など他の医療機関をすでに受診されていることを前提とします。
  • 受診の際には原則、紹介状をご用意ください。