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編集部記事

神経鞘腫の手術で生じる後遺症は?〜入院期間や術後の生活とは〜

神経鞘腫の手術で生じる後遺症は?〜入院期間や術後の生活とは〜
河野 道宏 先生

東京医科大学病院  脳卒中センター長、東京医科大学 脳神経外科学分野 主任教授

河野 道宏 先生

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神経鞘腫とは脳や脊髄、手足などさまざまな部位の神経に生じる腫瘍のことをいいます。たとえば、脳神経外科や耳鼻咽喉科で扱われる脳の神経鞘腫はそのほとんどが聴神経腫瘍(前庭神経鞘腫)です。そのほかにも腫瘍が生じる部位によって異なり、三叉神経鞘腫、頚静脈孔神経鞘腫、顔面神経鞘腫などがあります。治療法には“経過観察”“放射線療法”“手術”の3つがあり、患者が若い場合や腫瘍が大きい場合、症状が強く日常生活に支障をきたしている場合などに手術が選択されます。なお、神経鞘腫は通常良性腫瘍であるため、手術によって完全に摘出できれば根治し再発の心配もありません。しかし、脳の神経鞘腫の場合には手術が極めて難しく、手術に伴って神経の機能障害が残ることがあります。

それでは、神経鞘腫の手術はどのように行われ、どのような後遺症が残る可能性があるのでしょうか。

手術の目的は腫瘍の摘出で、通常は全身麻酔を行います。腫瘍の部位や大きさ、患者の状態などによって手術のアプローチが異なりますが、脳の神経鞘腫では主に後頭部の外側や耳の上、耳の後ろあたりを開頭して腫瘍を摘出します。腫瘍を摘出する過程で神経に直接操作が加わるので顕微鏡下で微細な操作を行って摘出します。

全身麻酔した状態で手術を行うことから、手術中に痛みを感じることはありません。手術時間は人によって異なりますが、脳の神経鞘腫の場合は小さな腫瘍でも4〜8時間かかることが多く、大きな腫瘍では12時間以上かかることもあります。

どのような手術でもリスクを伴いますが、神経鞘腫では腫瘍を摘出する過程で直接操作が加わる神経が傷つくことがあります。たとえば脳神経のうち、顔の筋肉を動かす顔面神経が障害されると顔面麻痺、聞こえの神経である蝸牛(かぎゅう)神経が障害されると聴覚低下が起こります。そのほか神経の種類に応じて、味覚障害、ふらつきやめまい、声がかれる、嚥下障害(食べ物をうまく飲み込めない)、手足のしびれなどの症状が生じる場合があります。

また、手術の合併症としては、まれに髄液漏や髄膜炎が生じたり、麻酔・輸血・薬剤によるトラブルが起こったりする場合もあります。

術後、麻酔が切れると手術部位に痛みが出てきます。そのため、一般的には鎮痛剤で痛みの軽減を図りますが、この痛みは一過性のもので次第に軽くなっていきます。手術部位の痛み以外では、頭痛、めまい、吐き気など、手術操作が加わった神経に関わる一過性の症状が見られる場合もあります。

入院期間には個人差がありますが、2週間程度で退院となる場合が多いとされています。ただし、合併症が生じている場合などでは1か月以上になることもあります。また、早期に退院した場合でも経過を観察するために定期的な通院が必要です。

神経鞘腫は腫瘍が神経を圧迫することで症状が起こることが大部分ですが、腫瘍の摘出を行ったからといって術前に見られた症状が必ずしも軽減または消失するとは限りません。さらに後遺症によって退院後の生活に大きな変化が生じたり、社会復帰に時間がかかったりすることもあります。また、手術部位によっては切開したあとが残り、多少なりとも見た目に変化が生じます。

いずれにしても退院後の生活の変化については個人差が大きいものです。何らかの不自由や気になることがあれば、まずは病院で相談するのがよいでしょう。

神経鞘腫は手術で腫瘍を全摘出できれば根治が期待でき、予後も比較的良好です。しかし、脳の神経鞘腫の場合では手術自体が脳神経外科手術の最難関とされており、病院や医師によって手術適応や治療成績などが大きく異なることもあります。手術を受ける前に、専門病院を探して意見を聞き、医師と相談することを検討しましょう。

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