自治医科大学附属病院 卒後臨床研修センターでは、“心・技・体”の3つを軸として、それぞれをサポートする活動を行っています。今回は、“心”をサポートするメンター制度について、卒後臨床研修センター 副センター長、小児科 准教授の田村 大輔先生に詳しくお話を伺いました。
当院の卒後臨床研修センターでは“心(高いモチベーション)”“技(正しいスキル)”“体(快適な研修生活)”の3つの軸を持っており、それぞれをサポートする活動を行っています。
まず、“心”をサポートするのがメンター制度で、比較的年齢の近い指導医が研修医の研修全般をサポートする制度のことです。詳細については後ほど説明します。
続いて、“技”のサポートとして講義やシミュレーションセンターがあります。研修医はすでに大学で基礎知識を学んでいますが、講義では実際の臨床現場で役立つ具体的なコンテンツを指導医が伝えています。シミュレーションセンターは、技術習得のために内科的・外科的手技を練習する施設で24時間使用可能です。センターでの練習を積み重ねることにより自信につながり、理解もさらに深まっていくことでしょう。
最後に“体”については、体育館やジム、プールなどの施設を完備して、体力づくりができる環境を整えています。また、ほぼ全ての初期研修医が宿舎に住んでいるため自然に横のつながりも強くなり、オフの日にはドライブや食事会などを楽しんで体を整えている面もあります。
当院の研修医は他大学の出身者が多いという特徴があり、母校の初期研修センターに進んだ医師に比べるとスタート時点では不利な状況かもしれません。ただ、その不利な状況を覆すことができる研修内容やサポート体制を構築していると自負しています。
当院では2019年にメンター制度を本格的に導入しました。研修医(メンティーと呼びます)1人に対して、比較的年齢の近い指導医1人がメンターとなり、研修に関わることはもちろん、生活面の不安などのプライベートな部分にまで踏み込んで、心理的・精神的なサポートをしています。メンターは本来“導く者”“指導者”といった意味を持ちますが、当院のメンター制度は格式ばったものではなく、研修医に近い感覚で助言やサポートをする“身近な引率者”の役割を担っています。
2年間の初期研修では将来進みたい専門科に向けてプログラムを組み、研修先の診療科をローテ―ションしていきます。メンターは「この科は2年間のうちの後半で回ったほうがよいのでは」など、自分の経験を踏まえたアドバイスを研修医に行います。研修医はメンターの助言を参考にプログラムを再編成することが可能です。
ほか、研修医の進みたい専門科が研修の途中で変わってプログラムの変更が必要となったときには、まず研修医はメンターに相談し、メンターから卒後臨床研修センターに情報が上がってくることもあります。研修医1人で悩むのではなく、どのようにプログラムを編成していくべきかをタイムリーに相談できるメンターがいることは、大きなメリットであるといえるでしょう。また、今後研修医が1人の自立した医師として病院や社会の中で活躍するための社会性を身につけて欲しいという思いを持って、メンターからさまざまなアドバイスをすることもあり、研修医のことを考えた制度だと思います。
先ほどもお話したように、当院の研修医はほとんどが他大学出身です。当院を選んで来た研修医が研修環境や住環境の変化で路頭に迷わないように、なるべく2年間で実りのある研修をして欲しいという思いからメンター制度を導入しました。制度については病院からの理解も得られており、活動に必要な経済的支援も受けています。
メンターとなる指導医は、研修医時代にメンター制度で経験したことを生かして後進をサポートしたいという思いで立候補する先生もいますし、さまざまな診療科からの他薦で選ばれる先生もいます。メンターと研修医のマッチングは、アンケートをもとに出身地や趣味、部活など、なるべく共通項が多くなるように選定しています。
また、メンター同士の横のつながりも重視しており、月に1回集合して会議を行っています。会議では研修医から挙がった意見や疑問を共有し合い、卒後臨床研修センターに問題点を報告したり、各診療科に研修内容の変更を提案したりといったフィードバックを行います。これにより研修医目線での研修の是正や改変が可能となり、初期研修のシステムをより安全で効率的なものに作り上げることができるようになっています。
私は医師としてよいパフォーマンスを発揮するためには自分自身の心と体が万全であることが大切だと考えており、日頃から卒後臨床研修センターの軸にもなっている“心・技・体”を実践して患者さんと接するように心がけています。また、医師本位の医療ではなく、患者本位の考え方で判断することが大切だと思います。患者さんは自分自身が受けている医療のことをどう思っているのか、どういう感覚や感情でいるのかを常に重視して考え、患者さんの満足度が高い医療を提供できているかどうかを意識して診療にあたっています。
研修医の指導にあたっては、自分の研修医時代を思い出しながら“初期研修医はできなくて当然”“経験していなくて当然”ということを忘れずに、なるべく同じ視点で分かりやすく、そして知識が定着するような説明を心がけています。ほかにも効率的であること、研修医が納得できること、精神的な負担が少ないことも意識して指導しています。
今後は、今の臨床研修センターの内容をより充実させたいと思っており、“心・技・体”の3つの軸それぞれのコンテンツをさらに高めていけるように取り組んでまいります。
当院には36の診療科があり、さらに隣接するこども医療センターには11の診療科があります。将来医師となる皆さんが今後のために経験しておいたほうがよいことや、これから経験したいと希望することをかなえられる環境が整っているといえます。そして、盤石かつ堅実な研修内容と研修技術を持っており、研修中に感じる疑問や質問も確実に受け止めて説明できる体制となっています。
福利厚生の充実や働くうえでの私生活のサポートにも力を入れており、今後も積極的に行っていきたいと考えています。少しでも当院の初期研修プログラムに興味がある医学生さんがいらっしゃいましたら、ぜひお越しいただければと思います。
当院は初期研修終了後の後期研修にもそのまま進む医師が多く、初期研修内容に満足いただいている結果かと嬉しく思います。後期研修もより充実度を高めていくことを各診療科に期待していますし、卒後臨床研修センターとしても後期研修をサポートして研修内容、研修体制を今後さらに高めていきたいと考えています。
自治医科大学附属病院 卒後臨床研修センター 副センター長、自治医科大学小児科学講座 准教授
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