治療
がん性腹膜炎は、原因となるがんに対応しての治療薬の選択が検討されます。たとえば胃がんが原因とされる場合には、パクリタキセルなどの抗がん剤が検討されます。
がん性腹膜炎では、がん細胞が広くおなかの中に見られ、病状の根治を期待することは現在の医療では容易ではありません(2020年8月時点)。そのため、生じうる症状に対応して、対症療法的な治療介入を行うことが検討されます。無治療のままがん性腹膜炎を放置すると、呼吸障害や栄養障害など、さまざまな症状・病状がもたらされます。患者の抱える症状を緩和させるためにも、対症療法的な視点を取り入れることは、とても重要であるといえます。
がん性腹膜炎では、おなかの腹水を原因として症状が引き起こされることがあります。そのため、おなかに針を刺す腹水穿刺にて腹水を体外に排泄することで、症状の緩和を図ることもあります。うまくコントロールできない腹水の場合は、腹水濾過濃縮再静注法(CART)を行うこともあります。腹水中のがん細胞はもちろんのこと、血球、細菌などの細胞成分と余分な水分を除去して静脈内に返すことで、症状の緩和だけでなく全身ならびに腹腔内臓器の循環動態を改善します。それによって利尿剤の効果増強、食欲の改善、血中アルブミン、グロブリン濃度の上昇などが期待でき、生活の質(QOL)の改善とともに腹水も再貯留しにくくなります。また、利尿剤を使用することで、腹水の軽減を期待することもあります。
また、がん性腹膜炎ではうまく食事が取れないこともあります。その場合には、高カロリー輸液の使用、オクトレオチドの投与、消化管内へのチューブ留置による負担軽減などが適宜検討されます。
がんの中には、禁煙やワクチン接種など、予防的な観点を取り入れることができるものもあります。こうした対応をあらかじめすることで、がんの発生、ひいてはがん性腹膜炎の発症リスクを軽減することも重要です。
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