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エクソソーム

最終更新日:
2024年10月17日
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2024/10/17
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概要

エクソソームは、細胞から分泌される小さな袋状の構造体のことです。その大きさは100nm前後と非常に小さく、細胞外小胞*と呼ばれる一群に分類されます。

体内のほぼ全ての細胞がエクソソームを産生しており、その内部にはタンパク質、マイクロRNA(miRNA)やメッセンジャーRNA(mRNA)**、脂質などの多様な生体分子が封入されています。これらのエクソソームは血液や脳脊髄液(のうせきずいえき)、尿といった体液中にも存在し、全身を循環しています。

エクソソームのもっとも重要な機能は、細胞間の情報伝達です。細胞から放出されたエクソソームは、体内を循環してほかの細胞に取り込まれ、内包する生体分子を通じて情報を伝達します。この特性が、さまざまな病気の診断や新たな治療法の開発に応用できる可能性があるとして、医療分野で大きな注目を集めています。

今後、エクソソーム研究はさらに発展し、生命現象の理解や新たな治療法の開発につながることが期待されています。しかし、エクソソームはまだ未解明の部分も多く、継続的な研究と慎重な臨床応用の検討が必要です。

*細胞外小胞:細胞から放出されるさまざまな種類の小胞の総称。

**マイクロRNA(miRNA)やメッセンジャーRNA(mRNA):生命体の遺伝情報の伝達に関わる物質。

エクソソームのはたらき

エクソソームの主要な機能は、細胞間の情報伝達です。細胞から放出されたエクソソームは、体を循環してほかの細胞に取り込まれます。この際にエクソソーム内部に含まれるmiRNAやmRNAなどが、受け取り側の細胞に伝達されることで、遺伝子発現*や細胞機能に影響を与えます。この仕組みにより、エクソソームは体内のさまざまな生理的プロセスや病気に関与しています。

特に注目されているのが、エクソソームのがん進展への関与です。がん細胞から放出されるエクソソームは、がん細胞の生存、悪性化、転移などを促進するはたらきがあることが示唆されています。たとえば、がん細胞由来のエクソソームが、ほかの細胞へのがん細胞の転移を促進するという報告があります。

体にとってよい影響を及ぼすエクソソームも存在します。免疫系の調節、神経系での情報伝達、組織の修復など、さまざまな生理的プロセスに関与しています。これらは傷ついた細胞の修復、炎症抑制などの効果があると報告されており、1型糖尿病慢性中耳炎急性呼吸窮迫症候群ARDS)など従来の治療法では治療が困難だった病気への治療応用も期待されています。

*遺伝子発現:遺伝情報を基に細胞内でタンパク質が生成される過程のこと。

医療応用の可能性

エクソソームの医療応用には大きな期待が寄せられており、特にバイオマーカー*としての利用と新しい治療法の開発において注目を集めています。

バイオマーカーとしての利用では、エクソソームの特性を活かした革新的な診断方法が期待されています。エクソソームは特定のがんに関連する分子を含んでいるため、エクソソームを含む体液を回収して解析することでがんの早期診断や治療効果のモニタリング、予後予測に利用できる可能性があります。この方法は、従来の侵襲的(しんしゅうてき)な生検に比べて患者への負担が少なく、繰り返し検査を行うことができるという利点があります。

治療法の開発も急速に進んでおり、特に注目されているのがドラックデリバリーシステムとしての応用です。エクソソームの小さなサイズと生体適合性を利用して、薬剤を標的細胞に効率的に送達する方法が研究されています。この技術が実用化されれば、従来の治療法では届きにくかった部位への薬物送達が可能になり、治療効果の向上と副作用の軽減が期待できます。

また、再生医療の分野では、幹細胞由来のエクソソームを用いた組織修復や再生の促進が期待されています。

*バイオマーカー:体の状態や病気の進行を示す指標となる物質や測定値のこと。血液や組織から検出され、病気の診断や治療効果の評価などに利用される。

医療応用における課題

エクソソームの医療応用には、大きな可能性とともに重要な課題が存在します。特に安全性の確保と品質管理が主要な問題となっています。

現在、一部のクリニックでエクソソームを用いた治療が行われていますが、その効果や安全性は十分に実証されていません。現時点(2024年10月時点)において、世界的にも薬事承認を取得したエクソソーム製品は存在しません。一方で、エクソソームを用いた治療法の開発は今後大きく進展すると考えられ、世界中で研究開発が進められています。

これらの課題に対応するため、日本再生医療学会は2024年4月30日に「細胞外小胞等の臨床応用に関するガイダンス(第1版)」を作成し公開しました。このガイダンスに基づき、安心・安全で、効果の明確なエクソソーム治療を開発していくことが重要です。

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