おすらーびょう

オスラー病

概要

オスラー病とは、全身各種臓器に異常血管が生じる結果、異常血管からの出血をみる病気を指します。別名「遺伝性出血性末梢血管拡張症」と呼ばれ、難病指定を受けている遺伝性疾患です。オスラー病で認める出血は鼻血程度のこともありますが、肺や脳、肝臓などの臓器から出血する場合もあります。

オスラー病の症状は軽微なものから非常に重いものまで幅広いです。日本における発症頻度は5,000~8,000人に1人と推定されており、国内に10,000人ほどの患者さんがいるのではないかと報告されています。

原因

オスラー病の原因遺伝子として3つの代表的な遺伝子異常が知られており、具体的にはACVRL-1EndoglinSMAD4と呼ばれる遺伝子です。

オスラー病はいくつかのタイプに分類されますが、異常血管が生じやすい部位や発症様式は、これら遺伝子異常の出方の違いにより説明される部分もあります。これら遺伝子は、正常な血管を構築するのに重要な遺伝子であると考えられています。そのため、ACVRL-1EndoglinSMAD4といった遺伝子に異常が生じると、正常な血管構築がなされなくなり、異常血管が各種臓器に生じることになります。

正常な血管は、動脈、毛細血管、静脈の順につながっています。動脈には高い圧力がかかりますが、毛細血管を血液が流れる間に血圧は徐々に低下し、静脈の圧力は動脈に比べて非常に低くなります。

しかし、オスラー病では毛細血管の構築が不十分なこともあり、動脈の高い圧力がダイレクトに静脈に伝わるようになります。その結果、皮膚の静脈が拡張したり、肺や脳などに存在する静脈から出血をきたしたりするようになります。

オスラー病は、常染色体優性遺伝と呼ばれる遺伝形式を取ります。この遺伝形式は両親いずれかが病気を発症していると、そのお子さんも病気を発症する確率は理論上50%です。オスラー病の別名である遺伝性出血性末梢血管拡張症は、以上のような特徴を包括したものです。

症状

オスラー病でもっとも多い症状は鼻出血であり、80~90%ほどの患者さんで認めるといわれています。静脈に高い圧力がかかると血管が広がります(血管拡張)。血管拡張を皮膚や舌、口腔粘膜などに認めることもあります。

肺や脳・脊髄、消化管、肝臓などにも異常血管を認めることがあります。異常血管は容易に出血をきたすことがあり、各種臓器からの出血が生じます。出血量が多い場合には貧血が進行します。肺の出血では喀血(かっけつ)や呼吸不全、脳の出血ではけいれんや麻痺(まひ)などの症状が現れます。

オスラー病では毛細血管がうまく構築されておらず、静脈と動脈が直接つながる動静脈瘻(どうじょうみゃくろう)と呼ばれる血管の形態異常を伴います。動静脈瘻が存在すると心臓に対しての負担が大きくなり、心不全を生じることもあります(特に、肝臓に大きな動静脈瘻がある場合)。また、肺に動静脈瘻があると、体内に入り込んだ細菌が肺でろ過されることなく全身各種臓器に広がるリスクが高まります。 その結果、脳膿瘍といった非常に重い感染症を引き起こすこともあります。

検査

オスラー病では、全身各種臓器で形成されている異常血管を確認します。肺や肝臓であれば、CT検査や超音波検査を行います。

また、脳や脊髄に存在する異常血管を確認するためにはMRI検査が行われます。そのほか、消化管に形成された異常血管は内視鏡を用いて確認することになります。

これら異常血管の確認に加えて、鼻血を繰り返す、皮膚や口腔内に血管拡張をみる、家族に同様の病気をもつ人がいるなどの項目をもとにしながら最終的な診断を行います。

治療

オスラー病では、各種臓器に生じている異常血管に対しての治療が行われます。鼻出血に対しては、出血が生じるたびに圧迫止血や軟膏などが処方されることがあります。これらの治療で不十分な場合では、凝固療法やレーザー治療、粘膜置換法、鼻腔閉鎖術などが行われます。

内臓各臓器での異常血管に対して、肺の場合は大きさに応じて血管塞栓術(けっかんそくせんじゅつ)が第一に選択されます。肺の動静脈瘻では、脳膿瘍などの感染症を合併するリスクが伴います。そのため、歯科治療などの細菌が体内に入り込みやすい侵襲を受ける際には、予防的な抗生物質の内服がすすめられます。

脳の異常血管については外科的治療、血管内治療、放射線を組み合わせた治療方法が検討されます。脳の異常血管に伴いてんかんを発症することもあるため、抗てんかん薬が使用されることもあります。

消化管の異常血管に対しては、内視鏡的にレーザーなどを用いた治療が行われます。異常血管からの出血が強く貧血を生じるような場合、鉄剤や輸血も検討されます。

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