どらべしょうこうぐん

ドラベ症候群

同義語
Dravet症候群
最終更新日
2023年06月14日
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2023/06/14
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

概要

ドラベ症候群とはてんかんの1つで、全身もしくは半身にガクガクするけいれん(強直間代発作)が生じ、繰り返し起こる病気です。ほとんどの場合、1歳までに発症します。

この病気のけいれんは、発熱や入浴など体温の上昇時に生じやすく、また図形や模様、光の点滅を凝視することで誘発されることもあります。しかし、それらの誘因がない場合にもけいれんが起こることがあり、けいれん重積や群発が起こりやすいという特徴もあります。

また、1歳以降になるとミオクロニー発作、非定型欠神発作、体の一部の発作など、けいれん以外のてんかん発作が現れることがあります。さらに、ほとんどの例で精神運動発達遅滞や運動機能の障害を生じることも特徴の1つです。

国内では3,000人程度の患者数が推計されていますが、診断に至っていないケースもあると考えられ、実際にはもう少し患者数が多いことが想定されます。

原因

ドラベ症候群を発症する方の約8割にSCN1Aと呼ばれるナトリウムチャネル遺伝子の異常があることが分かっています。この遺伝子の機能が低下することで神経細胞に異常をきたし、難治性てんかんを発症したり、精神運動発達遅滞や運動機能の障害を引き起こしたりするといわれています。

残り約2割の原因については、まだ解明されていません(2022年12月時点)。

症状

ドラベ症候群では、複数のてんかん発作、運動失調や歩行障害などの運動機能の障害、精神運動発達遅滞やできたことができなくなる退行、多動や衝動性などの神経発達症の症状などが現れます。

てんかん発作

ドラベ症候群において最初に現れる症状は、てんかん発作の1つである全身もしくは半身に起こるけいれん(強直間代発作)です。発熱や入浴などにより体温が上昇した場合や予防接種によりけいれんが起こりやすく、繰り返し生じるようになります。

けいれんは体温の上昇だけでなく、図形や模様、光の点滅などを凝視することによって生じることもありますが、何のきっかけもなく生じることもあります。また、5分以上治まらないてんかん重積やけいれんを繰り返す群発を生じることも多くあり、その場合には救急用の抗けいれん薬の投与が必要になることもあります。

1~3歳頃からは、一瞬力が抜けてしまう脱力発作や、起きている時に四肢をピクッとさせるミオクロニー発作、数秒間にわたりぼんやりとする欠神発作などのてんかん発作がみられることがあるのも特徴の1つです。

運動機能の障害

ドラベ症候群では、歩行できるようになるまでに時間がかかったり、歩行できるようになっても不安定感があったりします。また、思春期以降には膝を曲げ内股で重心を低くして歩くしゃがみ歩行を示す例も多くあります。

ほかにも、手先があまり器用でないこともドラベ症候群の特徴の1つです。

精神運動発達遅滞

ドラベ症候群では多くの場合、1歳までは正常に発達しますが、1歳過ぎから発達の遅れが目立つようになり、さまざまな程度の知的障害を生じます。

一般的には、ドラベ症候群を発症していても、今までできていたことができなくなる“退行”が起こることはありません。しかし、けいれん重積などを機に急性脳症を発症することがあり、退行することはあります。

行動特性

ドラベ症候群では、集中力がなかったり、多動や衝動性などを認めたりすることがあります。これらの症状は神経発達症として生じるものや薬物療法の副作用として生じることもあり、区別が困難なケースもあります。

検査・診断

ドラベ症候群では、血液検査に異常はなく、1歳未満では脳波でも背景波の徐波化が見られることがありますがてんかん性発作波はなく、頭部MRIやCTにも異常はありません。脳波でてんかん性発作波が見られるのは1歳以降であり、頭部MRIやCTで大脳萎縮が見られるのはもっと後です。1歳未満でこれらに異常があれば別の病気の可能性があり、類似するほかの病気との鑑別が行われます。

したがって、1歳未満では体温の上昇に伴って起こればなおさらですが、そうでなくても全身や半身のけいれんを繰り返すにもかかわらず発達も脳波等の検査にも異常がないのがドラベ症候群の特徴であり、遺伝子検査を行います。遺伝子異常がない場合はドラベ症候群とは診断できず、1歳以降の経過観察とします。

1歳以降では、全身や半身のけいれんを繰り返し、さらにそれが体温の上昇や光の点滅、図形や模様の凝視などに誘発されて起こる場合や、欠神発作やミオクロニー発作などが起こる場合、けいれん重積や群発を起こしやすい場合はドラベ症候群が疑われ、遺伝子検査を行い、確定診断が行われます。

しかし、1歳以降では、遺伝子検査の結果が陰性の場合でも上記の発作症状の特徴があり、加えて知的障害および運動失調や歩行障害などの運動障害もあり、頭部MRIやCT、脳波検査でほかの病気が除外されない場合にはドラベ症候群と診断されることもあります。

治療

ドラベ症候群の治療では、薬物療法や食事療法が行われます。

薬物療法

ドラベ症候群におけるてんかん発作に対してはまず薬物療法が行われます。バルプロ酸、クロバザム、臭化物、トピラマート、スチリペントールなどの薬剤を組み合わせて使用します。最近は、フェンフルラミンという薬も出てきました。てんかん発作の症状によってはさらにほかの薬剤を併用することもありますが、副作用が現れる可能性を考慮し極力少ない薬剤での治療を試みます。

食事療法

薬物療法で難治な場合には、ケトン食療法や修正アトキンス食療法などの食事療法が用いられることがあります。ケトン食や修正アトキンス食は高脂肪かつ低糖質の食事ですが、ケトン食は食事制限が厳しく継続困難な場合があり、制限を緩めた修正アトキンス食では継続性が高まります。

予防

発症後のけいれんを予防するには、けいれんを誘発する状況をなるべく避けることが重要です。体温の上昇によってけいれんを起こしたことがある場合には、長時間の入浴を避けたり、シャワーで済ませたりするなどの対策を取りましょう。

また、図形や模様、光の点滅を凝視することでけいれんを起こしたことがある場合には、そのような状況で顔を背けたり、視野を遮ったりする、あるいはサングラスやつばのついた帽子でけいれんを予防できることがあります。

このほか、ドラベ症候群ではけいれんに加えて運動機能の障害や多動性などの特性があるため、転倒に注意する必要があります。日頃から転倒に注意し、頭部保護帽の着用なども検討するとよいでしょう。

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