概要
急性脳症とは、インフルエンザウイルスなどの病原体に感染した際、身体が病原体に対して反応を起こすことで、脳に急激なむくみが生じる病気です。日本国内では年間400~700人程度の方が発症すると推定されており、特に乳幼児に多くなっています。
急性脳症ではけいれんや意識障害を起こすことが多く、後遺症が残ってしまう可能性もあります。そのため、症状や検査結果などから的確に急性脳症を見極め、治療することが重要とされています。
原因
急性脳症の原因となる代表的な病原体は、以下4種類のウイルスです。
特に、インフルエンザウイルスとヒトヘルペスウイルス6型を原因とした急性脳症は頻度が高く、急性脳症の原因の半数弱を占めています。またウイルスだけでなく、百日咳菌やサルモネラ菌、腸管出血性大腸菌などが原因となることもあります。
このほかの原因としては、細胞のエネルギー産生に必要なミトコンドリアの代謝異常、長時間のけいれんによる神経細胞の傷害などが挙げられます。
症状
急性脳症の主な症状は意識障害です。発熱やけいれん、麻痺などを伴うこともありますが、これらの症状の現れ方や進行は原因などによって異なります。
症状の進行が急激なタイプ
急激に進行する急性脳症のタイプには、急性壊死性脳症と出血性ショックを伴う急性脳症があります。このタイプの急性脳症はまれですが、重い後遺症が残ることも多く、場合によっては死に至ることもあります。このタイプは、発熱から1~2日後にけいれんが始まり、治まることなく意識状態が悪化して反応が悪くなるという経過をたどります。
数日かけて症状が現れるタイプ
数日かけて意識障害やまひが出てくる急性脳症の多くは、けいれん重積型(二相性)というタイプです。最初は発熱とともにけいれんを起こし、その後けいれんが長時間続くことや、意識が回復しないまま複数回けいれんが起こることがあります。その後、一旦は意識が回復し熱も下がりますが、4~5日後に再びけいれんが起こることが特徴です。治療後も知的障害や運動障害、てんかんなどの後遺症が残るケースが多いです。
検査・診断
意識状態の確認など、神経学的所見の評価が重視されます。この評価により急性脳症が疑われる場合には、頭部画像検査(MRIやCTなど)、脳波検査、血液検査、尿検査、髄液検査などを行います。
- 頭部画像検査(MRIやCTなど):脳のむくみや出血などの状況を評価することができます。画像検査は、治療方針の決定し、予後を推定するためにも重要です。
- 脳波検査:脳の活動状況を調べます。
- 血液検査や尿検査:血小板、AST、ALT、CK、血糖、血中アンモニア濃度、血尿、タンパク尿などを調べます。
一部の急性脳症には代謝異常症が関係しているため、代謝異常を見定める検査を実施することもあります。
治療
全身状態を改善させるための集中治療が必要です。けいれんを起こしている場合は、抗けいれん薬を使用して対応します。また、急性脳症による頭蓋内圧の過度な上昇に対し、薬剤治療が行われます。ほかにも血圧や血糖、電解質などの異常が認められる場合は、適宜サポートが行われます。
原因に応じた治療を選択
急性脳症はさまざまな病態を原因として発症しています。全身性の炎症反応に関連した急性脳症の場合や、エネルギー代謝の異常が関連した急性脳症など、原因となっている病態に応じた治療が選択されます。
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