概要
モワット・ウイルソン症候群とは、ZEB2と呼ばれる転写遺伝子の異常によって引き起こされる先天異常症候群であり、特徴的顔貌、重度から中等度の知的障害と小頭症が3主徴です。
モワット・ウイルソン症候群は、日本においては難病指定に指定されている病気のひとつに挙げることができます。これによると、全国で1,000人ほどの患者さんがいらっしゃることが報告されています。
モワット・ウイルソン症候群は、これまでに根治的な治療方法の確立には至っていません(2019年時点)。そのため、生じる症状を患者さんごとに評価し、それぞれに合わせた治療方法を決定することが求められます。具体的には療育や内服薬、手術などが組み合わされます。長期にわたってのフォローアップが必要不可欠な病気であるため、専門の医療機関にいて継続的な診療を受けることが重要です。
原因
モワット・ウイルソン症候群は、転写因子であるZEB2(別名、ZFHX1B、SIP1)遺伝子の片側のアリルの機能喪失型変異で発症すると考えられています。ZEB2は人の臓器発生過程で重要な役割を果たす事が考えられていますが、その詳細はいまだ解明されていません。
遺伝子異常を基盤として発症するモワット・ウイルソン症候群ですが、突然変異的に遺伝子異常が生じることで病気の発症に至ると考えられています。そのため、お子さんが病気であった場合であっても、次のお子さんに同じような病気の発症をみることが基本的にはまれであると考えられます。
症状
モワット・ウイルソン症候群では、さまざまな症状がみられる可能性のある病気です。たとえば、以下のような外観上の特徴を伴います。
- 頭が小さい
- 目が離れている
- 顎が突出している
- 耳が分厚い
など
また、顔貌の特徴や、年齢を重ねるにつれてよりはっきりすることがあります。
また、モワット・ウイルソン症候群では知的発達面の遅れをみることも知られています。たとえば、言語習得がうまくいかず、話をすることができないこともあります。そのほかにも、立つ、歩くなどの運動面の遅れをみることがあります。
さらに、モワット・ウイルソン症候群では、肉体面の異常を伴うことも知られています。頻度の高い病気として、ヒルシュスプルング病を例に挙げることができます。この病気では、以下の症状がみられることもあります。
- 便秘
- 吐き気
- 嘔吐
- 食欲摂取量の低下
- 体重増加不良
- 発熱
- 全身状態の悪化
など
検査・診断
モワット・ウイルソン症候群は、特徴的な顔貌や耳の形の異常など、外観上の特徴を基にして疑われます。年齢を重ねるにつれて、知的成長発達面の遅れが生じることも、モワット・ウイルソン症候群を疑う病態です。成長を経時的に評価したり、知能検査が行われたりすることもあります。病気をより確定的にするために、遺伝子検査が行われることもあります。
また、モワット・ウイルソン症候群では、さまざまな身体的な異常を伴うことも知られています。この状況を評価するために、胸部単純レントゲン写真、腹部単純レントゲン写真、超音波検査、心電図検査、脳波検査、CT検査、MRI検査などの検査が検討されます。経過中に感染症を伴うこともあるため、これを評価するための血液検査が行われることもあります。
治療
モワット・ウイルソン症候群は、現在のところ根治的な治療法の確立には至っていません(2019年時点)。症状の項目で記載したように、モワット・ウイルソン症候群では全身各所に症状が生じることがあるため、病状に合わせた治療介入が適宜検討されます。
具体的には、成長発達を促すために、理学療法や作業療法、言語療法などが検討されます。また、ヒルシュスプルング病の発症がある際には、浣腸、摘便、手術療法などの治療方法が検討されます。尿道下裂の合併みられる際にも、手術的な治療介入が検討されます。
モワット・ウイルソン症候群の病状は患者さんによって大きく異なり、かつ年齢に応じて必要とされる介入が変化する側面もあります。利用できる公的サポートを最大限活用しながら、患者さんならびにご家族、周囲の大人を含めて対応策を講じることが大切です。
医師の方へ
モワット・ウィルソン症候群の詳細や論文等の医師向け情報を、Medical Note Expertにて調べることができます。
「モワット・ウィルソン症候群」を登録すると、新着の情報をお知らせします
関連の医療相談が10件あります
睡眠時無呼吸症の治療法について
睡眠時無呼吸症でCPAPをつけ治療中です。毎日装着し、良好な状態を保っています。しかし手術などの有効な方法があれば、検討したいと思っています。CPAP(対処療法)以外の良い結果が見られる治療法等は無いのでしょうか。薬などは服用していません。
溶血性尿毒症症候群について今後どうなっていくのでしょうか。
2歳の息子がO-157の溶血性尿毒症症候群になりました。 教えてください。 先週金曜日に腸重積が見つかり、処置をし入院。 その後土日に腎臓の数値が悪く 透析を開始しました。 腹水が溜まり呼吸が1分間に90回となり本日人工呼吸器を取り付けました。 血液検査の結果を見ると少し良くなっている、横ばいのような状態ですが 腸の炎症が酷いようです。 輸血も行い、透析も行い、人工呼吸器までつけて親としては気が気でなりません。 敗血症の可能性もあるようです。 経過はこれからどうなって行くのか教えて下さい。 気がおかしくなってしまいそうです。 お忙しい中申し訳ありません。 よろしくお願い致します。
睡眠時無呼吸症候群
CPAP以外の治療方法は無いものなのですか
肺の炎症のため加療中
2019.10に心臓大動脈弁、僧帽弁の置換手術後 溶血となり12に再手術し弁置換しました。のち徐脈頻脈症候群と診断され1.23にアブレーションをおこなう。直ぐに肺炎となり1.31にARDSといわれ現在人工呼吸器、人工心肺、透析加療中です。このままで本人の回復を待つと言われたが、他に治療法はないですか。死なせたくないです。よろしくお願いします。
※医療相談は、月額432円(消費税込)で提供しております。有料会員登録で月に何度でも相談可能です。