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尿道下裂

泌尿器

目次

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概要

尿道下裂とは、生まれつき尿道口が正常な状態と比較して陰茎の下面(陰茎の腹側という)に開いている状態のことです。どの程度尿道口がずれているかは人によって異なり、亀頭、陰茎、陰嚢を含めてどの部分にでも生じえます。重症例では、尿道口が会陰(陰嚢と肛門の間)に形成されているものもあります。

尿道下裂では包皮の分布異常が同時に現れることが多いです。包皮と陰茎のバランスが悪く、陰茎背側(上側)の包皮が余剰となり腹側の包皮が足りなくなっているため、成人のように亀頭が露出している状態になります。

日本国内における尿道下裂発生率の正確なデータはありませんが、海外の報告では1,000人あたり4人程度とされています。近年の環境ホルモンの影響により、今後増加する可能性があるともいわれています。

尿道下裂に伴う問題は排尿のみでなく、性交渉ができなくなることなどもあります。尿道下裂自体は手術で治療しますが、精神的な影響も考慮しつつ、適切なタイミングで治療ができるよう、長期計画を立てることが重要とされています。

原因

胎児の性別が男性の場合、男性ホルモンが性器にはたらきかけることで、陰茎が伸びつつ尿道が一本の管になるように形成されていきます。妊娠16〜18週頃までには、尿道の形成とともに陰茎の腹側の皮膚が尿道の開口部を除いた陰茎から会陰部まで閉鎖します。尿道下裂は、この過程に異常があることで生じると考えられています。

尿道下裂の患者さんでは、性ホルモンの代謝に関係する遺伝子に異常がある場合があることも報告されています。また男性ホルモンの影響が少なかったこともしくは妊娠期間中のピル服用や食事などを介して女性ホルモンに過度にさらされることが、尿道下裂の発生に関与しているとも考えられています。ほかにも、有機溶媒や化学物質、殺虫剤などの環境ホルモンの影響も報告されています。

症状

尿道下裂の主な症状は、立居排尿の障害と陰茎の弯曲です。立居排尿の障害とは、陰茎の腹側に尿道が開いているため、おしっこをする際に前方に飛ばせない(いわゆる、立ちしょんべんができない)状態です。

陰茎の弯曲とは、尿道下裂では陰茎周囲の皮膚の付着異常のほか、陰茎腹側に尿道索といわれる瘢痕化した硬い不全形成尿道があることが多いため、陰茎が下向き(陰茎の腹側のほう)に曲がった状態になることを指します。尿道下裂によって陰茎の弯曲を起こすと、勃起時に陰茎がまっすぐにならず、性交時に膣内に陰茎を挿入することができなくなります。なお陰茎の弯曲度(重症度)は、尿道の開く部位によって変わってきます。

また、高頻度に合併する停留精巣とは、本来陰嚢の中におさまるべき精巣がおさまっておらず、お腹の中や鼠径部などに存在する状態です。停留精巣を放置すると、精巣腫瘍や男性不妊などを生じることもあります。

検査・診断

尿道下裂は、その外観から通常出生後間もなくして指摘されます。尿道下裂では、尿道の開口部位や陰茎の曲がり具合、亀頭の形成具合や停留精巣の合併の有無などを診察し診断します。

なお重度の尿道下裂に停留精巣が合併する場合、性が分かれる過程での異常(性分化異常)も考えられるため、同時に調べます。見た目の性器は男性であっても、体内に子宮など女性器を有することもあるため、具体的には、腹部エコー検査、尿道造影やMRI検査などの画像検査が行われることがあります。

また、男性は染色体上「XY」という組み合わせの性染色体を持つのですが、この組み合わせに異常があることもあります。そのため、G-バンドと呼ばれる特殊な染色体検査、副腎皮質ホルモンなどの検査が検討・実施されることもあります。そのほか、心臓奇形や鎖肛のようなほかの臓器奇形を合併していることもあるため胸腹部のエコー検査を実施することもあります。

治療

尿道下裂では、尿道の開口部をもとに戻すことに加えて、曲がった陰茎を真っすぐにすることを目的とした手術が行われます。施設や国によって考え方はさまざまですが、一般的には生後半年から3歳までの間に手術します。なお尿道下裂の手術では、陰茎の大きさが大きいほうが手術の成功率が高くなることから、陰茎の成長が期待できる1歳まで待つ場合や男性ホルモンを投与し陰茎を増大させる場合もあります。

しかし、ある程度の年齢になって自我が芽生えるようになると、自分自身の性器の形が友達と異なることを気にしたり、他人から指摘されてコンプレックスを抱えたりすることもあります。そのため、遅くとも3歳までには手術する施設が多いです。

尿道下裂に対しては、原則余分な包皮を利用して尿道を形成する手術を行いますが、数多くの手術方法が存在し、どの方法がベストか決まった意見はありません。これは、いずれの術式にしても形成した尿道に小さな穴があいたりする術後合併症がありえる比較的難しい手術であり、日本では小児病院や限られた大学病院でしか実施しておらず、各施設とも最も習熟した方法でなされているのが現状だからです。

また、尿道下裂の手術では、術後のケアが長期的に渡ることにも留意する必要があります。たとえば、術後合併症として尿道狭窄などがあり、ひとたび発症すると一生負担がかかることになります。

また、陰茎自体が変形していると排尿状態や膀胱の機能などに影響が出ることもあります。尿道下裂の患者さんが成長すると、自分の陰茎が短い、形が普通と違う、性交渉に支障があるなどの悩みとして抱えることもありえます。そのため尿道下裂の治療では、排尿についての機能面のみならず、こうした点についてもフォローをすることが求められます。