インタビュー

尿道下裂の手術治療は何歳で行う? 入院期間は?

尿道下裂の手術治療は何歳で行う? 入院期間は?
佐藤 裕之 先生

東京都立小児総合医療センター 泌尿器科 部長

佐藤 裕之 先生

この記事の最終更新は2016年04月14日です。

尿道下裂は手術によってその形や機能を治療することができます。しかし、手術後の合併症率が高いことが問題視されており、これを改善するために様々な工夫が施されているともいわれます。尿道下裂の手術治療はどのように行われているのか、東京都立小児総合医療センター 泌尿器科医長の佐藤裕之先生にお話しいただきました。

しかし、東京都立小児総合医療センターでは1歳以降のお子さんを対象としています。これは麻酔のリスクももちろんですが、おちんちん(陰茎)のサイズの成長という点を考慮したためです。記事2『尿道下裂の治療は長期にわたって行われる』で述べた通り、1歳まではおちんちん(陰茎)が比較的成長することを考慮したうえで、適切な手術時期を決定します。

周囲の友だちから指摘されたり、自分自身で形が異なることに悩みを抱えてしまったりなどといったトラウマを残さないためにも、3歳(できれば2歳半)より前に手術するほうが良いと考えられていますが、必ずしも6カ月時に行う必要はありません。

また、手術時期の上限が海外で1歳半までとされているのは、おむつ外しが完了するまでに手術も完了していたほうがよいということを考慮しています。早い子どもでは、2歳半ごろにおむつが外れるため、東京都立小児総合医療センターでは排尿にトラブルが無いことを確認する期間を含めて、この時期を設定します。手術を受けた尿道下裂の子どもは、その後の排尿トラブルが無いと診断したところで、無事におむつ外しを迎えることができます。

また、おちんちん(陰茎)の大きさも手術ができるかどうかを決めるための指標となります。

おちんちん(陰茎)が大きければ大きいほど手術のリスクは減り、尿道狭窄症が起こりづらくなることは確かです。東京都立小児総合医療センターでは、亀頭の大きさが14~15mm以上あることを目標に手術に臨んでいます。

このため、術前におちんちん(陰茎)があまりに小さい場合は一時的なホルモン治療という方法を合わせて行います。これをずっと打ち続けると骨の成長の問題などが出ますが、短期的に行うことでは将来的な問題が出現しないことは確認されています。

東京都立小児総合医療センターの場合、男性ホルモンは月1回の注射を2~3回の形で投与します。軟膏基材に男性ホルモンを混ぜて直接陰茎に塗る方法もあるのですが、この方法では過剰投与によるおちんちん(陰茎)の色が変わることもしばしば起こるので、東京都立小児総合医療センターでは行っていません。

海外や日本の他の病院では入院期間がもっと短い病院も多いのですが、入院期間が短い施設は、尿道にカテーテルを入れたままで退院していただいており、その後、外来でカテーテルを抜くので短くなるのです。

東京都立小児総合医療センターは術後、カテーテルを抜いてしっかり排尿チェックをして、すべての基準をクリアしてから退院していただくため、入院期間が長くなっています。

尿道下裂に対する手術は非常に繊細な手技を必要とし、現在多くの術式があります。尿道下裂の手術は難しいともいわれますが、これは少々特殊な面から考えられていて、手術そのものが難しいというよりは、術後の合併症率が高いために「難しい手術」といわれているのだと考えられます。

術式が多いというとそれだけ研究が進んでいるようにも感じられるのですが、実際のところ、術式が多いことは尿道下裂手術の成績が芳しくないことを現しています。良い手術があるのならばその方法に淘汰されていきます。良くない結果が多いからこそ様々な術式が登場するのです。

尿道下裂の手術においては、医療機関やその手術を執刀する医師がそれぞれ工夫を行い、個々の病院で改良をしているといえます。公にはこういった各々の工夫の部分は公表されていません。しかし公表されていなくても、医師は合併症を防ぐために工夫したうえで手術を行っており、だからこそ難しいと表現できるのだと思っています。

尿道下裂手術の合併症は生命予後に影響するものではありませんが、その後のQOL(生活の質)を大きく低下させる要因になりえます。尿道下裂手術の二大合併症としては「作成した尿道の一部に穴が開いて尿が漏れる」、「尿道が狭くなる」という2つが挙げられます。とくに後者の尿道が狭くなる状態を尿道狭窄症といい、長期治療と管理が必要になってきます。

尿道下裂の手術後の合併症は非常に発症率が高く、長期的にみると手術を受けた方のうち20~30%は合併症を伴っているではないかといわれています。これは日本の数字ですが、海外では長期的には合併症率が約60%という報告もあるほどです。このように手術自体が成功したにもかかわらず、長期的に高確率で合併症が起こってしまうのが現状であり、尿道下裂治療における大きな問題といえます。

尿道下裂手術は非常に繊細な手術であるため、慣れていない医師がこの手術を行ってはいけません。もしも不慣れな医師が手術をした場合、合併症率はさらに高まると予測できます。

一度手術がうまくいかなかった場合、おちんちん(陰茎)自体が変形してしまい、排尿状態や膀胱機能に影響が出る恐れがあります。

合併症率が高いことは先ほどご説明しましたが、前述した尿道狭窄を起こしてしまうと、その方の一生に負担がかかってしまいます。最悪の場合、尿道の作り直しという事態に発生しかねません。こうなってくると再手術が必要で、時間も肉体的負担も精神的負担もかかります。ですから合併症、特に尿道狭窄は絶対に起こさないように心がけています。

同時に、いかに見栄えをよくするかも目標の一つです。

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