インタビュー

尿道下裂の術後のフォローについて

尿道下裂の術後のフォローについて
佐藤 裕之 先生

東京都立小児総合医療センター 泌尿器科 部長

佐藤 裕之 先生

この記事の最終更新は2016年04月14日です。

尿道下裂は非常にデリケートな疾患であり、治療にあたって本当に大事なことは手術そのものではなく術後のケアやフォロー体制を築き、相談に乗ってあげられる状況を作ることにあります。東京都立小児総合医療センター 泌尿器科医長の佐藤裕之先生にお話しいただきました。

尿道下裂自体は手術をすれば治る疾患といえます。ただし、尿道下裂の方はおちんちん(陰茎)そのものの長さが短い傾向にあるというデータがでているため、手術でおちんちん(陰茎)をまっすぐに治したとしても性交渉(セックス)がきちんとできるか、それに対してショックを受けないかという点も診ていく必要があります。尿道下裂だけ、つまり尿道口が通常の位置ではないという点のみでいえば、遺伝子など他の染色体異常がみられないようならば、普通の男性として生殖活動を行うことができます。

まずはきちんとおむつ外しができているかを確認して、その後は定期的に排尿パターンを見ていきます。たとえば立っておしっこはできるか、おしっこの勢い(尿の出が細くないかなど)は正常かなどです。その他おちんちん(陰茎)の大きさも合わせて確認し、細かい点でも見落としのないように注意します。

同時に内分泌的な機能が関係する性分化疾患(詳細は『性分化疾患に対する東京都立小児総合医療センター医療チームの取り組み』を参照)ではないか、精巣の機能は正常であるか(停留精巣を合併していないか)などを合わせて、長期的にサポートしていきます。

手術後1年経つまでは定期的に外来に来てもらって、その後は3カ月、6カ月、など節目ごとに状態を確認させていただきます。

ただし思春期は二次性徴が著しいためおちんちん(陰茎)の変化も大きく、状態を明確に把握するためにも必ず外来に来ていただきます。その後、17歳以降であり本人が自分の陰部に納得できていれば、そこで外来も卒業とするか、地域病院に紹介する措置を取ります。ここに関しては移行医療という問題も絡んでくるでしょう(移行医療の詳細は『移行医療とは? 小児科と成人の診療科を橋渡しするための医療の仕組み』を参照)。

実は、かつてはここまで綿密なサポートはできていなかったのですが、東京都立小児総合医療センターには成人病院である東京都立多摩総合医療センターも隣接しています。そのため我々が東京都立多摩総合医療センターで外来を行い、成人以降も受診可能な体制を構築することができました。

思春期はただでさえ精神的に変化を伴う時期です。さらに尿道下裂という状態を抱えて一人で悩み、家族にも相談できず隠してしまっているということが無いようにしなければなりません。

たとえば尿道下裂の患者さんの悩みは、おちんちん(陰茎)の長さや性交渉(セックス)のときの問題が代表的で、そういった悩みがあれば我々もはっきりと答えます。この点に関しては、医師側から確認をすることもありますが、ご本人自ら話してくれることも少なくありません。

上記に限らず、泌尿器的な問題をこちら側から聞いていくことは多くあります。聞かないと答えてくれない子どももいますが、自らが話を持ち掛けてくれることも多く、基本的にそこまで回答に拒否的な男の子はそう多くありません。自分の体のことであり、なおかつ男の子にとってとても重要な部分の疾患ですから、少なからず気にしている子ども・関心を持っている子どものほうが多いのです。それに対して答えてあげたほうがすっきりするでしょう。

本人が困っている点に関してもきちんと相談ができるようにすることを含めて診ていくことが重要であり、私たちの診察の姿勢でもあります。

このように一見カウンセリングのような役割も持っているのが尿道下裂治療の特徴で、手術したらそれで終わりではない疾患です。患者さんやそのご家族が、少しでも聞きたい点があるならばひとつひとつの疑問に答えながら治療を進めていきます。

ここまで幅広く患者さんを診ている施設は少数派ですが、私は手術だけして終わりではないと考えています。

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