尿道下裂は手術によって治療できる疾患ですが、治療において本当に大切なことは見た目を本人が満足するように整えてあげること、そして手術そのものよりもその後の長期的な管理をしっかりと行うことだといわれています。尿道下裂の治療で重要視されているポイントについて、東京都立小児総合医療センター 泌尿器科医長の佐藤裕之先生にお話しいただきました。
おちんちん(陰茎)が下側、つまりお尻のほうに向かって曲がっていると、大きくなってから立って尿をすること(立位排尿)はどうしても困難となります。さらに勃起してもまっすぐに上方向を向かないため、性交渉(セックス)も難しい場合があります。
(関連記事:記事1『尿道下裂とは? 尿道が本来あるべき部分にない先天疾患』)
そのため尿道下裂の手術治療は、尿道口を正しい位置に戻すというよりは、弯曲しているおちんちん(陰茎)の形を治すこと、つまり見た目を修復することを念頭において行います。
尿道を正しい位置に戻すことも大事ですが、現実的な観点としては必ずしも尿道口が亀頭にあることにこだわる必要はありません。亀頭直下に外尿道口があり尿道形成を希望されなかった方や、以前尿道下裂の治療を受けられて亀頭部に尿道口がない方が成人になり、特に支障を訴えない方もいらっしゃいます。
尿道下裂は排尿機能そのものには影響しない病気です。それよりはおちんちん(陰茎)がまっすぐになっていて、性交渉(セックス)に支障がいないかが問題になってきます。
おちんちん(陰茎)は0~1歳にかけていったん成長してからしばらくは大きくならない臓器で、1~10歳まではあまり変化しません。この期間は年に数ミリ伸びるか伸びないかといったところです。見た目上は、1歳と10歳ではおちんちん(陰茎)の長さは1.5㎝程度しか変わりません。
ただし、二次性徴が始まってから、再びおちんちん(陰茎)は成長し始めます。そのため思春期になって再びおちんちん(陰茎)が成長していくまで、最終的な見栄えもどうなるかが予測できないのです。
こうしておちんちん(陰茎)の長さや大きさがどうなるかわからないぶん、長期にわたって医師がきちんと患者さんの成長を見てあげることが何よりも大切であり、長期的なフォローは手術そのもののよりも重視されるべきことであると考えています。
また、尿道下裂の治療には手術が適応されますが(詳細は記事3『尿道下裂の手術治療と問題点』)、術後のフォローとしての外来では、きちんとおしっこが出るか、おちんちん(陰茎)が曲がってきていないかなどをチェックしていきます。陰茎屈曲に関しては、15°程度の曲がりかたであれば正常範囲と考え、30°を超えた場合に治療適応としている小児泌尿器科が多いことが報告されています。
このように、軽度に曲がっていても困らないとおっしゃる方もいるため、その際はご本人の意見を優先的に考え、治療をするかどうかを考えます。
つまり機能の正常化にこだわりすぎるよりは、後々の術後、見栄えに対するケアのほうが大事になってくるのです。たとえば「おちんちん(陰茎)が短い」ということに対してどうしていくかなど、そういったところが本当に重要な治療となります。
東京都立小児総合医療センター 泌尿器科 部長
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