概要
小頭症とは、新生児の頭の大きさが、同じ年齢・性別のほかの赤ちゃんと比較して著しく小さい状態のことです。遺伝子や脳の異常、感染症などによって生じ、お母さんのお腹の中にいる時に超音波検査で発見される場合もあれば、生まれてから頭の大きさを測定することで診断される場合もあります。
通常、頭の大きさは脳の大きさによって決まることから、小頭症の方は脳や脳の一部の発育度合いが低いという特徴があります。重度の場合はてんかん、脳性麻痺、知的能力障害、難聴、視覚障害などがみられることがあります。
小頭症はまれで、小頭症の赤ちゃんは数千人に1人といわれています。現在のところ、小頭症に対する特別な治療法はなく、発達を促すケアや症状に対する対症療法が行われるのが一般的です。
原因
小頭症の原因は不明な場合がほとんどですが、以下のような病態によって引き起こされる可能性があると考えられています。
- 出生前の感染症(主にサイトメガロウイルス感染症や風疹<ふうしん>。そのほか、ヘルペス・トキソプラズマ・HIV・梅毒など)
- 出生前の有害な物質へのばく露(アルコール・受動喫煙を含む喫煙)
- 染色体や遺伝子の異常による脳の形成異常
- 遺伝性の代謝疾患・代謝異常
- 胎児期における脳内の出血や梗塞などの血管障害
- 胎児期における重度の低栄養
- 出生前・分娩時の酸素不足
- 出生後の脳の外傷や、脳炎・髄膜炎などの感染症による脳障害
など
小頭症を引き起こす可能性のある感染症としては、尿や唾液を介して感染するサイトメガロウイルス、ヒトからヒトへの飛沫感染によって発症する風疹、感染したネコの糞が口に入ったり、加熱不十分な肉を食べたりすることで発症するトキソプラズマなどがあります。妊娠中の方がこれらの病原体に感染すると、お腹の中の赤ちゃんの脳に影響を及ぼすことがあるため、妊娠中の感染症には注意が必要です。
また、脳の形成異常として、滑脳症などの大脳皮質の形成がうまくできない場合や、脳全体の成長が不十分な場合などがあります。原因となる遺伝子異常もいくつか同定されています。
症状
一部の小頭症の赤ちゃんは何の症状も現れないまま成長しますが、多くは、てんかん、脳性麻痺、難聴、視覚障害、知的能力障害などがみられるようになります。出生時に症状が現れていなくても、成長とともに症状が出てくる可能性があります。
ただし、脳の損傷や発育不良の程度によって現れる症状は異なります。
検査・診断
小頭症は、出生前あるいは出生後の検査で調べることができます。出生前では妊娠後期の28週頃に行われる超音波検査で診断されることがあります。また、出生後最初の24時間の間に赤ちゃんの頭の大きさを測定することで診断されることもあります。時に、出生時の頭の大きさが正常範囲だったものの、成長とともに大きくならない場合、その時点で診断されることもあります。
また、脳に異常がないかを確認するために頭部MRI検査が行われることが一般的で、石灰化*や出血の確認をするために頭部CTも行われることがあります。そのほか、小頭症の原因を調べるために診察や血液検査、候補と考えられる遺伝子解析、あるいは遺伝子全体を検査するエクソーム解析なども行われます。
*石灰化:脳内などにカルシウムが沈着する現象。
治療
現在のところ、小頭症に対する根治的な治療法はありません。そのため、症状を改善するための対症療法が治療の中心となります。ただし、症状は人それぞれで、同じ症状であっても程度が異なるため、個々の患者に合った治療を進めていくことが重要です。
具体的な治療法として、発達の遅れに対して刺激や遊びを組み込んだプログラムを早期に実施して発達を促すことがあります。また、小頭症の赤ちゃんを持つご家族に対して、必要に応じてカウンセリングなどが行われることもあります。
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