ちてきのうりょくしょうがい

知的能力障害

同義語
知的発達症,Intellectual Disability
俗称/その他
知的障害
最終更新日:
2022年01月12日
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2022/01/12
更新しました
2017/04/25
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概要

知的能力障害/知的発達症(知的障害)は、神経発達症(発達障害)の1つです。18歳未満に出現し、平均以下の知的機能(日常生活を送るうえで必要な能力)、概念的(読み書き、金銭、時間、数の概念など)、社会的(コミュニケーションスキルなど)および実用的な領域における適応行動の不全によって特徴付けられます。

知的能力障害は知的指数の程度によって、最重度、重度、中等度、軽度と分けられます。知的機能が平均をおおむね標準偏差の2倍以上下回り、そのために日常生活に支障をきたしている場合には、知的能力障害の診断を満たします。知能の水準を表す数値である知的指数は、正規分布するように作成されています。

また、知的能力障害の診断には至らないものの、平均に比べて知的機能に弱さがあり、日常生活への支障を伴う場合には、境界線知能という表現が用いられることもあります。

知的能力障害はほかの発達障害との併存も多いことから、全般的な知的機能の制約により知的機能の諸領域において顕著な偏りがある場合など多様な状態が含まれます。したがって、同じ知的能力障害という診断においても、多様な制約のパターンを含んでいることに注意する必要があります。

知的能力障害について詳しくは「国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的・発達障害研究部」の情報も参考にするとよいでしょう。

原因

知的能力障害と診断されても明確な病理的要因はなく、身体的な障害も伴わないことが一般的です。しかし、このような生理的な要因以外に、遺伝子疾患や染色体異常などの遺伝的要因、低栄養、感染症、神経毒、神経障害などが原因となることもあります。

病理的要因

遺伝子疾患や染色体異常などの遺伝的要因低栄養、感染症、神経毒、神経障害などが原因となることがあります。

具体的には、以下が挙げられます。

  • フェニルケトン尿症
  • 神経線維腫症
  • 甲状腺機能低下症
  • 脆弱(ぜいじゃく)X症候群
  • ダウン症候群
  • 22q11.2欠失症候群
  • 妊娠中の母体の重度の低栄養や感染症(サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス、トキソプラズマ、風疹ウイルスなど)
  • アルコール
  • 鉛、メチル水銀などの有毒物質の曝露
  • フェニトイン、バルプロ酸などの薬剤
  • 神経の発達(孔脳症性嚢胞(こうのうしょうせいのうほう)など)
  • 分娩時における低酸素症や極度の廷出生体重
  • 出生後の感染症(髄膜炎や脳炎など)
  • 重症の頭部外傷
  • 小児の低栄養
  • 脳腫瘍とその治療

など

心理社会的要因

養育者からの重度のネグレクトや情緒的虐待により、知的能力障害が生じることがあります。

 

症状

日常生活の適応に関わる3つの領域として、主に概念的領域、社会的領域、実用的領域があります。知的能力障害ではこの領域における適応行動の不全によって特徴付けられています。

概念的領域

読み書き、金銭、時間、数の概念など

社会的領域

対人スキル、社会的責任感、自尊心、純粋でだまされやすい、問題解決、規則や法の遵守、被害に合うことを避けるなど

実用的領域

処理、職業機能、健康管理、交通機関の利用、規則正しい生活、安全、金銭の使用、電話の利用など

検査・診断

知的能力障害の診断は、知能指数の評価によってのみなされるのではなく、日常生活それぞれの領域における適応行動の評価によって診断されます。知能指数や発達指数の評価には、田中ビネー式知能検査、ウェクスラー検査(WPPSI、WISC, WAIS)、Bayley乳幼児発達検査、新版K式発達検査など、適応行動の評価にはVineland-II適応行動尺度が用いられます。

知能障害の重症度は、概念的、社会的、実用的領域における困難とその支援ニードの程度によって分類されますが、おおむねの指標として 知能指数から軽度(51〜75)、中等度(36〜50)重度(21〜35)最重度(IQ20以下)を参考にすることがあります。また、 知的能力障害の背景に病理的原因が疑われる場合には、遺伝カウンセリングなどを経て遺伝子検査、血液検査や画像検査などが行われることがあります。

治療

知的能力障害について詳しくは「国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所知的・発達障害研究部」の情報も参考にするとよいでしょう。

就学前の支援

就学前には、食事、更衣、入浴、遺尿などの身辺自立が進まないことや、社会的な働きかけに対して反応性が乏しい、かんしゃくが多い、幼稚園や保育園でほかの子どもの活動について行けないといったことや、ほかの発達障害の診断を契機として、知的能力障害の診断に至ることもあり、発達支援センターなどでの療育が利用されます。療育手帳や特別児童扶養手当などの社会的な支援も活用するとよいでしょう。

療育手帳や特別児童扶養手当について詳しくは「障害者手帳について」「特別児童扶養手当について」にまとめられています。

就学後の支援

就学後は、数の概念や算数、読み書きなどの学習課題に、児の学習進度に合った課題を選択し、分かりやすい教材の工夫を交えながら、きめ細やかな指導が実施されることが一般的です。その場合、通常級において可能な範囲の個別的対応や補助教員による援助を行ったり、週に1時間など算数や国語などの特定の科目を取り出して、通級指導教諭が対応したり、特別支援学級に在籍したり、特別支援学校を利用するなどさまざまです。

そのほかにも、レスパイト(ご家族の休息)目的で短期的な入所施設を利用したり、ガイドヘルパーを利用したりするなどの福祉的支援も多様です。なお、この場合は主治医意見書に基づく障害区分認定が必要となります。

福祉的支援について詳しくは「障害福祉サービスについて」にまとめられています。

進学や就職などの支援

義務教育終了後は、企業就労、作業所や就労移行施設への通所、デイサービスへの入所、高等学校や専門学校等への進学、特別支援学校高等部への進学など進路は多様にあります。特別支援学校の中には、高等部のみを設置し、比較的軽度の知的能力障害の児童を対象に、企業実習などを多く取り入れながら、障害者雇用などを目指す学科もみられます。

成人期では、障害者雇用を含めた雇用のほか、デイサービス、生活介護、グループホームや通所・入所施設などの利用などがありますが、現在は家族人数が少なくなっているほか、支援を担う家族が高齢化していること、余暇活動など就労以外の生活や日常生活のスキル向上を目指す取り組みの拡充などが求められます。

知的・発達障害に関する情報、教育、医療・保健、福祉、就労、地域生活に関する情報は国のポータルサイト「発達障害ナビポータル」にまとめられています。

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