ふぇにるけとんにょうしょう

フェニルケトン尿症

最終更新日:
2023年06月08日
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2023/06/08
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概要

フェニルケトン尿症(PKU)は、常染色体潜性遺伝*形式を取るアミノ酸代謝異常症の1つです。両親が保因者(遺伝子変異をもっているが、発症していない人)の場合、1/4の確率で患者が発生すると考えられています。

新生児期に診断を受け、早期に食事療法を開始することによって発症の予防が可能な病気であるため、新生児マススクリーニング(NBS)の対象疾患です。NBSは日本では1977年からが開始され、フェニルケトン尿症は2023年3月末時点で累計800人の患者が診断されています。なお、その頻度は出生約7万人に1人とされています。

治療法としては、古くから食事療法が行われてきましたが、現在はテトラヒドロビオプテリン(BH4)経口投与やフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)皮下注射という治療法もあります。

*常染色体潜性遺伝:病気に関係する遺伝子が常染色体上に存在し、その一対の遺伝子の両方に変異が起こった場合に発病する状態

原因

フェニルケトン尿症の原因は、フェニルアラニン(Phe)という物質を分解するフェニルアラニン水酸化酵素(PAH)の活性低下です。そのため、PAH欠損症とも呼ばれています。

PAHはBH4を補酵素(酵素作用のために必要な化合物)としているため、BH4が欠乏するとPAH 活性が低下します。また、BH4欠乏症という病気でもPAH 活性が低下するため、フェニルケトン尿症と類似の病態が現れます。そのため、NBSで血中Phe濃度が上昇していた場合、フェニルケトン尿症とBH4欠乏症とを区別(鑑別診断)する必要があります。

症状

無治療の場合、Pheが蓄積することによる知的障害、精神症状などの中枢神経症状、またPheの代謝産物*のチロシンが欠乏するため色白・茶髪などのメラニン欠乏症状が現れます。しかし、NBSによって新生児期から血中Phe濃度を適切にコントロールできれば、症状は発現しないとされています。

また、患者が妊娠した場合、胎児が小頭症、知的障害、心奇形を合併することが知られていますが、妊娠中に妊婦の血中Phe濃度を適正に保つことにより、これらの発症は防止することが可能とされます。

*代謝産物:体内の代謝によって作り出される物質

検査・診断

世界各国で血中Phe濃度を指標としたNBSが実施されています。

血中Phe濃度が2mg/dl以上の場合が精査の対象となります。BH4欠乏症と区別するため、尿・血液のプテリジン分析、ジヒドロプテリジン還元酵素解析、BH4負荷テストなどを行い、総合的にフェニルケトン尿症か否かの判定を行います。PAHの遺伝子解析を行い、変異が同定されれば確定診断されます。

治療

フェニルケトン尿症の治療は、無Pheミルク、低タンパク食などによる食事療法が治療の第一選択です。Phe摂取量をコントロールして、血中Phe濃度を適正に保つことが重要です。ただし、Phe は体内で作ることのできない必須アミノ酸なので、制限のし過ぎも問題となります。また食事療法は摂取できる食事の内容に制限があり、生涯にわたって継続する必要があるため、患者やその家族の負担が大きいとされています。

また、フェニルケトン尿症(PAH欠損症)であるのに、BH4の投与により血中Phe濃度が低下する場合を、BH4反応性PAH欠損症と呼びます。BH4反応性PAH欠損症の軽症例では、BH4の投与により食事療法をやめられる場合があり、またやめられない例でも食事制限の緩和ができます。

アメリカでは2018年5月から、ヨーロッパでは2019年5月からフェニルアラニンアンモニアリアーゼ(PAL)を皮下注射する治療法が臨床現場で開始されています。日本では2023年3月にPAL製剤は製造販売承認を受けており、今後使用可能になると考えられます。PALによる治療は、従来の治療法で血中Phe濃度を適正に保つことができない15歳以上の患者が対象です。

これら食事療法以外の治療法の開発によって治療の選択肢が広がり、患者のQOL(生活の質)の改善を目指せるようになっています。

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