りっさういるすかんせんしょう

リッサウイルス感染症

目次

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概要

リッサウイルス感染症とは、リッサウイルスによって引き起こされる感染症を指します。リッサウイルスは一つの特定のウイルスを指すのではなく、リッサウイルス属のウイルスを指しており、14種が確認されています。狂犬病ウイルス、ラゴスウイルス、モコラウイルスなどを含む総称です。しかし、日本でリッサウイルス感染症という場合、狂犬病ウイルスによって生じる感染症を除くので注意が必要です。狂犬病ウイルスとその他のものを狂犬病類似ウイルスと呼ぶこともあります。

リッサウイルス感染症は、コウモリなど病原体を保有する動物などに噛まれるなどして発症します。狂犬病ウイルスと類似の臨床症状が生じ、発症すると生命予後は著しく不良であることが知られています。リッサウイルス感染症は、イギリス、オーストラリア、中東などで散発的に数例が報告されています。4類感染症として指定されている日本では2017年現在、報告例はありません。

リッサウイルス感染症は、コウモリとの接触が発症リスクになります。狂犬病ほどの流行性がある病気ではありませんが、発症時の症状経過は激烈です。リッサウイルス感染症では、コウモリ(特に野生)との不要な接触を避けることが予防につながります。

原因

リッサウイルス属には狂犬病ウイルスも含まれていますが、日本国内でリッサウイルス感染症といった場合には狂犬病ウイルス以外の感染症を意味しています。

狂犬病は日本以外の世界においてはまだ発症数の多い病気ですが、人におけるリッサウイルス感染症はこれまでに数例の報告例に限られています。リッサウイルスにはラゴスコウモリウイルス、モコラウイルスなどを含めて、14種類のウイルスがあります(狂犬病ウイルスをここでは含んでいます)。

リッサウイルスは、アフリカやオーストラリアなどに生息するコウモリから発見されていますが、日本に生息するコウモリからの検出例はありません。また、ある種のげっ歯類にもウイルスが潜む可能性も指摘されています狂犬病ウイルスは咬まれた傷口から体内に侵入し、神経へと移行します。狂犬病ウイルス以外のリッサウイルスも神経親和性が高く、体内に侵入した後に神経系へと移行し、狂犬病類似の神経症状を引き起こします。

症状

人におけるリッサウイルス感染症のこれまでの報告例を見ると、ほとんどの例がコウモリに噛まれた後20〜90日間の潜伏期間を経て発症しています。症状が出現してからの臨床経過は狂犬病のそれと類似しているため、両者の区別は困難であるとされています。

リッサウイルス感染症では、コウモリに噛まれた部位の局所症状として、痛み、しびれや知覚過敏等を認めます。その他、全身症状として発熱、頭痛、倦怠感などの症状も見ます。

リッサウイルス感染症の原因ウイルスは狂犬病ウイルスと同様に神経系への親和性が高く、さまざまな神経症状を引き起こします。具体的には興奮、意識障害、錯乱、幻覚、恐水症などです。病気の進行は非常に急激であり、けいれんや易攻撃性が進行し、最終的には意識混濁から死に至ります。全体の経過はおよそ1か月前後であることが多いです。

検査・診断

リッサウイルス感染症の診断は、狂犬病ウイルスの診断同様、ウイルスの抗原抗体反応やRT-PCRによって行われます。用いられる検体としては、角膜・皮膚、痰、唾液、唾液、脳脊髄液などさまざまでです。

抗原抗体反応は、狂犬病ウイルスも含むリッサウイルスに対して広く反応性を示します。そのため、リッサウイルスのなかでも狂犬病ウイルスなのか、ラゴスコウモリウイルスなのか、モコラウイルスなのか、それ以外のものなのかを判定するためには、それぞれ特徴的な遺伝子を検出するためのRT-PCRが必要とされます。なおリッサウイルス感染症では、死後に病気が確定されることもあります。

治療

リッサウイルス感染症は、生命予後が著しく不良な疾患です。これまでのところ確実に有効な治療方法はなく、治療は対症療法を行うに留まります。

リッサウイルスの一部は狂犬病ワクチンが効果を示す可能性も指摘されており、コウモリに噛まれた後など発症リスクが疑われる場合には、代替薬的に使用されることがあります(モコラウイルスとは交差反応がないので効果はないとされています)。ハイリスク者に対しては、ワクチン接種を検討することもありますが、すべてのリッサウイルス感染症に対して有効ではない点に注意が必要です。

リッサウイルス感染症予防の基本は、ウイルスを体内に取り込まないことです。多くコウモリに噛まれることで発症するため、コウモリとの接触歴を避けることが予防上重要な観点となります。特に海外では、むやみやたらと野生のコウモリに近づかないようにしてください。