りんぱかんかくちょうしょう

リンパ管拡張症

監修:

概要

リンパ管拡張症とは、リンパ管(リンパ液が流れる管)が正常と比較して拡張して太くなりリンパ液が正常に流れない病気のことです。

この病気は、生まれつきの形成異常によって発症する場合もあれば、ほかの病気やけがによってリンパ管にダメージが生じて発症する場合もあります。

リンパ管の異常が体のどこにあるかによって症状はさまざまですが、代表的なものとしては、リンパ液が漏れ出すことによりお腹や胸に腹水や胸水がたまる症状がみられます。また腸の中にリンパ液が漏れてさまざまなタンパク質を失い、また十分に栄養を吸収できないことによる低栄養状態やむくみなどが現れます。

治療方法は原因によって異なり、ほかの病気やけがによって引き起こされたリンパ管拡張症は原因となっている病気やけがの治療が優先的に行われます。一方、生まれつきのリンパ管の異常による場合には根本的な原因の除去が難しく、食事の摂取などの生活習慣改善など保存的治療を行います。

原因

リンパ管拡張症は、リンパ管が拡張してリンパ液の流れや機能に異常を生じる病気です。この病気は、全身のリンパ管に発症する可能性がありますが、特に腸リンパ管拡張症、肺リンパ管拡張症などが代表的な病気として知られています。リンパ管拡張症は原因によって主に先天性と後天性の2つのタイプに分けられます。

先天性リンパ管拡張症

生まれつきリンパ管の形や機能に異常があることによって発症するタイプです。遺伝子異常が関係していることが明らかとなる場合もありますが、多くの場合、原因は不明です。リンパ管形成不全(リンパ管が十分に発達しなかった状態)や胸管(体内で最も大きなリンパ管)の閉塞へいそくリンパ浮腫などを伴っていることもあります。

後天性リンパ管拡張症

生後に発症する後天性のタイプは、ほかの病気やけがなどによってリンパ管がダメージを受けることで引き起こされます。心不全肝硬変によるリンパ管への過剰な負荷や、がん、感染症、けがなどによるリンパ管への物理的な圧迫やダメージが原因として挙げられます。そのほか、心臓手術などの医学的治療によってリンパ管への負担が増加し、 二次的にリンパ管拡張を生じる例も報告されています。

症状

リンパ管拡張症の症状の現れ方は、病変の部位によって大きく異なります。

リンパ管拡張症の中でも代表的である腸リンパ管拡張症では、腸や腸間膜のリンパ管が拡張してリンパ液の流れが悪くなり腸の中へ漏れ出し、リンパ液とともにさまざまなタンパク質が失われ、栄養の吸収障害が引き起こされます。その結果、低栄養状態となりむくみ、下痢、嘔吐、腹痛、腹水、脂肪便などの症状が現れるようになります。

また、肺リンパ管拡張症では組織内にリンパ液がたまり肺自体の機能が低下したり、たまったリンパ液が漏れて乳び胸水*となって呼吸障害などの症状が引き起こされたりします。

いずれも重症なケースでは、命に関わる場合もあります。

*乳び胸水:胸部のリンパ管からリンパ液が漏れ出ることで生じる胸水。脂肪分を多く含み乳白色であるために“乳び”胸水と呼ばれる。

検査・診断

症状などからリンパ管拡張症が疑われる場合には、以下のような検査が行われます。

血液検査

血液中のアルブミン値、リンパ球数などを評価するために血液検査が必要となります。また、そのほかの病気との鑑別のためにも血液検査は必須です。

便検査

腸リンパ管拡張症の場合、腸内へのリンパ液の漏出を意味する便中α1アンチトリプシンクリアランスの亢進こうしんがみられるのが特徴となります。そのため、腸リンパ管拡張症が疑われるときは便検査を行うのが一般的です。

画像検査

肺や腸管に特徴的な所見を確認するため、またむくみなどを引き起こすほかの病気がないか確認するためにX線、CT、MRIなどによる画像検査が必要となります。また、リンパ管造影検査、リンパ管シンチグラフィなどによってリンパ管の走行や形状、閉塞の有無などを評価する検査も行われます。

内視鏡検査

腸リンパ管拡張症が疑われる場合には内視鏡検査が行われます。腸リンパ管拡張症は小腸の粘膜に白い斑点のような変色が散在しているケースが多いのが特徴です。

また、内視鏡検査で小腸の粘膜を採取し、顕微鏡による病理検査を行うと、絨毛じゅうもう内のリンパ管の拡張が認められます。

治療

リンパ管拡張症の治療方針は、発症原因によって異なります。

先天性リンパ管拡張症について、現状では根本的な治療方法がありません。そのため、症状に応じて不足したタンパク質や血液中の成分を補充するなどの対症療法が行われます。加えて、リンパ管への負担を軽減するための食事療法や生活習慣の改善も行われます。ごくまれですが、症状が重く、病変が広範囲でない場合には病変を切除する手術が検討されることもあります。

後天性リンパ管拡張症の場合は、原因となっている病気やけがの治療を優先的に行います。併せて、リンパ管拡張症による症状の緩和を目的とした対症療法が実施されます。

最近では、リンパ液の漏れに対しては、リンパ管造影をしながらリンパ管を塞栓そくせんして漏れを止める治療なども行われることがあります。

最終更新日:
2025年07月17日
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2025/07/17
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