さんせんべんへいさしょう

三尖弁閉鎖症

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

三尖弁閉鎖症とは、右心房と右心室の間に存在する三尖弁が閉鎖してしまう先天性(生まれつきの)心疾患です。肺への血流が阻害されることになるため、酸素が不十分な血液が全身へ巡ることになります。新生児早期からの治療が必要であり、内科的治療や複数回の手術が行われます。

三尖弁閉鎖症では、肺動脈閉鎖、大血管転位、大動脈縮窄(しゅくさく)症など他の合併心奇形を有することがあり、治療はより複雑になります。最終的にはフォンタン手術と呼ばれる機能的根治手術を目指しますが、治療経過は症例によってさまざまです。したがって、先天性心疾患の診断・治療経験が豊富な専門施設での治療が必要です。

原因

三尖弁閉鎖症は、右心房と右心室の交通を保つ三尖弁と呼ばれる部位が先天的に閉塞する(ふさがる)ことから発症します。

全身から心臓へと戻ってきた血液は、まず右心房に流入します。その後、右心房から右心室、右心室から肺へと血流は送り出されることになりますが、それぞれ三尖弁や肺動脈弁と呼ばれる弁が位置し、これら弁は血液が正しく一方向に流れるように調整する重要な役割を担っています。全身から戻ってきた血液には酸素が乏しく、二酸化炭素が多く含まれています。肺へ送り込まれた血液はガス交換を受け、酸素に富んだ血液として左心房へと返ります。さらに、左心房から左心室、全身へと血流が送られます。

しかし、三尖弁閉鎖症では右心房から右心室の血流が遮断されてしまっています。そのため、右心房からの血液は通常では存在しない穴(「心房中隔欠損」もしくは「卵円孔」)を介して、肺を通過せず左心房へと入ります。左心房から左心室さらに大動脈へと血液は流れますが、このままでは酸素の乏しい血液が全身を循環することになり、肺でのガス交換を行う必要があります。

肺への血行動態(心臓が送り出す血液の量とその流れ方)は、三尖弁閉鎖症に合併する心奇形よっても異なります。出産前の胎児には「動脈管」と呼ばれる特殊な血管があり、大動脈と肺動脈を交通する役割を担っていますが、出生後間もなくから動脈管に依存する形で肺血流を保つことがあります。また心室中隔欠損を介して右室への血流が確保されることもありますが、この場合には、肺動脈弁の狭さによって肺血流の程度は大きく変動し、肺血流が多くなることもあれば、逆に少なくなることもあります。

こうした複雑な血行動態を持つ三尖弁閉鎖症ですが、胎児期における心臓の発生に異常を有することから発症すると考えられています。

症状

三尖弁閉鎖症では合併する奇形の様相や肺動脈への血流の程度に応じて、症状出現の時期や重症度が異なってきます。

動脈管により肺への血流を保っている場合

動脈管は、出生後1〜2日の経過で自然に閉鎖する性質があります。そのため、肺への血流を動脈管に依存しているようなタイプの三尖弁閉鎖症では、動脈管が閉塞することに伴って肺への血流が著しく低下します。すると、全身へ酸素の乏しい血液が巡ることになるため、出生後早期からチアノーゼ(皮膚や粘膜が青紫色である状態)が出現します。

心室中隔欠損により肺への血流を保っている場合

心室中隔欠損があり肺動脈への血流が左心室経由で確保されていた場合も、肺動脈が狭い場合には肺血流が不足することからチアノーゼに至ることがあります。

逆に肺動脈が狭くない場合には、通常よりも大量の血流が肺に流れてしまう危険性があります。この際には、肺血流の増加に伴い心不全徴候を呈するようになり、哺乳障害や体重減少といった症状につながります。

検査・診断

三尖弁閉鎖症の診断は、心エコーでなされます。心エコーでは三尖弁の閉鎖状況を観察するだけでなく、心臓内の血行動態評価(心室中隔の状態や肺動脈の状態など)や、大動脈の合併奇形の確認も重要です。

肺動脈と大動脈の位置関係が逆転していることがあるため、心室と大血管に関する血行動態や、肺血流を動脈管に依存することもあるため、動脈管の太さは重要な評価項目となります。さらに、三尖弁閉鎖では右心房から左心房への血流を保つために、心房中隔に穴があいていることが必要であるため、心房中隔を介する血流評価も重要です。

胸部単純レントゲン写真では、心臓の大きさや肺うっ血の程度を評価します。また、より詳細な血行動態の評価を行うために、心臓カテーテル検査を行います。肺高血圧の状態を含めて病態を正確に把握することができ、手術を行う上で重要な情報を提示してくれる検査になります。

治療

三尖弁閉鎖症では、合併する心奇形や、肺血流を確保しているルートの状態などによって治療方法や経過が大きく異なります。

肺血流を動脈管に依存する状態では、プロスタグランジン製剤を投与して動脈管の閉鎖を防ぐ必要があります。この薬剤を使用しても最終的には動脈管は閉鎖してしまうため、新生児期・乳児期早期に肺血流を大動脈系から確保するために「BTシャント」と呼ばれる血管造設がなされます。逆に肺血流が多い場合には、心不全の進行が懸念されるため、肺動脈を締めて狭くする手術が行われます(PAバンディングと呼ばれます)。また、心房間の血流が不足する場合には、BASと呼ばれるカテーテル治療を行い、心房中隔の穴を広げることがあります。

内服薬を併用しつつ体重増加や身体の成長を待ち、同時に肺血流の確保・心不全やチアノーゼの調整を行って、最終的にはフォンタン手術と呼ばれる機能的根治手術を目指します。実際の経過は症例によって多様であるため、専門施設での治療が必須となります。

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