治療
乳児痔瘻の治療では、大人の痔瘻のように瘻管を切開・切除する根治術を行うことはほとんどありません。基本的には漢方薬や抗菌薬の投与、膿瘍のまわりを軽く押して膿を出す処置(圧迫療法)を行い、必要な場合にのみ切開による排膿を行って、自然治癒を促します。1~2歳を過ぎても再発を繰り返す場合には、手術適応となる場合もあります。
薬を用いた内科的治療
抗菌薬の内服や塗布により、膿瘍の炎症を抑え、膿の貯留を防ぎます。抗菌薬の投与は従来から行われている治療です。しかし肛門局所での効果が限定的な場合があり、内服により腸内細菌のバランスが崩れて下痢を招くこともあるため、近年は炎症が強く発熱を伴う場合などに短期間使うことが一般的です。また、膿の出口が形成されて治療が難しくなることもありました。その場合、従来は膿の出口を掻き出す治療が行われていましたが、痛みを伴い、頻繁な通院が必要で、赤ちゃんと家族の負担が大きいことが課題でした。近年では、膿が溜まった状態から漢方薬を使用することで、痛みや負担の少ない形で治療を進めることが増えています。あわせて、下痢や便秘は症状を悪化させることがあるため、便の状態を整える整腸剤を併用することもあります。
漢方薬は主に2種類で、1つ目は「排膿散及湯」と言い、鎮痛・排膿の作用があります。患部が赤く腫れて痛みが強い時期(急性期)に使います。2つ目は「十全大補湯」で、体力を補い、免疫のはたらきを整える作用があるとされています。排膿がなくなり患部の腫れが治まったときに使うことで、再発の予防を目指します。
漢方薬は苦いため、飲ませるための工夫が必要です。たとえば、少量の水を混ぜて頬の内側に付けてから飲み物で流す、お湯で溶かしたものをスポイトで吸って口の奥に落とす、乳児用の服薬ゼリーを使用するといった方法があります。
排膿を促す処置
基本的には、漢方薬を用いるなどして切開を回避して治療を行いますが、腫れが大きく痛みを生じている場合や、抗菌薬や漢方薬を投与しても症状が治まらない場合には、皮膚を少し切開して膿を出す処置を行うことがあります。切開して膿を出した後も、漢方薬による治療は継続します。
清潔の保持
赤ちゃんが排便した後は、優しくお尻を洗い流して、清潔な状態を保ちます。ぬるま湯を使い、シャワーで洗うか座浴(洗面器などにお湯をはり、お尻を洗う方法)を行うとよいでしょう。また、下痢や便秘が続くと悪化しやすいため、便の状態にも気を配りましょう。
根治術を検討するケース
月齢の低い赤ちゃんに対する全身麻酔はリスクを伴うこと、術後の患部の管理が難しいこと、将来的な肛門機能への影響が不明瞭であることなどから、できるだけ根治術を避けます。そのうえで、1~2歳を過ぎても再発を繰り返している場合には、瘻管を開放する手術(瘻管開放術)を検討することもあります。手術の時期に決まった基準はなく、可能であれば学童期まで成長を待ってから行うこともあります。
注意が必要なケース
頻度はまれですが、乳児痔瘻と似た症状(膿瘍や瘻孔など)を伴う別の病気(慢性肉芽腫症などの生まれつきの免疫の異常や、クローン病など)が存在するため、それらの病気を見逃さないよう注意が必要です。たとえば、2歳を過ぎてから発症した場合や重症で治りにくい場合、手術を行っても治らずに再発を繰り返す場合、あるいは膿瘍のほかに潰瘍(えぐられたような深い傷)やむくんでいる皮垂(スキンタグ:皮膚が余ってしわになった状態)を伴う場合などは、あらためて詳しい診察を受けることが推奨されます。
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