概要
慢性肉芽腫症とは、体の中の免疫細胞がうまくはたらくことができない病気です。免疫細胞は通常、外敵を見つけて取り除くことで感染症を防いでいます。慢性肉芽腫症では、生まれつきタンパク質を作る遺伝子に異常があるため、免疫細胞がうまくはたらけなくなります。そのため、細菌などの病原菌に感染し、体中に炎症が起きやすくなります。
具体的には、肺や皮膚、リンパ節、肝臓に感染症が起き、膿瘍を作ることがあります。また、体に炎症が起きるために肉芽と呼ばれるできものができ、内臓に障害を引き起こすことがあります。慢性肉芽腫症は、子どもに遺伝することがあります。日本人では22万人に1人の割合で発症しているとされており、男の子に多く発症します。
原因
免疫細胞が感染症の原因となる外敵を倒せなくなってしまうことが原因です。免疫細胞は外敵が来たときにタンパク質(NADPHオキシダーゼ)を用いて活性酸素を作ります。慢性肉芽腫症は、生まれつき(先天的)なタンパク質の設計図(遺伝子)の異常により、感染源を攻撃するための活性酸素を作ることができなくなります。慢性肉芽腫症では、活性酸素を作ることができなくなることで、細菌などの病原菌に感染し、体中に炎症が起きやすくなります。
症状
生後数か月から、細菌やカビの仲間である真菌といった感染症の症状が出始めます。自覚症状としては、発熱、咳や呼吸困難、皮膚の痛み、腫れ、下痢や血便、腹痛、成長が遅くなるなどがあります。自覚症状が現れにくい患者さんもいます。この場合、何度も肺炎や皮膚炎を繰り返すことで病気が判明することがあります。
また、膿瘍と呼ばれる膿の塊や肉芽と呼ばれるできものが体中にできて、肺炎や皮膚炎、リンパ炎、腸炎が起きることがあります。全身に感染症が広がる血症と呼ばれる合併症が起きた場合には、重症になる場合もあります。
検査・診断
血液検査
血液に含まれる免疫細胞を調べます。きちんと外敵を倒すはたらきが機能しているかどうかを確認します。特に、好中球と呼ばれる白血球の一種が正常に外敵を攻撃できるのかを詳細に調べます。
画像検査
肺炎や腸炎、皮膚炎などが考えられた場合、感染源を特定するためにレントゲン検査やCT検査を行います。
遺伝子検査
家族内にこの病気を発症した人がいた場合には、タンパク質の遺伝子を調べて、どのような異常があるかを調べます。複数の遺伝子異常があり、どの遺伝子異常があるかによって重症度が異なるため、治療の選択が変わります。
治療
慢性肉芽腫症の治療の目的は感染症のコントロールです。抗生物質や抗真菌薬で治療を開始します。重度の感染症の場合は点滴で治療を行います。また、全身にできた肉芽腫が周囲の臓器に悪影響を及ぼす場合には、手術などで取り除くことがあります。
症状が落ち着いた場合には、飲み薬(内服薬)で治療を行いながら経過観察を行います。重度の感染症を繰り返す場合には、造血幹細胞移植療法を検討します。
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