特発性側弯症の早期発見のためには、親御さんが日頃からお子さんの背中をしっかり観察しておくことも重要です。また、運動器学校検診も活用しましょう。成長も止まりつつあって軽度の側弯であれば著しく進行することはありませんが、発症年齢やコブ角*によっては適切な治療が必要です。一方で、日常生活の動作が進行の原因になることは少ないので、神経質になりすぎないことも大切です。
藤田医科大学病院 整形外科教授である藤田 順之先生に、側弯症の早期発見で重要な観察ポイントや発見時のケア、治療で重要なことを伺いました。
*コブ角:背骨上部でもっとも傾きが大きい椎体と、背骨下部でもっとも傾きが大きい椎体から線を引いて形成された角度。
こちらのページでもお話ししましたが、やはり親御さんが日頃から、お子さんの体をしっかり観察していることが重要です。上半身の服を脱いだ状態がもっとも分かりやすいので、入浴時などに注意して見てください。
注意すべき観察ポイントは以下になります。
ごく軽度の側弯であれば、進行する可能性も低くなりますのでやみくもに怖がる必要はありません。
「側弯を放っておくとどんどん進行してしまうのでは」という懸念があるかと思いますが、必ずしもそうではなく、たとえばほぼ成長の終わった高校生などのお子さんで軽度の側弯であれば、ほとんど進行することはないと考えていただいてよいと思います。
ただし年齢が低いお子さんや高度な側弯の場合は、成長に伴いどんどん曲がってくる可能性がありますので、年齢や側弯の角度に合わせたケアが必要です。
側弯症は自覚症状がほとんどないため、本人や親御さんも気付かない場合があります。そこでお子さんの側弯症を含む運動器疾患全般を早期発見するために、1979年に導入されてから行われていた側弯症学校検診に代わり、2016年度から学校健診に運動器検診(運動器学校検診)が追加されました。ご家庭でお子さんの背骨や手足について異常がないか評価いただき、それを基に学校医が視診や前屈時の肋骨の隆起がないかなどを総合的に判定し、側弯症が疑われる場合は整形外科医の受診が必要という判定になります。
成長期を迎える前の小さなお子さんの場合、成長に伴って側弯が進行する場合があります。ですので、側弯症の疑いがあると判定された場合は放置せず、整形外科を受診してきちんと医師の判断を仰いでください。
検診時以外にもご家庭でお子さんの背中で、もし気になる症状などがあれば整形外科を受診するようお願いします。
日常生活で一番大事なことは、親御さんが神経質になりすぎないことです。人間の背骨が多少曲がっていること自体は珍しくありません。
日頃の姿勢の悪さや、通学・通塾時に体の片側に重い肩掛け鞄を掛けていたことなどが原因ではないかとおっしゃる親御さんも多くいらっしゃいますが、現時点ではそれらに明確なエビデンスはありませんし、これらを本人に指摘し続けると、場合によってはお子さん自身がとても神経質になったり、コンプレックスを持ってしまったりすることがあります。お子さんの姿勢や脚を組む癖、鞄の掛け方などを逐一指摘したり、厳しくしつけたりする必要はありませんので、怖がらず、神経質になりすぎず、治療に臨むお子さんを温かくサポートしてあげてください。
また、軽い側弯を心配しすぎる必要はありません。高度の側弯や、何らかの病気を原因とする側弯症でなければ、基本的に体が成熟してくるにしたがって側弯症はほとんど進行しなくなりますので、過度に思いつめないことも大切です。
昨今は手術の際に使用するインプラントの性能が非常に向上しています。それに伴い、手術時間や矯正固定範囲の縮小など、さまざまな点が改善され発展しています。
また、最近では手術でインプラントを使う際の、手術支援ナビゲーションシステムも登場しています。これは、手術時に画像撮影し、三次元画像を作成、ナビゲーションにしたがって脊椎の左右に入れるスクリューの位置や方向、長さをmm単位で正確にコントロールするもので、ナビゲーションシステムがなかった時代よりも精度の高い設置が可能となっています。
「自分だけが友達と違って背骨が曲がっているのでは」と不安に思っている患者さんも多いと思いますが、コブ角が10度以上側弯している子は全体の2~3%と、決して少なくありません。ですから特別珍しい病気にかかっているわけではない、と思っていただければと思います。また、側弯症の中で手術が必要になるケースは非常に少なく、ほとんどの場合は経過観察か装具療法で対応が可能なので、怖がらなくても大丈夫です。
人間の体というものはそもそも左右非対称であることが多いので、側弯をコンプレックスに感じる必要はありません。多くの場合、多少の側弯があっても健康上大きな問題が起こることもありません。重要なことは、きちんと医師の診断を仰ぐことです。疑わしい症状があればお気軽にご相談ください。
親御さんの中には、「子どもが側弯になってしまったのは自分のせいではないか」と考えてしまう方もいらっしゃいます。しかし、ご自身に責任があるとお考えになる必要はありません。
現在、より早く、より安全な側弯症手術が行われるようになってきています。お子さんの側弯が進行してきたとしても思い悩まず、「対処法はあるのだ」とお考えいただければと思います。
安心してお子さんの治療に臨んでください。
藤田医科大学 整形外科学講座 教授
藤田医科大学 整形外科学講座 教授
日本整形外科学会 代議員日本脊椎脊髄病学会 評議員日本運動器科学会 評議員日本軟骨代謝学会 評議員最小侵襲脊椎治療(MIST)学会 理事日本側彎症学会 会員日本腰痛学会 会員日本脊髄障害医学会 会員日本骨代謝学会 会員日本結合組織学会 会員Orthopaedic Research Society(ORS) 会員International Society for the Study of the Lumbar Spine 会員Asia Pacific Spine Society 会員
2000年より整形外科医師としてキャリアをはじめる。2010年には米国Thomas Jefferson大学整形外科留学。帰国後、慶應義塾大学整形外科スタッフとして脊椎診療に従事し、2019年に藤田医科大学整形外科学講座教授就任。現在は、脊椎疾患を中心とした外来診療や手術治療などの臨床だけでなく、超高齢社会における運動器、特に脊椎疾患の臨床研究および基礎研究にも力を注ぐ。日本整形外科学会代議員。
藤田 順之 先生の所属医療機関
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