予防
切迫早産の治療に限界がある以上、早産のリスクを下げるためには、切迫早産の症状が起こってからの治療よりも、症状が起こる前の予防こそが重要だと近年では考えられています。
細菌性腟症の加療
通常、腟内はラクトバチルス属(乳酸菌)が優位となって酸性を示していて、このことで雑菌の侵入を防ぐ作用を持っています。何らかの原因でこのラクトバチルス属が減少し、ほかの細菌が過剰に増殖して腟内細菌叢に乱れが生じた状態を細菌性腟症といい、繁殖した病原菌による炎症が子宮内へ波及することで、妊娠中の早産リスクになってきます。妊娠初期に細菌性腟症の診断を行い、もしその所見がある場合には、抗生物質を使って加療することがあります。
プロゲステロン
女性ホルモンであるプロゲステロンには頸管熟化抑制作用、子宮収縮抑制作用、抗炎症作用などがあり、特に、早産の既往のある妊婦に対する予防的投与の有効性についてはすでに多くの証明があります。天然のプロゲステロンを腟坐薬で用いる方法と、人工的に合成されたホルモンを筋肉注射で用いる方法とがあります。日本では後者が切迫早産に対する保険適用を有していますが、現状では予防に有効とされている量よりも少ないものとなっています。保険適用外診療となるため、適切に使用するためには地域の周産期センターの専門医に相談する必要があります。
妊娠前の葉酸摂取
妊娠前の葉酸摂取が早産リスクを減少させるとの報告があります。十分にエビデンスが高いとはいえませんが、妊娠成立後の摂取では早産リスクの軽減につながりにくく、妊娠前にサプリメントなどで補充することが有効となる可能性があります。
妊娠前の発酵食品摂取の励行
妊娠前にみそ汁、ヨーグルト、納豆を食べる頻度が多い人は、妊娠34週以前の早産の発生が少ないことが示されています。これらの食品はプロバイオティクスとも呼ばれ、乳酸菌や納豆菌が腸内細菌をより健康的な方向に変化させます。腟内細菌叢と腸内細菌叢は密接に関連していて、腸内細菌叢の改善によって、早産リスクが軽減することが期待されます。これらは妊娠してから食べても効果が乏しく、まして切迫早産症状が出てから摂取しても、その治療にはなりません。妊娠前に意識して摂取いただくことが重要です。
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