治療
日本における早産率は5.7%程度で、ここ20年近くほぼ一定です。早産率に関しては世界中で大きな差異があり、先進国の中でも早産率が10%以上の国がいくつか存在し、米国でさえも10%を下回っていないので、それに比べれば日本の早産率は低いのですが、しかし、周産期医療の進歩にもかかわらず早産率が減少してこないということは、切迫早産治療に一定の限界があることを示しています。
子宮収縮抑制剤
子宮収縮抑制剤の使い方には日本と欧米とで大きな違いがあり、日本では使用頻度が高く、長期間にわたって使用される傾向にあります。おおむね欧米における臨床研究の結果として、子宮収縮抑制剤の治療効果は限定的とされていて、欧米では48時間以内に限った使用が推奨されています。しかし、長期投与を選択肢としている日本において早産率が低いことも事実であり、実臨床において、子宮収縮抑制剤が妊娠期間の延長に寄与したと感じられる症例もあることから、現時点では、長期投与を行う施設が多くなっています。ただし、薬剤による有害事象の頻度も低くないので、なるべく最少量で最短期間での投与が望ましいと考えられています。
抗菌薬
細菌が増えるのを抑えたり、細菌を壊したりする薬です。主に細菌感染が原因の場合に検討されます。
ステロイド薬
早く生まれてくる可能性がある赤ちゃんの健康状態をよくするために使われる薬です。
治療的子宮頸管縫縮術
子宮頸管を糸で縫縮する手術です。全ての患者に対してこの手術が早産予防効果を発揮するわけではありませんが、過去に早産の既往があって、今回の妊娠で妊娠24週未満に頸管長が25mm未満となった場合には、この手術を行うことで、早産リスクを下げることが期待されます。
安静
切迫早産の状態にある妊婦が過度に動き回ることはすすめられません。仕事や運動は避けたほうがよいでしょう。ただし、安静により早産が予防できるというエビデンスがないのも事実です。一方で、長期的な安静は筋力低下を招いたり、血栓症のリスクを上昇させたりすることがあります。血栓症は母体生命に関わり得る重篤な合併症で、妊娠中はその発症リスクが高まっています。臨床上、収縮の増加している妊婦に対して安静をすすめることはありますが、過度な安静にならないよう注意する必要があります。
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