インタビュー

切迫早産とはなにか?―もっとも多い妊娠中のトラブル

切迫早産とはなにか?―もっとも多い妊娠中のトラブル
金山 尚裕 先生

浜松医科大学 名誉教授、静岡医療科学専門大学校 学校長

金山 尚裕 先生

この記事の最終更新は2015年11月26日です。

切迫早産」は妊娠中で最も頻度が高く、入院することになりやすいトラブルです。自覚症状があまりないまま入院することになったり、入院期間が長かったり、ずっと点滴をしていなければいけなくなるなど、様々な問題が起こることがあります。今回はこの「切迫早産」について、引き続き浜松医科大学教授の金山尚裕先生に詳しくご説明いただきました。

自然早産の二大原因は、切迫早産前期破水です。この2つは、腟や頸管の炎症からくる絨毛膜羊膜炎によるものが最大の原因といわれています。

切迫早産の定義は、「子宮収縮があること」と「子宮頸管長が短縮していること」の2点を伴うことです。どちらか一つの場合、早産のリスクは高いといえます。

切迫早産について知るために、まず子宮の構造について説明していきます。

 

子宮頸部は、妊娠中に赤ちゃんを子宮の中にしっかりととどめておくための役割を果たしています。赤ちゃんが外に出ないように、そして外から細菌などの外敵が侵入して来ないように「固くて、長くて、しっかりと閉じている」という構造になっています(左図)。しかし、お産前になると、今度は赤ちゃんが外に出られるように変化していくため、少しずつ「軟らかく、短く、開きかけて」くるようになるのです(右図)。

そして最終的に陣痛がはじまると、どんどん開大していき、最終的には赤ちゃんの頭が通過できるほどまで(約10cm)、開いていきます。

この「固くて、長くて、しっかりと閉じている」状態から「軟らかく、短く、開きかけて」いく変化は、通常35~36週あたりから徐々に起きるのが望ましいです。この変化がより早い週数で起きてしまうことを切迫早産といい、変化が起きる週数が早ければ早いほど「重症な切迫早産」であると言えます。

よく診察で「子宮の出口が短くなっているから安静に」とか「ものすごく短くなっているからすぐに入院」などと言われることがあるのはこのためです。

具体的にどれくらい短縮すれば入院となるのでしょうか。これに関しては、地域の医療状況などもあり単純に答えられる問題ではありません。しかし一般的には子宮頸管長の平均は36mmであり、35mm以上あれば安心とみています。30~25mmはグレーゾーン、25mm以下なら何らかの対応が必要と思っていただければよいでしょう。

子宮頸管長だけではなく、早産指数(Tocolysis Index)というもので点数化し、切迫早産の重症度を測ることができます。

このとき、子宮収縮・破水・出血・子宮口の開大度の4つの因子を点数化して重症度を表します。3点までは軽症、4~6点は中等症、7点以上は重症となっています。

子宮頸管長がたとえ32mmで問題のない状態だとしても、子宮収縮や出血があり、早産指数が高い場合は切迫早産の危険性が高くなります。

早産指数(tocolysis index)

スコア01234

子宮収縮無不規則規則的  

破水無 高位破水 低位破水

出血無    

子宮口の開大度無1cm2cm3cm4cm以上

 

 

 

 

 

 

 

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