かのうせいかんせんえん

化膿性汗腺炎

同義語
慢性膿皮症
最終更新日:
2024年11月11日
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2024/11/11
更新しました
2017/04/25
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概要

化膿性汗腺炎(かのうせいかんせんえん)とは、毛穴(毛孔)の奥にある毛包という部分を中心に慢性に炎症を起こす皮膚の病気です。

発症の詳しい原因は解明されていませんが、さまざまな要因によって毛穴が詰まり、毛包が炎症を引き起こすことで発症すると考えられています。毛包は皮膚の内側で毛根を包み込み、毛を作り出す器官です。発症すると赤みや痛みを伴うしこりや、毛包や皮膚の内部にがたまる(膿瘍(のうよう))などの症状が繰り返し現れます。これが進行すると次第にその部位に瘢痕(はんこん)瘻孔(ろうこう)が生じるようになります。瘢痕は、傷が治る過程で形成される皮膚の傷あとを指します。瘻孔は、体に異常な管状の穴ができる状態で、皮膚表面に膿が排出される穴が生じ、皮膚の下にトンネル状の空洞を作ることもあります。

この病気の特徴として、擦れやすい部分に発症しやすいことが知られています。たとえば、お尻、(わき)の下、鼠径部(足の付け根)などに発症しやすく、特に男性では肛門(こうもん)周辺やお尻に、女性では腋の下や鼠径部に発症しやすいとされています。また、日本での好発年齢は20歳~30歳代で、男女比は2:1~3:1と男性に多いと傾向があります。

治療法としては、抗菌薬や生物学的製剤を用いた薬物療法、患部を切開して膿を排出する処置、さらにしこりを直接切除する手術などの外科的治療が行われます。

PIXTA
図:皮膚の断面図
イラスト:PIXTA

 

原因

化膿性汗腺炎の原因は複雑で、完全には解明されていませんが、毛穴の詰まりが発症のきっかけとなることが分かっています。毛穴が何らかの理由で詰まると、毛包内の内容物が排出されなくなり、最終的には皮膚内で破裂して炎症を引き起こすと考えられています。

そのほか、遺伝的要因としては、γセクレターゼ遺伝子の異常が知られています。環境的要因としては喫煙や肥満などが挙げられます。これらの要因が複雑に絡み合うことで、化膿性汗腺炎の発症や悪化につながると考えられています。

遺伝的要因

遺伝的要因については、欧米患者の30~40%に家族歴があるという報告があります(家族性化膿性汗腺炎)。日本では2~3%とあまり多くはないとの報告もありますが、今後さらに検討が必要です。

環境的要因

環境的要因としては、主に喫煙と肥満がリスク因子として挙げられます。たばこに含まれるニコチンが毛穴の詰まりを引き起こす可能性が指摘されており、一方、肥満は皮膚への圧力や摩擦による刺激の増加、さらには炎症を引き起こす物質(TNFα)の産生増加につながり、症状を悪化させる要因となっています。

炎症はお尻や腋の下など衣服との摩擦が生じやすい部位に現れやすく、窮屈な衣服によって悪化しやすいことから、衣服による機械的刺激も要因の1つといわれています。特に女性の場合、月経周期や妊娠に伴って症状が変動することがあり、性ホルモンの関与も指摘されています。

症状

化膿性汗腺炎の症状は、通常、赤みや痛みを伴うしこりの形成から始まります。これらの症状は、お尻や腋の下、鼠径部、胸の下(乳房の下)などの部位に現れやすいのが特徴です。

病気が進行すると、しこりが多発したり拡大したりして、より広範囲に広がっていきます。さらに悪化すると、毛包内にがたまって膿瘍を形成したり、皮膚の下に膿を排出する空洞(瘻孔)ができたりすることがあります。症状がひどくなると、患部が痛くて動きづらくなったり、膿が衣服で汚れるのが気になったりすることで日常生活に支障が出てくることがあります。

この病気の特徴として、症状が持続的に現れることが一般的です。多くの場合、症状が治ったり再発したりを繰り返します。この過程で、皮膚が炎症を繰り返すことにより徐々に硬くなり、最終的には傷あと(瘢痕)や瘻孔が残るようになります。

化膿性汗腺炎がごくまれに、有棘細胞がんなどの皮膚がんに発展する可能性があります。症状が進行すると治療が難しくなるため、気になる症状が続く場合は、できるだけ早めに医療機関を受診することが重要です。

検査・診断

化膿性汗腺炎の診断は、主に問診と皮膚の詳細な診察によって行われます。お尻や腋の下などの好発部位を観察し、しこりや瘍といった特徴的な皮膚症状の有無を確認します。診断の基準として、半年間に2回以上これらの症状が繰り返し現れている場合、化膿性汗腺炎の可能性が高いと判断されます。

治療

化膿性汗腺炎の治療では、主に薬物療法と外科的治療が行われます。

薬物療法

薬物療法では主に抗菌薬を使用します。内服薬としてはクリンダマイシンやドキシサイクリン、外用薬としてはクリンダマイシンが治療に用いられます。これらの治療が効果を示さない場合には、生物学的製剤のアダリムマブやビメキズマブの注射薬が使用されます。

外科的治療

外科的治療は症状の重症度に応じて選択されます。瘍がある場合は、患部を切開して膿を排出する処置を行います。より重症の場合には、病変そのものを切除する手術が検討されます。症状が進行して広範囲に及ぶ場合には、患部の皮膚を広く切除し、体のほかの部分から健康な皮膚を移植する手術が実施されることもあります。

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