概要
反復性耳下腺炎は耳の下にある唾液を作る“耳下腺”が炎症を繰り返す病気です。特に6歳以下の小児に多くみられることから小児反復性耳下腺炎と呼ばれることもありますが、成人にも認められます。耳下腺と口の中をつなぐ唾液の通り道(導管)を口内の細菌が逆行して耳下腺に感染することなどが原因と考えられますが、明確な原因は分かっていません。反復性耳下腺炎を発症すると、年に数回、耳下腺の腫れや痛みなどを繰り返します。小児例は、一般的には成長とともに症状は治まります。症状も軽度なケースが多いため特別な治療を必要としないことが多いですが、症状が強い場合は痛み止めなどを用いた薬物療法が行われます。
原因
反復性耳下腺炎は、口の中の細菌が導管を通って耳下腺に入り込むことで発症すると考えられていますが、明らかな原因は特定されていません(2024年5月時点)。小児例では、耳下腺の生まれつきの異常、特に唾液の通る管(導管)の異常が推定されています。成人例では、唾石症、シェーグレン症候群、線維素性唾液管炎などが発症の要因になることがあります。
症状
反復性耳下腺炎を発症すると、年に数回程度、耳の周辺にある耳下腺が腫れて痛む症状が繰り返されるようになります。通常は片側の耳下腺全体の腫れが数日~数週間ほど続きます。発熱を伴うこともありますが、高熱が出ることはなく微熱で治まるケースがほとんどです。また、耳下腺の腫れや痛みも重度ではなく、軽度なケースが多いとされています。なお反復性耳下腺炎は、年齢を重ねると発症を繰り返す回数が自然と少なくなっていき、思春期頃には症状がみられなくなることが一般的です。成人の場合では、女性に多くみられます。
検査・診断
反復性耳下腺炎は、耳下腺の腫れや痛みを生じる耳下腺炎を繰り返すことから疑われます。
最初に発症した段階では、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)など耳下腺に腫れと痛みを引き起こすほかの病気との鑑別が難しく、再発を繰り返すことで反復性耳下腺炎が疑われます。
診察では、医師が見たり触ったりすることで耳下腺の腫れを確認し、症状や受診までの経過などを問診します。
さらに必要な場合は、以下のような検査が行われます。
血液検査
炎症の程度や原因となりうる疾患の特定や除外のために血液検査を行うことがあります。
画像検査
反復性耳下腺炎は、唾石症やシェーグレン症候群などの病気が要因で引き起こされる場合があります。また、耳下腺の腫れや導管拡張がみられることがあります。そのため、超音波、CT、MRIなどを用いた画像検査や、唾液腺造影検査が行われます。
治療
反復性耳下腺炎は、耳下腺炎を繰り返しますがそれぞれの症状は数日~数週間で改善することがほとんどです。痛みが強い場合は痛み止めを使用し、細菌感染が原因と考えられる場合は抗菌薬の投与が行われます。耳下腺炎を繰り返すと、耳下腺がダメージを受けやすくなるため、細菌感染が原因の場合はできるだけ早い段階で抗菌薬の使用を開始した方がよいとされています。また、口の中を清潔に保つことも大切です。
予防
反復性耳下腺炎ははっきりとした原因が分からないため、確立した予防法はないのが現状です。一方で、反復性耳下腺炎は口の中の細菌が導管を通って耳下腺に侵入することで発症するケースがあると考えられるため、口腔環境を整えて虫歯などの治療を行うことが発症の予防につながるとされています。また、唾石症、耳下腺腫瘍、シェーグレン症候群など別の病気が要因となっていることもあるため、これらの病気の治療をすることも大切です。
さらに、反復性耳下腺炎は、免疫機能が低下すると発症しやすくなることが知られています。日頃から食生活や睡眠などの生活習慣を整えることも発症の予防となります。
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