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「生涯、一研修医として臨床に携わりたい」現場第一主義で患者さんに向き合う生形之男先生のストーリー

「生涯、一研修医として臨床に携わりたい」現場第一主義で患者さんに向き合う生形之男先生のストーリー
生形 之男 先生

複十字病院 消化器外科 副院長

生形 之男 先生

目次
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この記事の最終更新は2019年04月26日です。

記事1『大腸がんの早期発見・診断のために―原因からみる予防・検診の重要性』では大腸がんの原因や症状、予防法、記事2『大腸がんの検査・治療(内視鏡治療・外科手術)における複十字病院の取り組み』では具体的な検査と治療の方法と流れについて、複十字病院副院長の生形之男先生にお話しいただきました。引き続き本記事では、生形先生の幼少期、医師としての経験談、消化器外科医としての今後の目標についてお伺いしました。

 

東京都杉並区、吉祥寺の近くで生まれ育った私は、非常に自由奔放な少年で、気ままな少年時代を過ごしました。高校生の半ばくらいまでは、将来の目標を明確にせず、興味のあることに手あたり次第に手を出しては没頭していました。

そのような生活を続けているうちに、ふと、「このままでよいのだろうか」という思いが芽生え始めました。周囲には大学受験や将来の目標のために勉強に取り組む友人もいたため、少しばかり影響を受けたのかもしれません。そう思ったときはすでに手遅れで2浪しました。

私の父親は、消化器外科医でした。父の姿をみて、同じ道に進もうと大学医学部を志望したところ、遊んでばかりだった少年が一転して医学部を目指すというものですから、周囲からは冗談を言っているのだろうと思われてしまいました。けれども、一念発起して勉強した結果、晴れて杏林大学医学部に進学しました。入学後は、ボート部に入部し部活に明け暮れていました。

大学を卒業後、小児外科や救急科に進むことも考えましたが、父と同じ消化器外科の道に進みました。当時の杏林大学外科教授が、父親の先輩にあたる先生であったことに、何か不思議な縁を感じたからです。

消化器外科医となって間もない頃、大学病院で勤務していたときは、2名の主任教授のもとで、それぞれ異なる仕事をさせていただきました。新しく覚えることばかりで忙しい毎日でしたが、多くの経験を積むことができました。1997年に複十字病院に着任してからは、当時の上司であった谷先生に、徹底的に手術手技を教えていただきました。谷先生に教えていただいたことは、今でも私の頭のなかに全て刻み込まれています。

私がこれまでに複十字病院で治療を行ってきた患者さんのなかに、4つの別々のがんを発症した方がいらっしゃいました。

その患者さんは、最初に大腸がんを発症し、私が手術を行いました。手術は成功し、その後退院して外来通院を続けていましたが、ある日胃がんを発症していることが判明しました。手術が可能な段階だったので、私は胃がんに対する手術を行いました。そして、胃がんの手術後の経過観察中、驚くべきことに今度は肝臓がんを発症され、3回目の手術を実施したものの、しばらくしてから今度は食道がんを発症されました。食道がんがみつかるまでの間、患者さんには定期的に通院していただきながらさまざまな検査を行っていましたが、がんを早期に発見することができず、非常に悔しく思いました。

4つのがんは全て別の時期に発症したがんでした。この患者さんのように、4種類のがんを発症するケースは非常に珍しいケースです。これだけでもかなり印象に残っているのですが、患者さんのお人柄も印象的でした。この患者さんはとても前向きな方で、手術を何度受けても、最後まで積極的に治療に向き合っていました。常に明るく振る舞っていたその患者さんのことは、これからもずっと忘れないでしょう。

この患者さんとの出会いがあってから、術後のフォローアップはより慎重に行う必要があること、がんが治せる時代になり、2個目・3個目のがんを発症する患者さんもいるということを強く意識するようになりました。

現在は、副院長として臨床以外の仕事をする時間も増えてきましたが、私は生涯一研修医の気持ちで臨床に携わっていきたいと思っています。自分で患者さんを受け持ったり、当直を引き受けたりして、現場第一主義を貫くつもりです。

これからも臨床に関わりたいと考える理由は、今まで外科医として数多くの先輩の背中をみてきたからです。先輩医師のなかには、60歳を超えても当直を続ける小児外科医もいらっしゃいました。私もその先輩のような現場の医師でいたいですし、実際にこれからも臨床に関わり続けたいと思っています。

日々の診療でもっとも意識しているのは、一人ひとりの患者さんのお話に耳を傾け、その訴えを真摯に受け止めることです。

若い頃は、人の痛みは他者には理解できないものであり、痛みを訴える患者さんがどのくらい痛いと感じているのかは、実際にはわからないものだと思っていました。しかし、患者さんの話をきちんと聴けば、痛みそのものを理解することはできなくても、痛みや苦しみに対する対処法を一つひとつ丁寧に考えることができます。患者さんの思いを真摯に受け止めることは、外科医として現場に携わるうえで、手術で患者さんを治すことと並んで重要な医療行為ではないでしょうか。

私はこれからも、患者さんのお話をしっかりと聴く医師であり続けたいです。

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