年々罹患者の増加が続く大腸がん。部位別がん死亡数をみても男女共に上位を占め、40歳代以降でリスクが高まります。早期発見・早期治療によって治る可能性が高い病気であるものの、40歳以上の検診受診率は5割未満にとどまっているのが現状です。浅ノ川総合病院 内科部長・内視鏡センター長・健診センター長の浜野 直通先生は、大腸がんの早期発見のため、1人でも多くの方に検診を受けてほしいと強く訴えていらっしゃいます。今回は浜野先生に、大腸がんの早期発見と検診の重要性についてお話を伺いました。
大腸がんとは大腸に発生した悪性腫瘍のことで、1990年からの30年間で罹患数、死亡数ともに増加の一途をたどっています。主な要因として考えられるのは高齢化と食生活の欧米化です。初期にはほとんど症状がなく、進行すると症状が現れ始めますが、がんの発生箇所により病態や症状、重症度が異なります。また、検診によって早期発見・早期治療できれば9割以上が完治します。
大腸がんに限らず、がんは正常な細胞から発生した異常な細胞の塊で、年齢とともに増殖を続けます。つまり、年齢が上がることに伴ってリスクが高まると考えられます。
そのほか、一般的には以下のような要因があると考えられています。
食生活の欧米化(高脂肪・低繊維)による腸内細菌の変化や喫煙、過度の飲酒が挙げられます。これら食生活の変化や嗜好品の摂取からくる肥満・糖尿病などがリスク因子になっていると考えられます。
遺伝的要因もゼロではないといわれています。世界的にみれば人種による違いもありますし、国内でも都道府県別にみると日本列島の北部や南部に多いという傾向があります。
食生活を含めた環境的要因、遺伝的要因については調査・研究が進められており、解明されれば将来的には予防的アプローチも可能になると期待されます。
早期の大腸がんでは、ほとんど症状はありません。進行すると症状が現れますが、その現れ方はがんの発生箇所によって異なります。
大腸の奥のほう(上行結腸・横行結腸・盲腸)は内部が比較的広く、便がスムーズに通りやすいため大量出血が起こりにくく、がんが大きくなるまで気付かない傾向があります。特徴としては慢性的に少量の出血が続き、貧血の症状が現れることがあります。
逆に肛門に近い直腸やS状結腸はカーブが急であるため、がんができると便が引っかかりやすくなり、こすれて大量に出血したり便が細くなったりするといった症状が現れます。そのほか貧血、便秘/下痢、腹痛、お腹の張りといった症状もみられます。
臨床進行度別 5年相対生存率*1をみると、限局がん*2では9割以上、領域がん*3でも7割以上と、生存率は近年着実に進歩してきています。しかし、遠隔転移がん*4については2割未満と、現代医学をもってしても厳しい状況です。現状では、遅くとも領域がんの段階までに見つけなければ長期の生存は望めません。だからこそ、いかに早期発見できるかがカギになるといえます。
*1相対生存率:がんと診断された人の生命をどのくらいの確率で救えるのかを示す指標の1つ。標準的には5年相対生存率が用いられる。
*2限局がん:発生した部位のみのがん
*3領域がん:リンパ節にまで転移しているがん
*4遠隔転移がん:ほかの臓器などにまで転移しているがん
上述のとおり、早期の大腸がんではほとんど症状がないため、気付いたときにはある程度進行してしまっているというのが現実です。そのため、リスクが高まる40歳を迎えたら、まず便潜血検査を受けることをおすすめします。簡単な検査で、大腸がんの早期発見が期待できます。しかし日本では、40~69歳の人の大腸がん検診の受診率は5割未満にとどまっています。これには、便を採取して提出することへの心理的抵抗感や内視鏡検査への恐怖心があるからだと考えられます。
また、大腸がん罹患者が増加しているという事実があまり知られていないことも受診率が低い要因の1つかもしれません。以前は胃がんや肺がんの罹患者が多かったため、がんというとこれらのイメージが強いのでしょう。しかし実際、国立がん研究センターがん情報サービス「がん統計」によれば、大腸がんはがん罹患数で1位(2018年)、死亡数では肺がんに次いで2位(2019年)という結果が出ています。
当院の健診センターでは、大腸がん検査を日帰りドックA/Bおよび1泊2日ドックA/Bのコース内で行っています。
コース内容について、詳細はホームページをご覧ください。
日帰り、1泊2日ドックに含まれている検査です。
便の表面を採便用の棒でこすり、通常2日間分の便を採取し持参していただきます。
大腸がんやポリープがあると、便が腸内を移動する際にこすれて便に血液が付着しますので、便に血液が混じっていればがんやポリープがある可能性が高まります。
厳密には便に混じっている血液ではなく、血液中のヒトヘモグロビンをみる検査で、当院ではフェリチンという鉄の成分を混ぜて感度が上がるよう工夫しています。
便潜血検査で異常が認められれば、大腸内視鏡検査などの精密検査を受けていただくことになります。この場合、保険診療の対象になります。
1泊2日ドックにのみ含まれている検査です。
この検査は肛門からS状結腸までをみる検査で、食事制限などがなく浣腸のみで実施可能なため、大腸内視鏡検査に比べて簡単に実施できます。ただし、ポリープなど異常が認められた場合、改めて全大腸内視鏡検査が必要になります。
【費用について】
当院における検診の費用は下記のとおりです。
【大腸がん検診のメリットとデメリット】
大腸がんに限ったことではありませんが、がん検診には病気の早期発見・治療が可能になる、また異常がなければ安心して過ごせるといったメリットがあります。
一方で、がん検診の結果は100%とはいえず、がんの場所や種類によっては便潜血検査で偽陰性(本来は陽性なのに見逃してしまう)または偽陽性(がんがないのに要精密検査という結果が出る)となる可能性があります。また、大腸内視鏡検査には出血や穿孔(胃腸に穴が開くこと)のリスクもあります。ただし、大腸内視鏡検査に伴うこれらの発生頻度は0.011%(9,091人に1名の割合)*と極めてまれです。
検診にはメリットとデメリットがあることを知ったうえで受診してください。
*2008年~2012年の全国集計に基づく
便潜血検査で要精密検査となり、大腸内視鏡検査を受けて異常が見つからなければしばらくは安心と考えていただいてよいでしょう。心配な方は担当医と相談のうえ、内視鏡検査を受けておくとさらに安心です。
大腸がんは早期に発見できれば治る可能性が高い病気です。安心を得るためにも、早いうちに大腸内視鏡検査などの精密な検査を受けておくことをおすすめします。
当院では、ご希望に応じて検査結果の詳細や今後の生活において気を付けるべきことなどを医師から直接ご説明する時間を設けています。ご質問にも丁寧にお答えしていますので、遠慮なくお尋ねください。
PET-CT検査とは、PET*装置とCT装置を併用することで腫瘍の位置や大きさを鮮明に撮影できる検査です。従来の検査法で診断が難しかった部位の「がん」やごく小さな「がん」の場所や性質、状態などを詳細に調べるために利用されます。当院では全例で「2回撮影法」を導入し、「がん」の早期発見、適切な治療に貢献します。一度で全身をチェックでき、体への負担がとても少ないのが特徴です。
検査の流れとしては、まず検査のための薬を静脈注射し、1時間程度安静にします。薬が全身に行き渡ったらPET装置のベッドに横になり撮影を行います。撮影時間は20~30分程度です。当院では2回撮影を行いますので、休憩を挟み10~15分の追加撮影を行います。これにより1回目の撮影では検出されなかった病変が検出され、1回目と2回目の差を診ることで悪性度の判定も評価できます。
この検査では放射性薬剤を用いるため、わずかながら放射線被曝があります(人体には害がないとされるレベルの線量です)。また、ブドウ糖代謝などの機能から異常の有無を判断するため、検査前5~6時間は絶食し、糖分を含む飲み物も口にできません。
糖尿病の方や普段から血糖値が高い方の場合、検査の精度に影響を及ぼす可能性があるため事前にご相談ください。
PET-CT検査を含む検診の費用は下記のとおりです。
*PET : positron emission tomography (陽電子放出断層撮影)の略。
医療法人社団浅ノ川 浅ノ川総合病院 内科部長、内視鏡センター長、健診センター長
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