だいたいこつかんこつきゅういんぴんじめんと

大腿骨寛骨臼インピンジメント

最終更新日:
2020年04月03日
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2020/04/03
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概要

大腿骨寛骨臼(だいたいこつかんこつきゅう)インピンジメントとは、股関節を構成する大腿骨の“大腿骨頭(こっとう)”と寛骨(骨盤の骨)の“寛骨臼”が繰り返し衝突することで、股関節内部や周辺の組織にダメージが加わる病態のことです。股関節インピンジメント症候群と呼ばれることもあります。

股関節はほかの関節と比べ、動く範囲が広く大きな力がかかることが特徴です。股関節は、丸い球状の“大腿骨頭”とそれを包み込むような“寛骨臼”で形成されますが、この両者の間には体重がかかったとき、歩行したときなどの衝撃をやわらげるため“関節軟骨”と呼ばれる軟らかい組織が存在しています。また、寛骨臼の縁には大腿骨頭に吸盤のように張り付くことで股関節を安定させる“関節唇(かんせつしん)”と呼ばれる軟部組織が存在します。

大腿骨寛骨臼インピンジメントは股関節を伸ばしたり、しゃがみ込むような姿勢を繰り返したりすることによって、関節軟骨や関節唇に繰り返しダメージが生じることが原因で発症すると考えられています。重症化すると軟骨が変性し疼痛が強くなり、日常生活動作に支障が生じることも少なくありません。しかし、股関節に負担がかかる運動や動作を繰り返すと全ての人が大腿骨寛骨臼インピンジメントを発症するわけではなく、この病態を発症するケースの多くは、大腿骨頭や寛骨臼の形態的な異常があるとされています。

原因

大腿骨寛骨臼インピンジメントは、股関節を繰り返し過剰に屈曲させるスポーツをしたり、しゃがむ・あぐらをかくといった姿勢を繰り返したりすることによって引き起こされます。

しかし、全ての人がこの病態を発症するのではなく、股関節の構造の異常が背景にあることがほとんどです。具体的には、大腿骨頭や寛骨臼の一部が出っ張っていることにより関節が動くたびに関節軟骨や関節唇に過度な力学的ストレスが加わることが原因と考えられています。成長期の過度なスポーツ活動なども形態的な異常を引き起こす原因のひとつと考えられています。

大腿骨寛骨臼インピンジメントを引き起こす大腿骨頭や寛骨臼の形態的な異常には次の二つのタイプがあります。

カム型

寛骨臼の形態は正常であるものの大腿骨頭の一部が出っ張っているため、股関節を動かすたび、その出っ張りが関節軟骨や関節唇に擦れるようにダメージを与えるタイプのものです。

どのような原因で大腿骨頭の形態的な異常が引き起こされるか明確には解明されていませんが、成長期の過度なスポーツ活動が原因のひとつと推察されます。男性に比較的多く発症するとされています。

ピンサー型

大腿骨頭の形態は正常であるものの、寛骨臼が大腿骨頭を覆う部分が過剰であるため、関節を動かすたびに寛骨臼の縁と大腿骨頭が衝突を引き起こし、関節唇にダメージを与えるタイプのものです。

ミックス型

上記1と2の合わさったタイプです。

症状

大腿骨寛骨臼インピンジメントを発症すると、股関節を動かしたときに痛み、引っかかり感、クリック音(コリっという関節音)などを自覚するようになります。痛みは股関節を屈曲したときに強くなり、逆に安静時や通常歩行には支障がないことも多いです。場合によっては座位で鈍痛や重苦しさを感じることもあります。

進行すると股関節を動かしていないときでも痛みが生じるようになり、軟骨のダメージが進み変形性股関節症へと進展します。

検査・診断

大腿骨寛骨臼インピンジメントが疑われた際は次のような検査が行われます。

X線検査

股関節の痛みを訴えて医療機関を受診した場合、第一に行われるのはX線検査です。この検査では、股関節の状態を簡易的に観察することができます。

しかし、大腿骨寛骨臼インピンジメントにおける形態異常は微小であることが多く、X線画像では見逃されるケースも少なくありません。

CT、MRI検査

股関節の状態をさらに詳しく調べるにはCTやMRI検査が必要です。特にMRI検査では関節軟骨や関節唇の描出を行うことができるため、大腿骨寛骨臼インピンジメントの診断において欠かせない検査といえます。

関節造影検査

関節内に造影剤を注入してX線やCT撮影を行う検査です。関節軟骨や関節唇の状態を評価します。同時にキシロカイン(局所麻酔剤)を注入することによりどの程度痛みが取れるかを評価することができます。

関節鏡検査

股関節の内部に関節鏡(内視鏡の一種)を挿入し、股関節の状態を詳しく観察する検査です。皮膚の一部を切開して関節鏡を挿入するため体への負担が大きくなりますが、手術治療が必要となるような重症なケースでは治療方針を決めるうえでも重要な検査です。 

治療

大腿骨寛骨臼インピンジメントの多くは、股関節に負担を与える運動や動作を避け、痛み止めの内服や炎症を抑える薬剤を直接関節内に注射するといった保存的な治療により、症状が改善することがあります。リハビリテーションも重要で特に腰や骨盤の柔軟性を獲得することが有効とされています。

しかし、股関節の変形が強く、痛みや股関節の動かしにくさなどによって日常生活に支障をきたしているようなケースでは、手術によって股関節の変形を修正する治療が行われることも少なくありません。近年では関節鏡を用いた身体的負担の少ない手術が多く行われます。軟骨のダメージが強くすでに変形性関節症へ移行している場合にはダメージを受けた大腿骨頭や寛骨臼を人工関節に入れ替える大掛かりな治療が必要になることがあります。

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