概要
子宮発育不全とは、子宮が本来の役割を果たせない状態にあり、それが形状的な発育の問題である場合を指します。子宮の本来の役割とは、最終的には「妊娠と出産を行う」ことになり、そのために必要なものとして正常周期の月経も加わります。このため、子宮発育不全の状態では、妊娠や出産が正常と考えられる確率としては行えず、多くの場合には正常周期の月経もこない、ということになります。
ただし、子宮発育不全症という病名は、病名としてきちんと使用されているものではありません。そのため、はっきりとした診断基準もなく、日本にどの程度、このような状況の女性がいるかどうかもわかっていません。
通常、「子宮の発育不全」というと、子宮が正常に比べて小さいことや、子宮内膜が充分な厚さになれず、結果的に不妊症や流産となってしまう場合を考えます。
原因
主な原因として、女性ホルモンの産生が不足している場合と、子宮の形状が特殊(子宮奇形など)な場合が挙げられます。
女性ホルモンは、脳と卵巣で分泌されるホルモンによって調整されています。そのため、これらいずれかの臓器に異常があると女性ホルモンの分泌が不足し、子宮にも影響を与えてしまうことがあります。子宮奇形は、生まれつき子宮の形態に異常があるため、本来必要な子宮の役割を充分に果たせないことになります。
症状
普段の生活のなかで強く感じられるような自覚症状はありません。月経は来るけれど毎回の量がかなり少なかったり、生理不順または無月経であったりといった月経異常は起こりうる症状のひとつです。また、子宮の形状に異常があると、月経痛が通常よりも強い場合があります。
そのほかにも、子宮の最終的な役割である「妊娠と出産」がうまくいかないことは多くみられます。ただし、その程度には個人差があるため、妊娠はできるけれど習慣的に流産を繰り返してしまうケースや、妊娠自体が全然できない、といったケースも認められます。しかし、すべての方が妊娠、出産が不可能というわけではありません。子宮奇形が生まれつきあっても、その種類と程度によっては妊娠、出産が可能な方もいらっしゃいます。手術を受けることで、ほぼ正常な形状に戻すことができる場合もあります。
検査・診断
子宮の形をみるためには、一般的に内診と経腟超音波検査が行われ、これらだけでも多くの子宮奇形や子宮内膜異常が診断できます。ただし、これらの検査だけではわかりにくい場合や、より詳細まで知りたい場合には骨盤MRI検査(磁気を使い、体の断面を写す検査)が実施されることもあります。
また、子宮の内部は普段くっついているため超音波検査やMRI検査でも詳しく観察することが難しい場合があります。その際には、ソノヒステログラフィー(子宮内に検査用薬剤を注入してレントゲン検査を行うことで、子宮内の形状を詳細に観察する検査)が必要になります。女性ホルモンの検査には、主に血液検査が用いられます。
治療
生まれつきの原因がある場合、現在では有効かつ根本的な治療方法がほとんどありません。しかし、子宮奇形の種類と程度によっては、手術を行うことにより子宮の形状を正常に近づけることができます。
後天性(生まれつきではなく生後の影響によるもの)の場合は、主にホルモン異常が原因であることが考えられるため、ホルモン補充療法が検討されます。ホルモン補充療法は、早い段階(思春期以前など)で開始することで、子宮の発育不全を最小限に防げる可能性があります。
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