治療
従来はそれぞれの症状における対症療法が治療の中心でしたが、近年では特に治療効果が高い“疾患修飾療法”が多く開発され、いくつかの薬はすでに一般的に使用できるようになっています。特に先進的な核酸医薬やタンパク質安定化薬は、早期に使用することで病気の予後を改善する高い治療効果が見込めます。
しかし、これらの新しい治療法でも進行した症状を改善することは難しい場合が多いです。さらに、次世代の核酸医薬、ゲノム編集治療、抗体治療などの研究も進んでおり、将来的にはさらに高い効果を持つ多くの新規治療法が選択できることが期待されています。
また、それぞれの病態に応じた“対症療法”も併せて実施されます。
肝移植療法
薬物療法(疾患修飾療法)の発展により、現在新しく肝移植療法が行われることはなくなりました。以前は、トランスサイレチンは主に肝臓で作られることから、肝臓を移植することで血液中の異常なトランスサイレチン濃度が速やかに減少し、進行を抑える効果が期待されるため、若年で発症早期の患者さんを対象に肝移植療法が実施されてきました。病初期に肝移植を受けられた患者さんは長期間症状の進行が抑制されていますが、目の症状は移植後も進行すること、一部の患者さんでは心症状も進行することが問題となっています。
タンパク質安定化剤(疾患修飾療法)
トランスサイレチンは、体内で4つが一塊となり四量体を形成していますが、アミロイドとなる前にこの四量体が1つ1つバラバラとなってしまうことが知られています。そのため、薬でこのトランスサイレチン四量体を安定化しバラバラにならないようにする“タンパク質安定化剤(トランスサイレチン四量体安定化剤)”が開発されました。1日1回の内服薬による治療法です。病初期により高い効果が期待できますので、早期診断、早期治療が極めて重要です。心臓の病態に対する効果も近年確認されました。
遺伝子サイレンシング療法(疾患修飾療法)
遺伝子サイレイシング療法(siRNA核酸治療薬)とは、もともと生物に備わっているRNA干渉(RNAi)を利用し、人工的にトランスサイレチン遺伝子の産生を抑えるsiRNA薬による先進的な核酸医薬による治療法です。2019年に日本で使用可能となりました。この治療法により、肝臓でのトランスサイレチンが産生されにくくなるため、強いアミロイド抑制効果と症状の進行抑制が期待できます。現在は3週間に1回点滴治療を継続する必要がありますが、次世代の核酸医薬では治療を受ける期間を延ばす効果も期待されています。この治療法でも進行した病気の症状に対する効果は限られていますので、早期診断、早期治療がとても重要です。
医師の方へ
「家族性アミロイドポリニューロパチー」を登録すると、新着の情報をお知らせします