概要
寒冷蕁麻疹とは、体が低温の外気や冷たい物体に触れることで生じる蕁麻疹で、刺激誘発型蕁麻疹*に分類されます。
寒冷刺激が加わると、皮膚内のマスト細胞(肥満細胞)からヒスタミンという物質が放出されます。ヒスタミンは皮膚の毛細血管を拡張させるため、血流量が増加して、血液中の血漿成分が血管の外に漏れ出ます。これにより皮膚の一部が赤く膨れ上がる(膨疹)ほか、神経を刺激するためかゆみも伴います。
寒冷蕁麻疹は、体に寒冷刺激が加わることでその部位のみに蕁麻疹が生じる“局所性寒冷蕁麻疹”と、体が冷えることで全身に蕁麻疹が生じる“全身性寒冷蕁麻疹”があります。
一般的に症状は数時間〜24時間以内に消えますが、再び寒冷刺激を受けることで症状が誘発されます。再発を防ぐためには、原因となる寒冷刺激を避けることが重要です。
*刺激誘発型蕁麻疹:特定の刺激により引き起こされる蕁麻疹。食べ物によるアレルギー性の蕁麻疹、寒冷、温熱などの物理刺激による蕁麻疹などが含まれる。
原因
寒冷蕁麻疹の原因はまだ詳しく解明されていませんが、皮膚に寒冷刺激が加わることでマスト細胞からヒスタミンが大量に分泌され、赤みやかゆみを伴う膨疹が現れると考えられています。
局所性の場合は、氷や冷水に触れたり冷風に当たったりすることが刺激となり、冷却された部位に一致して蕁麻疹が現れます。全身性の場合は、冷たい外気に触れたりエアコンの効いた部屋に入ったりするほか、運動や入浴後の体の冷えによって蕁麻疹が生じます。また、全身性ではまれに遺伝が関与しているケースもあります(家族性寒冷自己炎症性症候群*)。
*家族性寒冷自己炎症性症候群:寒冷刺激によって免疫系細胞からサイトカインと呼ばれるタンパク質が多く分泌され、新生児・乳児期から蕁麻疹様の発疹(ほっしん)や発熱などが生じる。遺伝子異常が原因と考えられており、重症例では症状が持続することもある。
症状
寒冷蕁麻疹は症状が現れる範囲によって局所性と全身性に分けられますが、ほとんどが局所性だといわれています。いずれも原因となる寒冷刺激を受けた直後から数十分ほどで症状が現れ、数時間〜24時間以内にあとを残さず消失します。
局所性寒冷蕁麻疹の症状
局所性では、水や氷など冷たいものに触れた部位に蕁麻疹が現れます。一般的に、赤みやかゆみを伴う膨疹が円形状に現れたり、膨疹同士がくっついて地図状に広がったりします。しかし、中にはかゆみだけ、赤みだけが現れる場合や、痛みを伴う場合もあります。
全身性寒冷蕁麻疹の症状
全身性では、体が冷えることで全身に蕁麻疹が現れます。局所性と異なり、小豆大ほどの赤みや膨疹が首の周囲や背中、腕、脚、腹部を中心として全身に広がることが特徴です。
検査・診断
問診で症状が現れたときの状況などを確認して蕁麻疹の原因を探るほか、必要に応じて血液検査を行います。
さらに、寒冷蕁麻疹が疑われる場合は、原因を特定するために皮膚に寒冷刺激を与えて症状が誘発されるかを確認する“寒冷負荷試験”などが行われます。
治療
寒冷蕁麻疹の治療では薬物療法が行われます。
赤みやかゆみ、膨疹に対しては、抗ヒスタミン薬を用いた薬物療法が行われます。寒冷蕁麻疹の原因となる刺激を全て避けることは困難なこともあるため、症状をコントロールする目的で一定期間抗ヒスタミン薬を内服することを指導されることがあります。
このほか、かゆみが強く患部をかいてしまう場合などは、必要に応じて副腎皮質ステロイド薬の外用薬を使用することもあります。また、難治性の場合は抗IgE抗体と呼ばれる皮下注射薬による治療が行われることもあります。
寒冷蕁麻疹そのものの治療としては、繰り返しまたは単回の寒冷負荷を加えることで耐性を獲得できるとの報告があります。
予防
寒冷蕁麻疹を引き起こす寒冷刺激を避け、症状の悪化や再発を予防することが重要です。
暖房で室温を調整したり、蕁麻疹が出現しやすい部位に重ね着をしたりするとよいでしょう。また、冷たいフローリングの上を素足で歩くことでも寒冷蕁麻疹が現れることがあるため、室内ではスリッパや靴下を履くといった工夫を検討しましょう。
寒冷蕁麻疹は気温の低い冬場だけでなく、夏場にもクーラーが強く効いた部屋に入ることなどで症状が誘発されることがあるため、季節を問わず注意が必要です。
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