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小児尿路結石

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概要

小児尿路結石とは、小児(おおむね15歳ごろまでの子ども)が発症する尿路結石を指します。尿路結石は、尿路(腎臓、尿管、膀胱、尿道)に“結石”と呼ばれる石のような塊ができる病気です。

多くは成人に発症し、小児における発症は、尿路結石全体の1~3%程度といわれています。尿路結石の患者数は以前と比べると増加しており、小児での発症も増加しています。

尿路結石では、尿に含まれるシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸などのミネラル分が結晶となり、結石がつくられます。食習慣などが発症の要因になると考えられていますが、ほかの病気や尿路感染、薬剤が原因となることもあります。小児の場合では、腎臓や尿路の生まれつきの異常、代謝の異常などが背景となって発症する場合が多くみられます。

腹痛や頻尿、血尿などの症状が特徴的ですが、痛みを訴えることができない年齢の場合、哺乳量の低下(食欲の低下)、機嫌が悪い、嘔吐、発熱などの行動や症状がみられることもあります。

治療としては、痛みへの対処を行いながら結石の自然な排出を促す“保存的な治療”が行われるほか、体の外側から衝撃波を与えて結石を壊す方法、内視鏡を用いて結石を壊す方法などによる“積極的な治療”が行われることがあります。腎臓や尿路の異常、代謝異常などが背景にある場合は、その治療も併せて行われます。

原因

尿中に含まれるシュウ酸カルシウム、リン酸カルシウム、尿酸などのミネラル分が過剰な状態になると結晶となり、次第に結石がつくられます。食習慣の欧米化などがその要因として考えられており、たとえば、動物性脂肪を多く含む食事は尿中のシュウ酸カルシウムを増加させ、動物性たんぱく質を多く含む食事は尿酸を増加させます。なお、カルシウムは十分に摂取することで尿中のシュウ酸カルシウムの増加を抑えるといわれています。そのほか、尿路感染、薬剤が原因となることがあります。

一方で、小児の尿路結石は、生まれつきの要因や薬剤による影響で発症することが多いといわれています。腎臓や尿路の異常(水腎症尿管瘤(にょうかんりゅう)など)、アデニンやシスチンなどの代謝・再吸収の異常、ステロイド薬の内服による代謝の異常が半数以上にみられるといわれています。

水腎症は、小児尿路結石の原因の1つとして挙げられます。尿をうまく排泄することができず、腎臓が腫れたり機能低下を起こしたりする病気です。小児では生まれつき尿管が狭いことで発症する場合が多くみられます。尿を排泄できないことで結石を生じる原因となります。一方で、尿路結石により尿を排泄できず、その結果として水腎症を発症することもあります。

症状

尿路結石では、特徴的な症状として、腹痛や頻尿、血尿などの症状がみられます。結石の場所により、痛みが生じる場所や現れる症状が異なります。また、血尿は見た目からでは判断できないこともあります。

腎臓に結石がある場合(腎結石)は無症状であることも多く、腰に鈍い痛みが生じるだけのこともあります。尿管に結石がある場合は、その場所により腰から下腹部までに痛みが現れます。尿管の下部の結石では、痛みのほかに吐き気、嘔吐、便秘などの消化器症状が現れることもあります。そのほか、結石が膀胱の近くにある場合は、頻尿や残尿感などの症状がみられることがあります。

また、小児では年齢によっては痛みなどの自覚症状を詳しく訴えることができないことがあります。その場合、哺乳量低下(食欲低下)、機嫌が悪い、嘔吐、発熱などの行動や症状がみられることもあります。

検査・診断

小児尿路結石が疑われた際には、問診により自覚症状、原因となる病気や薬剤服用の有無などを確認します。そのほか、画像検査や尿検査、血液検査などが行われます。

問診

問診では、痛みの場所や痛み方、排尿に関する症状などの自覚症状のほか、原因となる病気や先天的な異常の有無、薬剤の服用の有無、血縁者内で尿路結石や腎臓の病気を発症した方の有無などを確認します。小児では自覚症状を詳しく説明することが難しいこともあります。哺乳量低下(食欲低下)、機嫌の悪さや嘔吐、発熱など、直接尿路結石に関わりがなさそうな行動や症状でも、付き添いの養育者が説明できるようにするとよいでしょう。

画像検査

成人の尿路結石では、CTによる検査が行われることが一般的です。これにより、結石の位置や大きさ、尿管などの状態を確認します。一方で、小児の検査では放射線の影響を十分に考慮する必要があり、放射線を用いない超音波検査が行われることが多くなります。超音波検査では水腎症の有無や程度を確認することも可能です。

尿検査、血液検査

尿検査では、血尿の有無、結石の成分である結晶の有無のほか、尿路感染が生じていないかを確認することができます。血液検査では、炎症の有無、腎臓の機能の確認などを行います。

治療

尿路結石の治療としては、痛みへの対処を行いながら結石の自然な排出を促す保存的な治療、または結石を壊して取り除く積極的な治療(手術など)が行われます。腎臓や尿路の異常、代謝異常などが背景にある場合には、その治療も併せて行われます

保存的な治療

小児尿路結石では、原因となる病気などがなく、症状の経過が良好な場合には保存的な治療を選択することが望ましいとされています。また、小児は成人に比べて尿管が柔軟なため、結石が自然に排出される割合も高いといわれています。

保存的な治療では、鎮痛薬などにより痛みの症状を緩和させながら、水分を多く摂取することで結石の排出を促します。結石が排出されやすくする薬を使用することもあります。

積極的な治療

痛みや嘔吐などの症状が強い場合や、結石が大きい場合、腎臓の状態が悪い場合などには積極的な治療が検討されます。結石を壊す方法はいくつかあり、結石の場所や状態などに合わせて選択されます。

成人の場合は外来での処置が可能な方法でも、小児の場合は入院のうえ全身麻酔が必要になります。また、小児の体格に合わせた医療機器が必要となるため、小児の麻酔管理や尿路結石治療に実績のある施設での実施が望ましいでしょう。

体外衝撃波砕石術(ESWL)

体の外から衝撃波を当てることで、結石を壊す方法です。成人の場合は麻酔の必要はありませんが、小児では全身麻酔のうえ行う必要があります。10mm未満の尿管の結石に対して検討される方法です。

経尿道的腎尿管砕石術(TUL/URS)

尿道から内視鏡を挿入し、結石の状態を観察しながらレーザーで壊す方法です。壊した結石を取り出すことができます。尿道や尿管の入り口の大きさには個人差があり、適切な機器を選択する必要があります。尿管の入り口が狭い場合などには、複数回の手術が必要になることもあります。

経皮的腎尿管砕石術(PNL/PCNL)

背中から腎臓にアクセスして、内視鏡を直接腎臓に挿入し結石を壊す方法です。20mm以上の大きな腎結石などに対して選択されます。経尿道的腎尿管砕石術と同様に、レーザーで結石を壊して取り出すことができます。経尿道的腎尿管砕石術と組み合わせて行うこともあります。

原因となる病気の治療

小児の尿路結石では、生まれつきの腎臓や尿路の異常、代謝の異常などが原因となる場合が多くみられます。その場合は、尿路結石への治療と並行して、原因となる病気や異常への治療も行われます。

たとえば、尿の流れが悪くなることで結石が生じている場合には、尿の流れを改善させるための手術が行われます。なお、水腎症は軽症の場合は自然に治癒することもあるため、腎臓の機能低下などがみられない場合は経過観察を行います。

そのほか、尿路感染が原因となっている場合には、感染に対する治療として抗菌薬が使用されることがあります。

予防

小児の尿路結石では、生まれつきの腎臓や尿路、代謝の異常が原因となっていることも多く、その場合はそれぞれの状態に応じた再発防止策を立てます。一方で、成人と同様に食習慣の欧米化により尿路結石を生じる小児も増えているといわれています。適切な食事により栄養を摂取すること、水を十分に飲むこと、適度な運動を行うことにより、尿路結石の発症の予防に努めることも大切です。

また、尿路結石は再発が多い病気です。結石を取り除いた後も、その成分を分析して医師の指導のもとで再発予防を行う必要があります。適切な食事、十分な水分摂取、適度な運動は再発予防としても重要です。

最終更新日:
2025年11月25日
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2025/11/25
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