かんとんじかく

嵌頓痔核

監修:

概要

嵌頓痔核(かんとんじかく)とは、以前からあった核(いぼ痔)が排便時などに肛門(こうもん)の外に出て、肛門括約筋で締め付けられて膨張し、自然に戻ることができずに急激に腫れあがった状態を指します。

通常の痔核(内痔核外痔核)では激しい痛みを伴わないことが多いとされていますが、嵌頓痔核では耐え難いほどの痛みが生じることが特徴です。治療としては、まず痛みを緩和し、腫れを引かせることが優先されます。一方、痛みや腫れが激しく出血が持続する場合や、日常生活での支障が大きい場合には手術が検討されます。自己判断での対処は病状を悪化させるリスクがあるので、激しい痛みが生じた場合には、専門医の診察を受けましょう。

原因

嵌頓痔核は核の種類の1つであり、痔核と同様に排便時のいきみなどの日常生活での習慣が原因です。日々の生活によって生じた痔核は、排便時のいきみなどで肛門外に出ることがあります。このとき、肛門括約筋によって痔核が強く締め付けられた場合、血流障害と血栓形成が引き起こされます。血栓により腫れ上がった痔核は肛門内に戻ることができず、嵌頓痔核となって激しい痛みが生じます。

痔核自体は突然できるものではありません。肛門周辺の静脈叢(じょうみゃくそう)といわれる組織にうっ血が生じて膨らむことによって発生します。便秘や排便時のいきみ、長時間の同じ姿勢などで肛門に負荷をかけることが原因と考えられています。女性は妊娠や出産なども原因となることがあります。

静脈叢:毛細血管が集まってできたもの。肛門周辺の静脈叢は肛門を閉鎖する役割を果たす。

症状

核の症状としては、肛門からの出血や脱出、痛み、腫れなどがみられます。しかし、嵌頓痔核では、通常の痔核とは異なる突然の激しい痛みが突然現れることが特徴です。

1. 痔核の脱出

痔核が肛門外に飛び出したまま、肛門の内側に戻そうとしても戻らない状態になります。

2. 突然の激しい痛み

肛門外に飛び出した痔核が肛門括約筋に締め付けられ、激しい痛みが持続します。

3. 大きな腫れ

血流障害や血栓形成により痔核が大きく腫れあがり、暗赤色や紫色に変色することがあります。血栓によって壊死(えし)潰瘍(かいよう)が生じることもあります。

検査・診断

症状から嵌頓痔核が疑われた場合は、問診や視診により診断されます。

1. 問診

これまで核が肛門外に出たことがある場合は、そのときの状態、発症からの時間の経過、肛門からの出血の有無などを確認します。

2. 視診

痔核の腫れや皮膚の状態、血栓や壊死の有無などをみます。

鑑別が必要な病気として、重度の痔核や血栓性外痔核直腸脱直腸粘膜脱、直腸腺腫直腸がん**があります。

直腸腺腫:直腸に発生する良性の腫瘍(しゅよう)

**直腸がん:直腸腺腫ががん化して発生するものと、正常な粘膜ががん化するものがある。

治療

嵌頓痔核の治療では、まず患者さんの苦痛を緩和する治療が優先されます。保存的治療あるいは手術を検討します。

1. 保存的治療

痛みや腫れの軽減が治療の目的です。半身浴や入浴で患部を温めることで症状が緩和されます。また、坐薬や軟膏、内服薬といった薬物療法が選択されることもありますが、これは症状の緩和のためであり核がなくなることはありません。必要に応じて、鎮痛薬も使用します。

2. 手術

結紮切除術(けっさつせつじょじゅつ)という、痔核の根元を糸で縛り、血流を遮断した後に痔核を切除する手術が一般的です。原則的に入院での治療が必要であり、治癒率が高く再発リスクが低いものの、術後の痛みや出血がみられることがあります。

手術のタイミングは、症状が出たときにすぐに行う場合と保存的治療の後に腫れが引いてから行う場合があります。患部の状態(強い痛みが続くなど)や患者さんの希望(すぐに手術したいかどうか)を考慮して決定されます。

予防

嵌頓痔核を予防するためには、以下のことが重要です。

1. 核の予防策

  • 食生活の改善……食物繊維と水分を十分に摂取し、便秘や下痢を予防します。辛いものやアルコールの過剰摂取は避けます。
  • 排便習慣の改善……便意があれば我慢せず、強いいきみや長時間のトイレ滞在を避けます。
  • 長時間の同一姿勢を避ける……適宜立ち上がる、ストレッチをするなどして血行を促進します。

2. 嵌頓痔核の予防

痔核が肛門外に出るとともに、戻らなくなり痛みが悪化するなどの兆候がみられたら、嵌頓痔核になる前に、日常生活の習慣に気を付けながら、早めに専門医を受診することで予防していきましょう。

最終更新日:
2025年09月17日
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2025/09/17
更新しました
2017/04/25
掲載しました。

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