概要
急性胃粘膜病変(Acute Gastric Mucosal Lesion:AGML)とは、胃の粘膜に急激に病変が生じ、腹痛や吐き気、嘔吐などの症状が現れる病気です。
胃の内腔の壁は内側から粘膜層・粘膜下層・筋層・漿膜に分かれています。急性胃粘膜病変では、このうちもっとも内側にある粘膜層に発赤や浮腫(むくみ)、びらん(粘膜層の欠損)、潰瘍などの病変が現れます。なお、急性胃粘膜病変と混同されやすい病気に胃潰瘍や急性胃炎などが挙げられますが、厳密には胃潰瘍は粘膜下層より深い壁に欠損がみられる点で、急性胃炎は粘膜層に潰瘍を伴わない炎症が生じる点で急性胃粘膜病変とは異なります。
急性胃粘膜病変はアルコールやコーヒー、香辛料などの過量摂取、ストレスのほか、ヘリコバクター・ピロリやインフルエンザの感染が原因で発症するといわれています。治療法は原因によって異なりますが、制酸薬や胃粘膜保護薬などの薬物療法が中心となります。
原因
急性胃粘膜病変の多くは解熱鎮痛薬や抗菌薬、抗がん薬などの服用・投与、精神的・身体的ストレスによって生じます。ストレスによって胃酸の分泌が促進されると、胃粘膜の血行が悪くなり(微小循環障害)、通常粘液などで守られている胃の粘膜が傷害されて急性胃粘膜病変が生じます。
そのほか以下の要因によって引き起こされることもあります。
症状
病気の重症度にもよりますが、急性胃粘膜病変の多くはみぞおちあたりに急激な痛み(心窩部痛)を感じます。また、胃のむかつきや胃が膨れて張ったような感じ(胃部膨満感)、吐き気・嘔吐などがみられることもあります。
重症例では、胃粘膜からの出血により吐血や黒色便、さらに貧血が生じることもあります。
検査・診断
急性胃粘膜病変を疑う症状が現れた場合、胃の内視鏡検査を行い、粘膜に発赤、浮腫、びらん、出血がないか確認します。
また、重症度や合併疾患をみるために、血液検査で白血球数やヘモグロビン濃度、肝機能などを確認します。
治療
薬剤やストレス、食生活、飲酒など原因がはっきりしている場合は、まずそれらを速やかに是正・除去します。
そのほか、胃酸の分泌を抑える制酸薬や胃の粘膜の修復を促す薬などが処方されます。胃からの出血がある場合、止血薬の投与とともに内視鏡治療が考慮されます。
なお、胃のむかつきや嘔吐などの症状が強い場合には、絶食したうえで、点滴で栄養・水分を補給し、胃の安静を図ることも大切です。
医師の方へ
「急性胃粘膜病変」を登録すると、新着の情報をお知らせします