概要
痛み止めの薬剤やストレスによって胃の粘膜が障害されてしまい、急性胃炎が起こったり、急性の潰瘍ができたりすることがあります。これを急性胃粘膜病変(Acute gastric mucosal lesion:AGML)といいます。
みぞおちあたりに急な痛みを自覚し、上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)を行って見つかることが多いです。病変を顕微鏡で観察して評価すると、組織に発赤や浮腫、びらん、出血などを認め、炎症を起こしている様子が確認できます。AGMLを起こす原因には非常に多くのものがありますが、その原因を取り除き、適切に治療することで比較的速やかな改善が期待できます。
原因
AGMLの原因として下記が指摘されています。
- 精神的・肉体的なストレス
- 薬剤(抗菌薬、痛み止め(特にNSAIDsといわれる薬)、低用量アスピリン、抗がん剤など)
- アルコールやコーヒー
- 食事(激辛な食品、ニンニクなど)
- 細菌・寄生虫(ヘリコバクター・ピロリ菌やアニサキス)
- 医療行為(放射線治療や、胃カメラでの検査や治療など)
- 全身性の病気に伴うもの(肝硬変や慢性腎不全、脳外科の術後など)
その他、原因の不明なものもあります。
症状
急性胃粘膜病変は多くの場合、症状は突発的に始まります。上腹部の痛みが最も多くのケースで認められる症状であり、その他には吐き気や嘔吐、腹部の膨満感(お腹の張る感じ)などもみられます。ときに、吐血や下血を伴うこともあります。出血した量が多い場合には、ふらつきやめまいなどの貧血による症状が出ることもあります。
検査・診断
問診や診察、上部消化管内視鏡検査により診断します。
問診
多くのケースでは、はっきりとした原因があるため、十分に問診を行って原因を特定します。複数の要因が関係している場合もあります。
診察
腹部の診察では、みぞおちのあたりを中心にして圧痛(押すと痛みがあること)を認めることがあります。
上部消化管内視鏡検査(胃カメラ検査)
口や鼻から内視鏡(胃カメラ)を挿入して、胃の中の様子を直接観察します。AGMLでは、胃の粘膜に、発赤、浮腫、びらん、出血といったいわゆる急性胃炎の所見を認めます。これらの病変は多発することが多く、潰瘍を認めることもあります。頻度は多くありませんが、潰瘍から出血して、止血のための治療が必要となることもあります。
治療
治療の原則は、原因を除去することです。原因を除去し、適切に薬物療法・食事療法を行うことで比較的速やかに改善が得られるため、多くのケースでは入院は必要とせず通院で治療できます。
ただし、症状が強い場合や、胃潰瘍から出血があり内視鏡(胃カメラ)で止血の治療を行った場合などでは、入院の上で食事をいったん中止し、点滴を行う必要があります。薬物療法、食事療法としては以下のことを行います。
薬物療法
胃酸の分泌を抑えるための薬(酸分泌抑制剤)や、胃の粘膜を保護する薬(胃粘膜防御因子増強剤など)などを用います。また、腹痛が強い場合には、鎮痛剤(痛み止め)として抗コリン剤などが使用されることもあります。
痛み止めであるNSAIDsについて、別の病気に対して使用されている場合などで、簡単には中止できず継続が必要な場合では、AGMLを予防する目的で酸分泌抑制剤を継続して用いることもあります。また、脳梗塞などの病気で低用量アスピリンを内服している方では、再発防止のために低用量アスピリンの継続は重要となるため、この場合にもAGMLを予防する目的で継続して酸分泌抑制剤などを用います。
食事療法
一度にたくさんの量を食べないよう腹八分目を心がけて、脂質・糖質の多いものや刺激物、アルコールの摂取を控えるようにします。喫煙は胃粘膜の血流を減少させてしまい、びらんや潰瘍の治りを悪くする要因となるため、禁煙が望ましいといえます。
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