治療

本態性振戦の症状が軽い場合においては、治療が必要になることは少ないですが、日常生活や仕事への支障が出てきたり、精神的な苦痛によって活動性や社会性が低下したりするような場合には治療が考慮されます。つまり、この症状でどれぐらい患者さんが困っているかが治療を行うかどうかの判断の材料になります。

現在、本態性振戦に対して行われている治療には次のようなものが挙げられます。

薬物療法

本態性振戦に対する治療では、まず薬物療法を行います。第一選択となる薬は “β遮断薬”です。しかし、気管支喘息などがある場合はβ遮断薬を服用することはできません。β遮断薬に効果がないケースや使用できないケースでは、抗てんかん薬であるプリミドンや抗不安薬などが用いられることもあります。

*現在日本で保険適応となっているのはアロチノロール塩酸塩だけです。

手術療法

手術療法には高周波凝固術(RF)と脳深部刺激療法(DBS)の二つがあります。高周波凝固術(RF)は、脳深部の視床腹側中間核(Vim核)に凝固針を刺入して高周波で熱凝固させる方法です。脳深部刺激療法(DBS)では、同じ部位に対し電極を留置して電気刺激を与え、振戦(ふるえ)に関わる脳内の異常信号を調整します。

集束超音波治療(FUS)

集束超音波治療は、手術を必要とせず、頭蓋の外側から照射した超音波を脳深部の視床腹側中間核(Vim核)へピンポイントに集中照射し、超音波のエネルギーによって同部位を熱凝固させる治療です。2019年6月より、本態性振戦に対して保険承認され、新しい治療法として注目されています。

ボツリヌス毒素療法

ボツリヌス毒素療法は、ボツリヌス菌の毒素が持つ筋の緊張を和らげるはたらきを利用したものです。本態性振戦においては保険適用外ですが、一部の症例に対してボツリヌス毒素療法を実施することがあります。

ガンマナイフ(定位放射線治療)

ガンマナイフという放射線治療装置を用い視床腹側中間核(Vim核)に定位的に(ピンポイントに)放射線(ガンマ線)を照射し、同部を破壊する治療法です。効果発現までに時間が掛かり、放射線の副作用の可能性も考慮する必要があります。また、現在は保険適応となっていません(2020年6月時点)。

日常生活の注意

本態性振戦は精神的緊張で症状が強くなり、ストレスや疲労でも悪化する傾向があります。カフェインの摂取も症状を増悪させますので、できるだけそれらを避けるようにすることが大切です。お酒を飲むとふるえが軽くなることもありますが、アルコール依存症になる恐れがあるのでふるえを抑えるための飲酒は避けてください。また日常生活に支障をきたすような症状がある場合は、自助具などを用いるのもひとつの方法です。

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