原因
毒液や毒性の唾液分泌物を持つヘビに咬まれることにより、さまざまな症状が生じます。以下は、日本に生息する代表的な毒ヘビとその毒性です。
マムシ
マムシは琉球列島を除く日本全土に生息しており、春から秋に多くみられます。上顎の先端に2本の長い毒牙を持っており、この牙で咬まれることによりマムシ毒が注入されます。マムシ毒の出血作用には、2種類の出血因子(HR-1、HR-2)が関与していると考えられています。
また、マムシ毒に含まれるプロテアーゼなど、多数の酵素が血管透過性の亢進や、局所の壊死、出血やDICの原因になっていると考えられています。なお、マムシ咬傷により腎不全に至ることがある理由は、マムシ毒に含まれる酵素による直接的なものなのか、あるいは血管透過性亢進やDICの結果として生じるものなのか、2017年時点ではわかっていません。
ヤマカガシ
ヤマカガシは、本州、九州、四国に分布します。平地から山地まで広く生息しており、特に水田の周辺にみられます。ヤマカガシの攻撃性は少なく、ヒトが近づくだけで咬むことはほとんどありません。そのため、多くのヤマカガシ咬傷は、捕獲しようとしたときに起こっているといわれています。
ヤマカガシはマムシのような毒牙を持っておらず、上顎奥に位置する牙の根部にある毒腺(ドゥベルノイ腺)の開口部から毒を分泌します。そのため、ヤマカガシに深く咬まれて皮膚を傷つけられた際に、中毒症状が生じます。前歯で軽く咬まれた場合は、無症状か軽症で終わるため、過去には無毒ヘビだと考えられていた時代もありました。
ヤマカガシは、ドゥベルノイ腺のほか、後頸部にも毒腺を持っており(頸腺)、攻撃されると頸腺から毒液を飛ばすことがあります。ヤマカガシを棒で叩くなどし、飛んだ毒液が目に入ったという例も報告されています。ヤマカガシの毒性は、ハブやマムシの毒性よりも数倍強いことが知られています。
ハブ
ハブは、奄美諸島と沖縄諸島の島々のうち22島に生息しており、主に4~11月に活動します。マムシと同じように、上顎の先端に2本の長い毒牙を持ち、この牙で咬むことにより毒液を注入します。
ハブ毒は、筋組織を融解・壊死させる作用や、出血作用を持っています。ハブは攻撃性が強く、屋内に侵入することや、木の上にいることもあるため、注意が必要です。
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