るいせんしゅよう

涙腺腫瘍

最終更新日:
2017年04月25日
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2017/04/25
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概要

涙腺腫瘍とは、眼窩(がんか)(眼球が収められている骨で囲まれているくぼみ)に発生する腫瘍(眼窩腫瘍)のうち、涙腺に発生する腫瘍のことです。眼窩には眼球だけでなく、涙をつくる涙腺や眼球を動かす筋肉、神経や血管、脂肪などさまざまな組織があり、涙腺は眼球の耳上側に位置しています。

涙腺は眼窩腫瘍が発生しやすい部位で、良性のものではIgG4関連疾患や多形腺腫、悪性のものでは悪性リンパ腫や腺様嚢胞癌などが代表的です。良性と悪性を合わせた涙腺腫瘍全体では、悪性リンパ腫やIgG4関連疾患などのリンパ増殖性疾患が多くを占めます。

原因

腫瘍の発生にはさまざまな要因の関与が考えられており、原因ははっきりとわかっていません。悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球が腫瘍化した病気です。

近年、新しく疾患概念が確立されたIgG4関連疾患は、免疫グロブリンのひとつであるIgG4が関与して、涙腺や耳下腺、膵臓、肝胆道系、後腹膜をはじめとするさまざまな臓器が腫れたり、硬くなったりします。

症状

腫瘍の種類や大きさによって、さまざまな症状が現れます。代表的な症状には、腫瘍で眼球が押されることにより眼が飛び出る眼球突出や、眼の位置がずれる眼球の変位、眼の動きが障害されて物が二重に見える複視などがあります。

また、涙腺腫瘍は眼窩腫瘍のなかでも比較的表面に近い部位に存在するため、直接しこりに触れることがあり、これが病院を受診するきっかけとなることもあります。多形腺腫や腺様嚢胞癌はほとんどの場合、片側のみに発生します。両側に発生した涙腺腫瘍の場合、全身性のものである悪性リンパ腫IgG4関連疾患などが考えられます。

検査・診断

CT・MRI検査

涙腺腫瘍の診断では、画像検査であるCTやMRIが必須です。腫瘍の詳細な性状を調べるためにMRI検査を行います。腫瘍を栄養する血流の状態や腫瘍の種類を推測するためには造影MRIが行われます。腺様嚢胞癌(せんようのうほうがん)などの悪性腫瘍は周囲の骨を破壊することがあるため、CT検査によって骨の変化を確認します。

眼科検査

また、眼科検査として、一般的な視力や眼圧、眼の飛び出し具合を測る眼球突出度検査、眼の位置のずれを測る眼位検査などを行います。さらに、眼球運動障害を確認するHESS赤緑試験および両眼単一視野の測定を実施します。

採血検査

悪性リンパ腫では血中の可溶性インターロイキン2受容体が、IgG4関連疾患では血中のIgG4が高値となるため、採血検査も参考となります。

PET-CT

腺様嚢胞癌を代表とする悪性度の高い腫瘍を疑う場合には、他部位への転移の有無を調べるために、PET-CT(がんなどに用いられる検査の一種。特殊な薬とカメラを使って全身の詳しい画像を撮る検査)などによる全身検索が必要となることがあります。

治療

涙腺腫瘍では、画像検査を中心とした諸検査で腫瘍の種類を推測し、それに応じた治療を行います。

腫瘍の種類を確定するには、腫瘍の一部を切除する生検や、腫瘍を全部取り除く全摘出など、いずれかの手術療法を行い、摘出した組織を用いて病理組織学的検査が必要となります。涙腺に発生する腫瘍なので、手術療法は通常、眉毛の下の部分の皮膚を切って腫瘍を摘出または生検します。

悪性リンパ腫の治療

悪性リンパ腫が疑われる場合には、腫瘍の一部を切除(生検)して、一般的な病理組織学的検査のみでなく、フローサイトメトリーなどの特殊な検査も行います。悪性リンパ腫は、白血球の一種であるリンパ球が腫瘍化した病気であるため、治療は血液内科での化学療法や放射線療法が中心となります。

IgG4関連疾患の治療

IgG4関連疾患を疑う場合も生検をおこない、病理組織学的検査で特殊な染色を行います。治療はステロイド剤の全身投与が著効しますが、再発することも珍しくなく、長期に及ぶステロイド治療が必要となることがあります。

多形腺腫の治療

多形腺腫は再発や悪性化を起こすことがあるため、多形腺腫が疑われる場合には、生検や部分切除は行わず、一回の手術で腫瘍の全摘出を行う必要があります。

腺様嚢胞癌の治療

腺様嚢胞癌などの非常に悪性度の高い腫瘍では、周りの組織への浸潤傾向が高いので、腫瘍と思われる部分のみの摘出にとどまらず、眼窩内の組織をすべて除去(眼窩内容除去)しなければならない症例や、重粒子線治療という特殊な放射線治療を行う症例もあります。

涙腺にはさまざまな種類の腫瘍が発生し、腫瘍の種類によっては手術療法以外の治療が中心となるため、適切な検査、治療計画が必要となります。

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