
減圧症には1型、2型の2種類があり、全身の臓器に影響を及ぼします。また、ときには後遺症が残り、日常生活に支障を及ぼしてしまう場合もあるといいます。減圧症による様々な症状について、ハーバード大学医学部外科学講座研究員の近藤豊先生にお話し頂きました。
計画どおりのダイビングを行えば、たとえ減圧症を発症したとしても、症状は徐々に進行します。しかしながら、潜水から急浮上した場合は急激に発症してしまいます。急激に発症するケースは予後が悪い傾向にあるため、注意が必要です。
潜水中の「息切れ感」は減圧症の初期症状のサインとして知られています。また、ダイバーのなかには減圧症を発症したときに「フカシ」と呼ばれる水中自己再圧をする方がいますが、これは推奨できません。
フカシとは再び水中に潜り、形成された気泡を加圧によって再度消失させようとするというものですが、圧縮空気を用いた再圧では窒素がさらに体内に蓄積され、多くの場合失敗します。フカシに失敗してしまうと致命的な減圧症を発症することになります。
「減圧症にかかったかもしれない」と思ったら、速やかに医療機関を受診しましょう。
減圧症による影響は臓器ごとに異なります。主に、脳、心臓、脊髄、関節、筋肉、皮膚などが減圧症と関係する臓器になりますが、全身状態が悪化すると二次的に肝機能障害や腎機能障害なども引きおこすことがあります。
Ⅰ型は筋肉関節型(ベンズ)、皮膚型に分類されます。ベンズでは関節痛や筋肉痛といった症状が出現し、Ⅰ型減圧症の多くの割合を占めます。ベンズを繰り返すと、長期的に無菌性骨壊死という疾患のリスクにもなります。
皮膚型は皮疹を主な症状とし、単独で発症するよりもⅡ型減圧症(後述)に合併することが多いです。皮膚型では、皮膚にしびれ、疼痛、掻痒を感じることがあります。
通常、Ⅰ型減圧症の場合には高気圧酸素療法は必須ではありませんが、症状が強い場合や増悪傾向にある場合には、高気圧酸素療法が適応になります。
Ⅱ型減圧症には呼吸循環型(チョークス)、脳型(中枢型)、脊髄型、内耳前庭型などがあります。いずれも重症のタイプの減圧症ですが、特に呼吸循環型の場合には最重症例が多くみられます。血管の透過性が亢進しているために、血圧が低下し、右心不全や呼吸困難を引き起こします。
その他、脳型では痙攣や手指の麻痺、脊髄型では下半身麻痺、内耳前庭型ではめまいや嘔吐などの症状を引きおこします。脊髄型は後遺症を残しやすいので注意が必要です。中には車椅子生活を余儀なくされる患者さんもいます。
Ⅱ型の減圧症の治療では、高気圧酸素療法が重要となります。
減圧後後遺症として、軽度のものは関節痛や耳鳴りが継続することがあります。より重症のものとしては、脊髄型減圧症を発症すると下半身麻痺となったり、脳型減圧症では手足の麻痺症状を残すこともあります。
症状には個人差があり、数日で改善するものから数年もしくは永続的に継続するものもあります。日常生活に支障を来たす場合もあるので、減圧症後遺症では「予防」が非常に重要となります。
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